第十六話
次の日。
今日もいつものようにログインして、配信をつける。
PVPエリアを見ると、どうやら炎児はいないようだ。
「さてと、それじゃあ、どうやって領主に会いますか」
『そりゃあ、住人から上にあげてもらうのがいいんじゃないか?』
『いや、それだと時間がかかりすぎないか?』
「そうなんだよな。それだと、いつ会えるか見通しが立たない」
『なら、領主の側近のNPCを探し出すとか?』
「誰か知ってる奴いるか?」
『……』
『へ』
『いやぁ、聞き込んだけど、そんな人はいなかった気がする』
「この線もちょっと期待できないか」
その後も意見を出し合うが、有効な手段は見つかりそうになかった。
「もう、いっそのこと直接行ってみるか」
『それがいいかもしんないね』
『考えていても事態は動かないし』
意見を出し合いながら、見知った仲間の中から誰に頼もうか考えていた。
その中で、彼の名前があったことを思い出す。
「サン社員、今いる?」
『はい、いますよ』
良かった。いてくれたようだ。
「まだ決まったわけじゃないんだけど、領主の館に行ってもらえない?」
彼はレベル30に到達しているし、物腰も柔らかく、言葉も丁寧だ。
今回、領主に会うには適任だと思う。
『ちょっと今、フィールドにいるので、十分ほど待っていただけますか?』
「了解。ごめんね。忙しそうなのに」
『大丈夫ですよ。この状況を何とかしたいと思っている一人ですから』
そんなやり取りをしてから、しばらくして。
噴水の前にサン社員が到着した。
「お待たせしてしまい、申し訳ありません」
ゲーム内では聞こえないはずだが、サン社員は俺の配信を開いているらしく、こちらに向かって話しかけてくる。
「いや、全然大丈夫。まだ約束の五分前だし」
「それで、いったんここに来てくれとのことでしたが。いかがしましたか?」
「領主の館の前で何を聞くか相談しているところを見られたら、いらぬ誤解を与えかねない。だから、ここで事前にいろいろ決めておきたかったんだ」
「そういうことでしたか。それでは、流れを確認しておきましょうか」
「うん。そうしよう。そうだ、誰か領主の館に行ったことあるやついる?」
『俺、遠目にだけど見たことある。門のあるでかい家って感じだった。しばらく見てたら、門の所にいる兵士?にめっちゃにらまれた』
このコメントが目に入り、どうやらここで話し合って正解だったようだ。
「情報ありがとう。じゃあ、まずはその兵士と話す必要があるっぽいな」
「そうですね。まずは正直に、領主に会いたいと聞いてみるのがいいでしょう」
「それでいいと思う。でもまあ、十中八九追い返されるだろうな」
「でしょうね。問題は、追い返された場合の対処法ですね」
「うん。まあ、その時はこっちの持っている情報……高レベルのプレイヤーに対して何かあるのか聞いてみて、食い下がるのがいいと思う」
「それでも断られたら?」
「その時はしょうがない。まだ情報が足りないのだと納得して、戻るしかないな」
「おや? あっさりと引き下がるのですね?」
「これまでの検証から、NPCにも感情みたいなものがあるかもしれない。だから、なるべく悪印象を与えるのは避けたいからな」
「そうですね。会いたい相手に悪感情を抱かれては、元も子もありませんからね」
「じゃあ、もし領主に会えた時のことを考えよう。大体まとめると、NPCが情報を隠していること、進化の方法について、冒険者に対してNPCが警戒している理由くらいか?」
「そうですね。その三つは聞いておきたい。あと、誰が住民に対して情報をしゃべらないようにしているのかも聞いておきたいですね。まだ領主と決まったわけではないので」
「あっ、そうだった。ありがとう、サン社員」
命じているのは領主だと思い込んでしまっていた。
いかん、いかん。
思考を固定するのは視野を狭めてしまう。反省しなくては。
「それじゃあ、領主に聞く内容はこれくらいかな?」
「はい、問題ないかと」
『それでいいと思う』
よし、大丈夫そうだ。
「それじゃあ、サン社員。昨日の配信、見てたか?」
「はい、拝見していました」
「それじゃあ、炎児と同じく配信してもらうことってできるか?」
「もちろん、大丈夫です」
そして、サン社員が配信を開始した。
「ありがとう、サン社員。それじゃあ、行ってきてもらえるか?」
「はい。では、行ってまいります」
そう言うと、領主の館があるであろう方向に歩いて行った。
その後ろ姿を見送り、配信に目を向ける。
そして、数分後。
配信には、大きな館とその門が映っている。
サン社員の声が聞こえてくる。
「それでは、行ってまいります。配信のような経験をしたことがないので、少し不思議な気分ですね」
少しうれしそうな声で、そう言っていた。
門が近づいてくる。
その前には、兵士が立っているのが分かる。
そして、立ち止まった。
「領主様にお会いしたいのですが




