第四十話
次の日、俺はログインして配信を始めた。
「昨日はごめんな。ちょっとこれまでのことをまとめたくて、休ませてもらった」
『大丈夫だよ』
『気分転換も必要だよな』
『それで、結局まとめるとどんな感じなん?』
「そうだよな。初見の人も何人かいるみたいだし、説明していくな」
そう言って、昨日まとめた内容を話していく。
『確かにそんな感じだったわ』
『最近のはずだけど、もう懐かしいな』
『それで、これから侯爵への報告だっけか?』
「そうだな。それじゃあ、サン社員いるか?」
俺は配信で声をかける。
「はい、お待ちしていましたよ」
そう言って、俺の目の前に現れた。
「サン社員、今回も侯爵の所に行ってくれるか?」
「もちろん、その大役、担わせていただきます」
「ほんと、ありがとな。それと炎児は……いるな」
いつものPvPエリアを見ると、こっちに手を振っているのが見える。
「炎児はどうする? 侯爵の所に行くか?」
炎児は俺たちの下まで走ってきて、返事をする。
「はい。俺もちょうど今の上限まで来ましたし、進化について知りたいですから、ついて行きます」
炎児も今のレベル上限まで行ったのか。
この世界で、一度も進化していないのは俺だけなんじゃないかと思えてくる。
「そうか。じゃあ、よろしく頼むな」
そう言って二人を見送る。
そして、俺はサン社員の配信を見始めた。
そして二人は、いつもの部屋で侯爵と面会する。
そこで俺たちは、黒装備の連中がリーン伯爵領で住民と良好な関係を築いていて、武器も用意されていたこと、進化の条件を知っていること、そして、その条件を話そうとした瞬間に消えたことを説明した。
「……そうか、そこまで分かったのか。だが……消えた?」
侯爵はそう呟いた。
「まあ、いい。今聞いた話を勘案すると、奴らの目的は進化で間違いないだろう」
侯爵はあっさりと言い切った。
『やっぱりそうか』
『想像はできてたよな』
「奴らは進化の条件を聞き、それを満たすために行動をしているのだ」
「なぜ彼らが進化にこだわっているのか、ご教示願えませんか?」
「……そうだな。説明しておくべきか。ここにいる二人は、進化を一度経験しているだろう。その時に、一段階上の力を手に入れた」
「はい、その通りです」
「そして、次の進化でも同様に力が得られる。そう思っていないか?」
「……? はい、そのように思っていますが……」
「それは違う。次の進化は、今お前たちが想像している以上の力が手に入る。それこそ、上手くいけば、クランというものを組めば、奴らだけで小さな町程度なら陥落させるほどの力だ」
そこまでの力が手に入る。
その事実に、俺は息をのんだ。
「だからこそ、進化には条件がある」
ついに進化条件の話が出てきた。
現地にいる二人も、空気が変わったように感じる。
「……条件ですか?」
サン社員が慎重に聞き返す。
「そうだ。条件は二つある。一つ目は、一定の成長段階に到達していることだ」
これは、俺の観察で見ていた通りだし、皆予想はできていた。
「そして、もう一つは、一定以上の身分を持つ者からの推薦を受けることだ」
何故、そんな条件が?
「サン社員、なんでそんな条件になってるか聞いてくれ」
サン社員が黙っているので、ハッとなり、質問をする。
「なぜ、そのような条件が設けられているのでしょうか?」
「当然の疑問だろう。だが、先ほどの話を思い出してくれ。進化した冒険者は非常に強い。
そんな者を、誰の判断もなく生み出してよいと思うか?」
「……確かに、危険ですね」
「だから、一定以上の身分を持つ者が、その者を進化させても問題ないと判断する」
話に筋が通っている。
「……だから、あいつらはリーン伯爵と繋がっていたのか」
俺はそう呟く。
「そのようなお考えでしたか。それでは、黒装備の冒険者を調査していたのも?」
「リーン伯爵が奴らを推薦するつもりなのか、それとも既に推薦したのか。それまでは分からぬ。そのため、調べてもらった」
「そうでしたか。それでは、侯爵も推薦することがあるのでしょうか?」
サン社員が切り込んでいく。
「当然だ。この町に尽くした者、住民を守った者、力を持っても悪用しなかった者。これらを基準として判断する」
「それでは、俺も次の進化ができるんですか?」
それまで黙っていた炎児が、侯爵に質問する。
「条件を満たしているのであればな」
そして、炎児に鋭い目線を送る。
だが、炎児は引かない。
「……俺は条件を満たしています」
「ふむ。確かに貴様は力を持っているが、悪用はしていないようだ。だが、他の基準には達していない。だが、いずれは推薦することもやぶさかではないだろう」
今の言葉から言うと、力を持っても悪用しなかっただけで、他の二つの項目は満たしていないということだろうか。
聞いた感じだと、町に尽くすというのは、ギルドで受けられる討伐依頼、住民を守ったというのは、護衛か何かだろうか。そして、悪用しなかったというのは、まあ、その言葉の通りだろう。
「それでは、私はいかがでしょうか?」
サン社員が聞く。
侯爵は悩んだ末、口を開く。
「貴様は、そうだな。住民の助けになってくれることで、いつか推薦できそうだ」
そう言って、侯爵の口角が少し上がったように見えた。




