第十七話
サン社員が領主に会いたいことを切り出した。
「面会の約束はしていますか?」
兵士は冷静に問いかけてくる。
「いえ、約束等はないのですが、確認したいことがございまして……」
「申し訳ございません。約束のない方をお通しするわけにはいきません。面会を望むのであれば、予約を取っていただく必要があります。予約しますか?」
意外なことに、予約はできるようだ。
「どうしましょうか?」
サン社員が小声でこちらに確認してくる。
『ひとまず、いつ会えるのか聞いてみよう』
「その予約をしたとして、いつ頃領主様にお会いできるのでしょうか?」
「そうだな。今予約したとすると……おお、運がいいな。大体三か月後ぐらいに面会できるぞ」
「三か月後ですか……」
「そうだ。不服そうだが、これでも短い方だぞ。いつもだったら、半年以上先だ」
『それでも三か月は長すぎる』
サン社員が兵士へ向き直る。
「申し訳ありません。できれば、もう少し早くお会いしたいのですが」
「そう言われましても、領主様にもご予定がありますので」
「それは承知しております。ただ、今回確認したいことがありまして」
「どのようなことでしょうか?」
「高レベルのプレイヤーについてです」
「……」
その瞬間、兵士の表情が確かに変わった。
『今、反応したよな。なんかのフラグに引っかかったのか?』
サン社員もそれに気づいたのか、少し間を置いてから続ける。
「最近、高レベルのプレイヤーについて調べているのですが、住民の方々に聞いても、どうにも歯切れの悪い回答しか返ってこないのです」
「……」
「その理由について、領主様にお聞きしたいのです」
兵士は、先ほどまでの事務的な態度とは違う、少し警戒した声音で口を開く。
「どうして、そのようなことを?」
「高レベルのプレイヤーに対して、少し表情が変わることがあったので、何か思うところがあるのかと思いました」
そう答えると、兵士は何か考えているようだった。
そして、険しい顔で口を開いた。
「それは、住人からお聞きしたのですか?」
「いえ。道行く人を観察して、そう考えた結果です」
兵士の眉間のしわが、いくらか和らいだ。
「失礼ですが、あなたは高レベルのプレイヤーなのですか?」
「はい。レベルは30です」
「……そうですか」
兵士はサン社員をしばらく見つめたあと、館の方へ視線を向けた。
「少々お待ちください」
「え?」
「私の判断だけでは決められません。領主様に確認してまいります」
そう言うと、兵士は門を開き、館の中へ入っていった。
「行けそうですかね?」
『いや、まだ分からない。このまま追い返される可能性もある』
「でも、明らかに途中から雰囲気が変わりましたよね」
『そうだな。やっぱり、高レベルには何かあるみたいだな』
そんなふうに話していると、兵士が戻ってきた。
「お待たせしました。領主がお会いになるそうです」
『よっし』
手足がないので、心の中でガッツポーズをした。
「本当ですか?」
「はい。ただし、いくつか確認したいことがあるそうです」
「確認したいこと……ですか?」
「ええ。詳しい話は中でされるでしょう」
兵士が門を開く。
「どうぞ、お入りください」
「ありがとうございます」
サン社員が一礼し、館の中へと進んでいく。
ついに、領主と話すことができる。
これまで調べてきたこと。
高レベルのプレイヤーに対するNPCの反応。
進化について隠されている情報。
そして、住民たちが口を閉ざしている理由。
そのすべてを知ることができるかもしれない。
俺は配信画面を見つめながら、サン社員の後を追うように館の中へ意識を向けた。




