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路傍の石  作者: マグガネ


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第三十三話

そうは言ったものの、何を調べればいいのか。


これまでのことを考えれば、リーン伯爵について調べるか、黒装備の冒険者をより深く調べるかの二つで迷っている。


「うん、まずはリーン伯爵について調べてみるか」


『伯爵についてほとんどなんも知らないもんな』


『図書館とかないの?』


『あったような気がするけど……』


『日出夫に聞けば?』


『貴族関係に詳しいよな』


「確かに」


俺はコメント欄を見る。


「日出夫、リーン伯爵について何か知ってる?」


『う~ん(´・ω・`) ちょっとだけなら?(´・ω・`) 』


「少しでも情報が欲しいんだ。知ってること教えてくれないか?」


『どんな人って言われても(´・ω・`) リーン伯爵家が昔からこの辺りを治めてること(´・ω・`) 初代が槍の名手だったってことくらいかな(´・ω・`) 』


「それ以外に知ってることはある?」


『ごめんね(´・ω・`) さっきの住民の人と同じくらいの知識しかないの(´・ω・`) リーン伯爵に会ったこともないし(´・ω・`) 』


「そっか。いや、ありがとう。さっきの住民の話がどうやら確からしいってのが分かってよかったよ」


やっぱり日出夫でも、何でも知っているわけではないらしい。


『でも噂で、冒険者に対してはかなり寛容な領主だって話は聞いたことがあるよ(´・ω・`) 』


「冒険者に寛容?」


『うん。少なくとも始まりの町の領主とは考え方が違うみたい(´・ω・`) 』


「その噂をどこで?」


『ごめんね(´・ω・`) ちょっと話せないの(´・ω・`)』


「なるほど……」


考えれば当たり前のことだ。


自分の情報の出所を教えるのは、リスクになる。


自分だけが持っている情報なら、なおさら他人には教えたくないだろう。


俺は今、配信中で、不特定多数のプレイヤーの目に留まる可能性もある。


教えてくれるわけがなかった。


「いや、謝るのはこっちだ。ちょっと無神経だった」


『いいよ~(´・ω・`)』


でも、その噂は気になる。


始まりの町の領主は、冒険者の力を危険視する一方で、リーン伯爵は冒険者を受け入れている。


この違いが、今回の件と関係しているのだろうか?


「日出夫のおかげで少し前進したけど、これだけじゃ何も分からないな」


『やっぱり住民に聞く?』


『領主のことなんだから知ってる人は多いだろうな』


「それもそうだな」


俺はサン社員の配信画面を見る。


「サン社員、もう少し住民に聞き込みしてみてくれない?」


「もちろんです」


サン社員は近くにいた住民へ声をかける。


「すみません。少しお聞きしたいことがあるのですが」


「はい、なんでしょう?」


「リーン伯爵について、少し教えていただけませんか?」


「領主様についてですか?」


「はい。この町に来たばかりなので、どういう方なのか知っておきたくて」


「そうですねぇ……」


住民は少し考える。


「昔から、この辺りを治めている方ですね。町のこともよく考えてくださっていますよ」


「冒険者に対しても寛容な方なのでしょうか?」


さっき日出夫から聞いた噂について、確認をしてくれるようだ。


「そうですね。冒険者の方々が町に来てくれるのはありがたいことですから」


「おや、そうなのですか?」


「魔物を倒してくれますし、そこで得たお金もこの町に落としてくれますからね」


「なるほど」


どうやら、住民から見てもリーン伯爵は冒険者を歓迎しているらしい。


その後も何人かの住民に話を聞いてみたが、似たような答えが返ってきた。


住民の話の中で、領主に対する悪い評判はほとんど聞こえてこない。


黒い装備の冒険者について聞いてみると、どうやらこの町が解放されてから、すぐに姿を見せていたらしい。それ以上のことを知っている住民はいなかった。


「どう思う?」


俺が聞くと、サン社員は少し考えてから答える。


「少なくとも、この町の住民からは悪く思われていないように感じますね」


『住民との距離感?が何か違うよな』


『領主の方針が違うんじゃない?』


「たぶんそうなんだろうな」


聞いた話を思い返す。


リーン伯爵は冒険者に寛容で町の住民も冒険者を歓迎している。


そして、黒い装備の冒険者たちは、この町で普通に活動している。


「……でも、ちょっと待てよ」


何かが引っかかった。


俺はサン社員の配信画面を見る。


「サン社員。さっき住民に聞いたとき、何か気づかなかった?」


「何でしょうか?」


「黒い装備の冒険者について聞いたとき、みんな『この町が解放されてからすぐに見かけた』って言ってなかった?」


「ええ、言ってましたけど」


「でも、この町が解放されたのって、つい最近だよな?」


「はい。そう聞いています」


「それなのに、黒装備の連中は解放されてすぐに来ていた……」


『あれ?』


『確かに』


『なんでそんなに早いんだ?』


「そうなんだよ」


俺は少し考える。


「リーン伯爵が冒険者を歓迎してること自体は、昔からなのかもしれない」


『それが何か関係あるの?』


「分からない。でも、もし昔から冒険者を受け入れていたなら、この町で黒装備の連中が歓迎されている理由も、少しは分かるかもしれない」


『なるほど』


「それに……」


俺は少し考える。


「この町が解放されてから、黒装備の連中はすぐに姿を見せている」


『確かに』


「始まりの町であいつらが問題を起こし始めた時期と、何か関係があるのかもしれない」


もちろん、まだ偶然という可能性もある。


でも、調べてみる価値はある。


「……リーン伯爵家の過去を調べてみよう」


『図書館?』


「うん」


俺は頷く。


この町に図書館があるという話だ。


もし昔の記録が残っているなら、何か分かるかもしれない。


リーン伯爵がいつから冒険者を受け入れているのか。


黒い装備の冒険者たちが、いつ頃からこの町に現れたのか。


「リーン伯爵と、あいつらの間に何があるのか」


俺たちは、その答えを探すことにした。


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