第二話
その週のうちに、俺の部屋にはVRMMOを遊ぶためだけの設備が整っていた。それらの設備はゲーミングチェアのような形をしていて、座るだけでゲームをプレイできるというものだ。
「よっしゃ。それじゃあ、始めますか」
椅子に座り、肘掛けの部分にあるボタンを押す。すると、一度視界が暗くなった。次の瞬間――。そこには、真っ白な空間が広がっていた。
「Stranger Life Onlineへようこそ。それでは、設定を開始してください」
透き通った女性の声が聞こえる。周囲を見回す。しかし、その声を発した人物の姿はどこにも見当たらない。すると突然、目の前に透明な板が現れた。一番上には「ステータス」と表示されている。どうやら、ここでゲーム内の情報を設定するようだ。
記入する項目は、名前、種族・ジョブ、性別、そして成長方法。そのすべてが自由記入式になっていた。名前は以前から決めていた「ソラ」にする。これは俺の名字である「相良」が「そうら」とも読めることから取ったものだ。種族・ジョブは迷っているので後回し。性別は男。成長方法は、そこまでこだわりもない。「標準」とでも書いておこう。
さてさて。本命の種族・ジョブはどうしようか。このゲームでは、種族かジョブのどちらかを設定すれば、それに最適化されたキャラクターになるらしい。もちろん、両方を設定してもいい。種族には特にこだわりがない。ならば、ジョブを決めよう。
剣士になってモンスターを倒していくのも面白そうだ。ゲームの中なのだから、魔法を使ってみるのも悪くない。はたまた、現実ではできないような悪事を働く悪人プレイも面白そうだ。決めるまでにかなり悩んだ。
だが、これまでの生活は忙しすぎた。少しくらい、自分のペースでゆっくりゲームを遊びたい。医師にしよう。これならパーティーを組む場合でも邪魔にはならないだろう。街中であれば、治療院や治療所などで働くこともできそうだ。そんな風に、自由気ままにゆっくり過ごしたい。
そう思いながら、俺はジョブの欄に「医師」と入力しようとした。
入力すると、すぐにポップアップが浮かび上がる。
【記入を完了しますか?】
NO YES
危ない。
よく見ると、変換ミスで「医師」ではなく「石」になっている。
訂正しなくては。
そう思い、右側のボタンをタッチする。
「あっ」
......これ、YESじゃん。足元から体が消えていく。
「ちょっと待って、ストップ、ストップ! 誤変換、誤変換だから、ちょっと待っ――」
そんな声も虚しく、最後には頭の先まで消えていった。




