第1章 第5話:東京での初依頼(後編)
とうとう本当の試練の時が……。戦闘がメインになる今回の話、不安しかありません。温かい目で見守ってください(-_-;)
「正面の門番二人を排除完了」
朧からの報告が4人のイヤホンに届く。
「螢、周りの状況の変化は?」
漣が螢に確認をする。
「変化なし」
短いが返事が返ってくる。
漣が4人へ指示を出す。
「螢はドローンを戦闘タイプに変更して戦闘の補佐を頼む。合図をしてから10秒後に2階の窓ガラスを破って室内に侵入。その後内部の敵を無力化する。一応可能な限り殺さないように。ただし命が危険な場合に限り殺しも許可する」
「「「「了解」」」」
4人からの返答を聴いて漣がカウントを始める。
「10、9、8……3、2、1、GO!」
バリーン、ガラスの割れる音が4方から鳴り響き、4人が内部に侵入した。
突然の音と侵入者に混乱する男たち。
最初に動いたのは猪突猛進が売りのアイリスであった。
アイリスは混乱する男たちに向かい、相棒の一対のトンファーを逆手に構えた。
「大和魂!」
叫びながら敵の懐へと弾丸のように突っ込んで行く。一人の男の懐に瞬時に滑り込むと、アイリスのトンファーが顎の急所を的確に下から「ゴキッ」という鈍い音をさせながら打ち抜き、一撃でその意識を刈り取った。
混乱から立ち直った他の男が、アイリスに向かい持っていた拳銃で応戦をする。
アイリスは襲い来る弾道を見切り、紙一重の体捌きで銃弾を躱す。追撃の弾丸に対しては、高速で旋回させたトンファーの面で、飛来する弾道を甲高い金属音を響かせながら、次々と叩き落としてみせた。
男の構えた銃が、カチカチと虚しく弾切れの音を響かせた瞬間――アイリスが猛烈な勢いで急接近し、容赦のない一撃でその男を地面へと沈めた。
「二人目撃破!」快活に叫ぶアイリス。
だが、勝利の余韻に浸る彼女の背後から、別の男が銃口の先をアイリスへ向ける。
男の指が引き金にかかろうとしたその瞬間、男の首の後ろ側へ、黒い影がピタァッと容赦なく取り憑いた。螢の操るドローンだ。
「なんだ……ッ!?」男は焦り、首筋のドローンを無理やり引き剥がそうと手を伸ばす。しかし、それよりも早く螢の指先が画面をタップした。
バチバチバチィッ!!!強烈な青白い高圧電流が男の全身を駆け巡る。男は声にならない悲鳴を上げ、全身を激しく痺れさせながら、そのまま崩れるように意識を失った。辺りには高圧電流特有の髪が焦げたような臭いが漂っていた。
アイリスが、それを見てドローンのカメラに向かって親指を立てる。
「ありがとう、螢!信じてたよ」
「アイリスさん、遊びすぎです。もっと真面目に働いてください」
淡々と小言を返しつつも、螢の指先はすでに次の獲物を捉えていた。
彼女の操作によって、ドローンが別の男の顔面へと取り憑き、また一人、冷徹に顔面への強烈な高圧電流を流された男は意識を刈りとられたのであった。
一方、朧と陽菜の二人も、連携して男たちを翻弄していた。
朧が突如として四人の男たちの前に躍り出る。
その朧へ向けて男たちが慌てて放った銃弾の雨を、彼女はまるでヒラリヒラリと美しい踊りを舞うかのように、しなやかな体捌きで紙一重に躱しながら肉薄していく。
驚愕する男たちの目の前に一瞬で入り込んだ朧は、その手のひらに乗せた怪しげな白い粉を、「ふっ」と敵の顔めがけて吹きかけた。不意にその粉を吸い込んだ二人の男たちは激しく咳き込み、瞬時に身体の異変を感じる。
「な、なんだ……!? 急に目の前がぐるぐると回りだしたぞ……!」
朧が撒いたその粉は、吸った者の平衡感覚を狂わせる特製の秘薬であった。
平衡感覚を奪われ、地面にガクリと膝をつく2人の男。
その横では陽菜が腕を複雑に動かしていた。その陽菜を攻撃しようと残った二人の男が同時に動き出そうとした途端、二人の男は完全にその動きをピタッと止めたのであった。
