第十五話
聞き込んだ情報を整理すると、まず普通の質問については答えてくれた。
しかし、高レベルの情報について聞いてみると、言葉を濁していた。
そしてこれは、複数のNPCで同じ状態が見られた。
でも、それだけだった。
「う~ん、聞き込んでもらったけど、どうも重要な情報は出てこなかったな」
『そうね』
『高レベルに対して何かあるってのはわかったけどね』
「聞いてみる内容に何かあるのかなぁ?」
NPCにした質問について考える。
「高レベルのプレイヤーをどう思うか」
「高レベルになるにはどうしたらいいか」
「レベル30になると進化できるけど、何か情報はあるか」
「進化する方法を町の人は知っているか」
それに対する答えは、
「皆さんお強い人ばかりだと思いますよ」
「努力した結果なので、私には……」
「私は詳しくないので何とも……」
「私には分かりませんねぇ」
思い返してみたが、何もないように思える。
「……あれ?」
どのNPCも、高レベルについて聞いた途端、歯切れが悪くなる。
これは全員に共通していた。
ただ、もう一つ共通していることに気づいた。
『私には』
『私は詳しくない』
そういう言葉が多用されていた。
「……自分には、ってことか?」
『なんか気づいたん?』
「いや、聞いた質問って、普通なら『知らない』って答えて終わりなのが多いじゃん?」
『そうだね』
「でも、NPCの答えって、『私にはわからない』とか『私は詳しくない』って答えてたんだよ」
そこで、一つの可能性が頭に浮かんだ。
知らないんじゃない。
知っているけど、自分からは話せないんじゃないか?
「だとしたら、NPCたちは何も知らないわけじゃないのかもしれない」
『どゆこと?』
『それなら誰かは知ってるってこと?』
「そう」
俺がそう答えると、コメント欄が少しざわついた。
『でも、なんでそう思ったの?』
「みんな同じだったんだよ」
「知らないなら、シンプルに『知らない』って言えばいい」
「でも、みんな『私にはわからない』とか『私は詳しくない』って答えてたんだよ」
「まるで、自分以外だったら知っているみたいに」
『なるほど』
『確かに知らないとは言わずに「私は」とか「私には」って言ってはぐらかしてたな』
「そうなると、考えるべきなのは……」
誰が知っているかということだ。
「誰か、この町のNPC……。いや、この街について詳しい人いる?」
『俺、少しなら』
「おっ、まじか。この街の周りで何か知ってることある?」
名前は、+堕天使日出夫+か。
「堕天使日出夫か。ん? お前、最初の頃からいるよな。すまん、みんな。ちょっと待ってくれ。こいつに聞きたいことがあったんだ。なんで+なんだよ。普通ダガーじゃないのか、それ?」
ずっと気になっていたことを聞いてみる。
『ほんとだ。†←これってダガーっていうんだね。知らなくて+にしてた。(´・ω・`)』
まさか、知らなかったのか。あえて王道を外してるのかと思ったが、予想が外れていた。
「いや、ごめん。ただの好奇心だったんだ。悲しませるつもりはなかった。そうだ、それで教えてくれるか?」
『うん、そうだね。このあたりの土地は貴族が治めてるって知ってる?(´・ω・`)』
「いや、その辺のことは何も知らないから、教えてくれると助かる」
『了解。初めの町は王家から任命された貴族。今は確か、侯爵が王様から命を受けてるんだよ。それで、町の経済だったり、治安の維持を領主として行ってるんだよ。(´・ω・`)』
「そうか。この町、領主が治めてたのか」
コメントを眺めながら考えていた。
しかも、一人や二人ではない。
町の中にいるかなりの数のNPCが、同じ反応をしていた。
ただの偶然とは思えない。
なら、この町には高レベルや進化について知っている人物がいて、その人物を中心に情報が管理されているのではないか。
だとすれば――。
町を治めている領主が、その情報を握っている可能性は高い。
――だが。
「領主には聞いてないよな」
『それはそうよ』
『そんな伝手あるわけない』
『会うのは難しいだろうな』
「厳しいよな、俺、石だし」
『直接は会えんやろな』
「でもなー。これまでのことを考えるとなぁ」
俺は少し考える。
NPCたちは、高レベルや進化のことについて聞かれると、口を濁していた。
しかも、一人や二人ではない。
町の中にいるかなりの数のNPCが、同じ反応をしていた。
もし、本当に何かを隠しているのだとしたら。
そして、それを知っている人がいるのだとしたら。
町のことを一番把握している人物なのではないだろうか。
「……これ、領主の可能性高くないか?」
『あー』
『確かに』
『町を治めてるなら、色々知ってそうだよな』
まだ憶測にすぎない。
ただ――。
「一度、話は聞いてみたいよな」
でも、問題がある。
「どうやって会うんだ?」
そう言って、頭を抱える羽目になった。




