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路傍の石  作者: マグガネ


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第三十四話

図書館の場所は、住民に聞いたらすぐに分かった。


今いる噴水から、歩いて五分ぐらいの場所にあるらしい。


始まりの町では、そこは役所だったはず。


これも違いの一つかと、一人で納得していた。


そうしているうちに、図書館に到着した。


「この図書館、意外と大きいですね」


サン社員が呟いた。


サン社員の配信画面を見ると、たしかに大きいのかもしれない。ただ、比較する対象が現実の図書館しかないので、自分には断言することはできなかった。


「それじゃあ、サン社員。図書館に入って、リーン伯爵の歴史について調べてくれるか?」


「はい、もちろんです。それでは行きます」


サン社員は歩みを進め、重そうな木製のドアを開いた。


中には棚が無数にあり、そこに本が詰め込まれている。外から見ても思っていたが、窓がかなり少ない。そのせいで図書館の中は薄暗く、通路には点々と光があるような状態だ。おそらく、あの光は火ではなく、光魔法の光なのだろう。普通の火ではない色をしているので、そう判断できた。


「……さて、どこから探しましょうか」


「さすがに一冊ずつ確認するのは無理だよな」


『そりゃそうだろ』


『図書館ってそういう場所だぞ』


『司書さんに聞けば?』


「それだ」


俺はサン社員に指示を出す。


「受付みたいなところを探して、詳しい人に聞いてみて」


「分かりました」


サン社員は周りを見渡すと、右手の奥の方にカウンターがあるのが見えた。


そこには、眼鏡をかけた二十代中頃の女性がカウンターに立っている。


「すみません。リーン伯爵家について調べたいのですが、どのあたりの本を探せばいいでしょうか?」


「リーン伯爵家についてですか?」


「はい。歴史について知りたいのです」


「それでしたら、貴族史の棚ですね。あちらの奥になります」


「ありがとうございます」


紹介された棚を見ると、ひときわ豪華な装丁の本があるのが分かる。


その題名を見ると、『リーン伯爵家の歴史』と書かれている。


「ありました。『リーン伯爵家の歴史』という本があります」


「それだな」


その本を持って、備え付けられているテーブルに置いて読み始める。


目次を見ると、初代についての章があり、槍の名手であったことや、戦争での功績、その功績によって貴族になったことなどが書かれているようだ。


「住民の話とほとんど同じだな」


「そうですね。新しく得るものはなさそうでしょうか」


「いや、冒険者に何か書いていないか調べよう。領地を与えられた後で、冒険者について記述がないか探してみてくれ」


「承知しました。少々お待ちください」


サン社員は本のページをめくっていく。


「……ありました」


「なんて書いてある?」


「『魔物が予想以上に繁殖しているようで、町の防衛に手が回らなくなってきた。外より訪れる冒険者を積極的に受け入れ、魔物の討伐を依頼することで領民の安全を確保した』……だそうです」


「やっぱり冒険者を受け入れてたんだな。それっていつ頃のことだ?」


「えーっと。家系図を見る限り、今の当主から二代前の頃みたいですね」


「今の当主から二代前……」


「そうですね。ということは、昔から冒険者を受け入れていたってことでしょうか」


「ああ。少なくとも、最近受け入れ始めたってことはなさそうだ」


リーン伯爵が、冒険者を歓迎しているということは分かった。


でも、いまだに伯爵と黒装備の連中の関係については、何も分からない。


「他に冒険者についての記述はないか?」


「探してみます」


サン社員は再びページをめくっていく。


しばらくすると、何かを見つけたようで手を止める。


「ありました」


「なんて書いてある?」


「要約すると、冒険者を受け入れたことで、町の状況が良くなったとのことです」


「状況が良くなった? 具体的には?」


「魔物の討伐数が増えたことで、魔物による町への被害が減った。それと、冒険者が町で買い物をすることで、商業も活発になったと書かれていますね」


「なるほどな」


冒険者は強いから、魔物を倒せる。


そして、もらった金はこの町で使う。


領主からすれば、わざわざ敵視する理由はないか。


『始まりの町とは真逆だな』


『あっちは冒険者が強くなりすぎるのを警戒してるもんな』


『領主によって考え方が違うんだろうね』


「そうらしいな」


少なくとも、リーン伯爵が冒険者を歓迎している理由については、かなり納得できる。


「……それでも、黒装備の連中が気になるな」


「そうでしょうか? 今の内容だと、道筋は通っているように感じますが……」


「冒険者を歓迎している理由は分かった。でも、あいつらがこの町にいる理由は分かってないだろ」


「ここが今、このゲームの最先端だからでは?」


「でも、まだ解放されていない街は他にもある。そっちに行った方が新しい素材も取れるし、実入りも大きいはずだ。なのになぜかこの町にとどまっている。そのことが気になるんだ」


俺は、黒装備の連中がこの町に来た時期を思い出す。


この町が解放された直後。


そして、武器屋では以前から注文していた武器を受け取っていた。


「……もしかして、あいつらはこの町が解放されることを事前に知っていたんじゃないか?」


『それなら話が変わってくるな』


『でも、どうやって?』


「それを調べてみよう。まずは、この町が解放される前後に何があったのかを調べたい」


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