その男たちの周りには照明の光を浴びてキラリと光る細い糸が張り巡らされていた。男たちが無理に動こうとすると、その細い糸がいともたやすく衣服を裂いて肌へとグイっと食い込み、痛々しい赤い筋を作った。
「下手に動こうとすると、体のいたるところが切れて細切れになってしまいますよ」
冷徹に事実だけを伝える陽菜。
こうして完全に無力化された四人の男たち。身動きの取れない彼らの意識を、陽菜と朧の二人は、いともたやすく刈り取っていった。
手下たちがどんどんと数を減らしていく中、残っていた武器商人のボスは側近三人を連れ、現場からの脱出を図ろうと裏口の出口へと向かった。
しかし、そこに一人の男が音もなくすうっと立ちはだかる。5人の中で一番の実力者である漣であった。
ボスは顔を青ざめさせ、悲鳴交じりに叫ぶ。
「お、お前たち、あいつを排除するんだ!」
命じられた側近たちは、壊滅した手下たちとは一線を画す、精鋭中の精鋭であった。三人は一糸乱れぬ連携で銃とナイフを構え、同時に漣へと襲い掛かる。
襲い来る三人のわずかな隙間を、あざ笑うかのような神速で漣がするりとすり抜ける。
遅れて、一陣の風がビューと吹いた。
漣がそのまま静かに歩を進める後ろで、何が起きたのかさえ理解していない三人の側近たちが、糸の切れた人形のように同時に意識を失い、『ドサッ』と一つの重い塊のようになって同時に崩れ落ちたのであった。
その光景を目の当たりにしたボスは青ざめた顔をし、体をぶるぶると震えさせていた。
漣はゆっくりとボスの元へと歩を進める。その間に他の手下たちをすべて倒した4人がボスを囲むように集まって来た。
ボスが勇気を振り絞り、かすれた声で漣に問いかける。
「お、お前たちは……い、いったいな何なんだ?」
漣「俺達か、そうだな。俺は『ブラック』」
陽菜「私は『ディープブルー』」
アイリス「私は燃える炎の『レッド』」
螢「『グリーン』」
朧「私は『パープル』ね」
それぞれが自己紹介を済ませたところで再び漣が話をする。
「俺たち5人は、町のごみを排除する掃除人、『シティー・クリーナー』だ。お前たちは裏社会の暗黙のルールを守らず好き放題にやりすぎた。自分たちの浅はかさを牢の中で悔いることだな」
そう言うと、漣は素早く動きボスの意識を刈り取った。
漣たちは意識を失っている男たちを一か所に集めて縛り上げると、漣が霧雨に依頼達成の報告を行う。
「依頼は達成しました。我々はこれより撤収します」
『了解した。5分後に警察が突入するので、それまでに完全撤退してくれ』
「了解」
依頼の報告が終わり、電話を切ったその瞬間、漣の背後から、じっとりとした、まるで飢えた猛獣が獲物を値踏みするような視線が突き刺さる。
視線を感じた先を振り返るが、その時にはすでに視線を感じることはできなかった。
(今の視線はいったい?)
その漣の様子に気が付いた陽菜。
「ブラック?どうかしました?」
「いや、何でもない。それより間もなく警察が来るから撤収するぞ」
漣達五人は速やかに移動を開始したのであった。
先ほど一瞬だけ感じた視線は一体何だったのか……。今の漣に、その答えを知る術はなかった。
ーーー
武器商人のボスが深い闇から再び目を覚ましたのは、けたたましく赤色灯を光らせ、自分を連行していくパトカーの、冷たい座席の中であった。その後、取り調べで「忍者とくノ一にやられたんだ!」という男たちの声が数多く上がったが誰もそれを相手することはなかった。そして、里の内通者の手によって、男たちの口から出た『忍者』に関する証言はすべてなかったことにされたのであった。
第1章第5話をお読みいただきありがとうございます。
今回は前回に引き続き、東京での初任務の内容になります。前書きでも書きましたが戦闘シーンを書くのがこの物語が初めてで、不安しかありませんでした。投稿した今でもちゃんと書けているのか不安で仕方ないです(-_-;)。なのでこんな可哀想な作者をブクマ&評価☆で応援してあげて元気にしてやってください。それによって作者の自信にもつながりますので……。




