第二十一話
それから数時間が経った。
『結構聞けたぞ』
『ギルドは思ったより色々聞けた』
「武器屋方面も怪しい話があったよ」
コメント欄には、聞き込みを終えた視聴者が次々と戻ってきている。
結果については全員が集まってから聞くことにして、今のところ詳しい報告はしてもらっていない。
コメント欄では、視聴者同士で交流したり、最近注目しているプレイヤーについて話したりと、様々なやり取りが行われていた。
そういったコメントを見ていると、自分も一緒に行けたらなと、少しうらやましい気持ちになった。
それでも、自分がこうして交流のきっかけになれていることは、うれしかった。
しばらくすると、サン社員があの少女と一緒に噴水の前まで歩いてきた。
「今日はありがとうございました」
「ううん。全然いいよ。それじゃあ、また今度遊んでね」
そう言うと、少女は一瞬だけこちらを見てから、その場を去っていった。
「すみません。少し遅れてしまいましたか?」
「いや、大丈夫。それよりも、住民たちへの聞き込みで何か手掛かりはあった?」
「はい。色々な話を聞くことができました」
「そりゃ、重畳。じゃあ、最初にサン社員から住民たちの話を聞くってことでいいか?」
そうコメント欄に聞いてみる。
『いいよ~』
『気になるし、それで』
『おk』
うん、大丈夫そうだ。
「それじゃ、サン社員の話から聞いていこう。住民たちはどんな被害を受けていたか教えてもらえるか?」
「承知しました。被害についてですが、店の商品を壊された、暴言を受けた、店の前で魔法を使われた、街道で商人を襲っているところを見た……といった、似たような話を複数聞くことができました」
『領主が言ってたのと同じだね』
『被害があるのは本当なのか』
「ひとまず、領主が言っていた『冒険者による被害がある』という話は、本当だと考えてよさそうだな」
「そのようですね。一方で、いい話もありました。商品をよく買ってくれたり、モンスターから助けてもらったりしたという声も聞くことができました。その人たちは、私がそばに寄っても表情を変えることなく対応してくれました。どうやら、住民全員が冒険者を嫌っているわけではなさそうです」
「一番懸念していた、冒険者全体が嫌われている可能性は低くなったと言っていいかな」
「はい。ただ、住民の中には『この町の住民は冒険者を嫌っている』と話している人もいました」
「……それって、住民同士でそんな話が広まっているってことか?」
「いえ、この話も数人が話していただけなので、広まっているかどうかは分かりかねます」
サン社員が一度言葉を区切る。
「それと、聞き込んでいるうちに少し気になる点がありました」
「ほう、それは?」
「どうやら、いくつかの事件で同じ特徴を持つ冒険者が目撃されているんです」
「同じ特徴?」
「はい。黒い装備をしていて、大きな剣を背中に背負っている。そして、烏のような紋章をつけていたそうです」
その言葉を聞いた瞬間、頭の中に一人の冒険者の姿が浮かんだ。
黒い装備。
大きな剣。
そして、あの紋章。
「……どこかで見たような」
思い出せそうで、思い出せない。
いや。
正確には、見たことがある。
以前、観察した冒険者の中に、そんな特徴を持つ男がいた。
だが、あの男を観察したとき、なぜか詳しい情報を得ることができなかった。
「……まさか」
その男と今回の事件がつながっているのだろうか。




