第十九話
サン社員が噴水の前まで帰ってきた。もう、サン社員側の配信も終わっている。
「じゃあまずは、領主の話を整理していこうと思う」
『了解』
『話長くて覚えれんかった』
『タスカル』
「じゃあ、俺なりにまとめていく。今回、分かったことは三つ。一つ目。住人が高レベルの冒険者を恐れる理由。これは冒険者が住人よりも圧倒的に強く、死んでも蘇るから。二つ目が、一部の冒険者が住民に対して悪影響を及ぼしていること。これは、住民に危害を加えていることに加え、モンスターの乱獲により森や市場に影響を与えていること。三つ目は、進化の情報が意図的に隠されていること。これは二つ目にも関係している部分があって、領主は冒険者がこれ以上強くなることを望んでいない。こんなところかな?」
『ナイス』
『今、アーカイブで見てるけどそんな感じだな』
『タスカル』
よし、自分の中で整理もできた。これでこの後の動きは明確になった。
「それじゃあ、これからするのは俺たちプレイヤーの素行調査ってことでいいかな?」
「そうですね。この件を進めていけば、どうにか進化について知ることができそうです」
『手がかりが見つかってありがたい』
『これはフラグが踏めたってことでいいよな』
『でもどうやって調べるよ?』
『単純にその辺にいる冒険者に聞けばよくない?』
このまま冒険者に聞いていくのも一つの手だろう。
けれど、冒険者から聞いて「そんな問題はない」と言われて、素直に信じることができるだろうか。
今は、領主から冒険者によって被害が出ていることを聞いているのだ。それは、加害者の意見を聞いて被害者の声に耳を傾けないのと同じなのではないか。
「確かに、冒険者に聞くのはいいと思う。けど、住民にも話を聞く必要があると思う」
『別に良くない?』
『手間かかるし、その辺省略してもよくない?』
そういったコメントが目に入る。
「いや、ダメだと思う」
『なんで?』
『領主が言った通り聞けば十分じゃない?』
「それじゃあ、領主の話をそのまま信じることになる」
『……? どゆこと?』
「俺たちは、領主から冒険者が住民に被害を与えてるって話を聞いた。でも、それを証明しているのは領主側の話だけなんだ。だから逆に冒険者に聞いたら、『そんなことしてない』『NPCが大げさに言ってるだけ』って答えが返ってくるかもしれない」
『そういうことか』
「だから、どっちか片方だけの話を聞いても意味がないと思う。実際に被害を受けた住民がいるなら、その人たちから話を聞いてみる必要がある」
『なるほどな』
『両方の言い分を聞くってことか』
「そういうこと。領主が嘘をついている可能性だってゼロじゃないし、冒険者が自分たちに都合のいいことだけ話している可能性もある。だから、できるだけ両方から話を聞いて、自分たちで判断したい」
『そういう理由なら両方から聞いた方がいいわな』
「それに、俺たちが住民に聞くことに加えて、もう一つ確認したいことがあるんだ」
『なんぞ?』
『好感度とか?』
「おっ、好感度って言った人ほぼ正解。確認したいのは、住民たちが冒険者全員を嫌ってるのか、それとも一部だけなのかを聞いておきたい」
『あー、確かに気になる』
「もし本当に冒険者全体を恐れているなら、この問題はかなり根深いものだと思う。でも逆に、一部の冒険者だけを警戒しているなら話は変わってくる。その一部の冒険者を説得すればいいし、最悪、対処すれば問題は解決する。そんなわけで、住民と冒険者、両方の話を聞きたい」
『なるほど、理解した』
『確かにそういうことなら両方から聞いた方がいいな』
「それじゃあ、そういう方針で行こう。えー、ここで申し訳ないんだけど、知っての通り俺は動けないので、協力していただけますでしょうか?」
「いいですよ」
『いいよー』
『協力するよ』
いつものメンバーが協力することに賛同してくれた。
「ありがとう。それじゃあ聞き込みの振り分けをしていきたい。その前に誰か、住民に顔見知りとかいないか?」
「いませんねぇ」
『同じくいないっす』
『物の売り買いしか話したことないっす』
これは困った。住民に聞くなら、なるべく警戒されないように話を聞いてもらうのがいいと思ったのだが。どうしようか……。
その時、ふと思い出した。
「そういえば、サン社員。前にあそこにいる女の子と遊んでなかったっけ?」
以前、検証で二人が一緒になったときに、噴水の近くで鬼ごっこをしていた少女だった。




