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恐竜王レクス 〜三万年後に目覚めた最強王族、人類の世界で冒険者になる〜  作者: Saaaya


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第七話 責任


 地下空間に警報が鳴り響く。


 赤い光が点滅し続けていた。


「第二封印区画に異常反応!」


「封印強度が急激に低下しています!」


「崩壊まで推定十五分!」


 魔導士たちの叫び声が飛び交う。


 現場は再び混乱に包まれていた。


 リリアは青ざめた顔で周囲を見渡す。


 一体だけでも大騒ぎだった。


 それなのに。


 今度は別の封印まで崩れ始めている。


「レクスさん……」


 不安そうな声で呼びかける。


 レクスは静かに目を閉じていた。


 意識を集中させる。


 魔力の流れを読む。


 封印の奥に眠る気配を探る。


 そして。


「……二体」


 ぽつりと呟いた。


「え?」


「いや」


 レクスは眉をひそめる。


「三体か」


 リリアの顔色がさらに悪くなった。


「さ、三体もいるんですか!?」


「正確には分からん」


 だが複数いる。


 それだけは間違いない。


 しかも弱くない。


 ヴェルドも先ほどまでの笑みを消していた。


「面倒な話だな」


「同感だ」


 レクスは即答した。


 リリアは少し驚く。


 目覚めた同胞との再会を喜ぶと思っていたからだ。


 しかしレクスは違った。


 むしろ警戒している。


「そんなに危険なんですか?」


 恐る恐る尋ねる。


 レクスは少し考えた。


「そうだな」


 そして。


「ヴェルド級が三人増える」


 と答えた。


「おい」


 即座に本人が反応した。


「誰が基準だ」


「分かりやすいだろう」


「殺すぞ」


「後でな」


 リリアは思わず頭を抱えた。


 この状況でよくそんな会話ができるものだ。


 だが次の瞬間。


 地下の奥から轟音が響いた。


 ドォォォォォン!!


 空間全体が揺れる。


 天井から砂が落ちてくる。


「第二区画の封印壁が崩壊!」


「もう持ちません!」


 魔導士たちが悲鳴を上げる。


 レクスは黙ったまま考えていた。


 三万年前なら簡単だった。


 力で従わせればいい。


 だが今は違う。


 恐竜は世界の支配者ではない。


 人類が文明を築いている。


 ここで目覚めた恐竜たちが暴れれば。


 人類との全面戦争になる。


 それだけは避けなければならない。


「なら決めろ」


 ヴェルドが言った。


「何をだ」


「これからどうするかだ」


 レクスは沈黙する。


 答えは決まっていた。


 だが口にするには重い。


 数万年ぶりに再会した同胞。


 本来なら守るべき存在だ。


 しかし。


 世界を滅ぼすなら話は別だった。


「止めるぞ」


 レクスが言った。


 リリアが目を見開く。


「え……?」


「目覚めた同胞をだ」


 静かな声だった。


 だが迷いはない。


 ヴェルドが目を細める。


「命令か?」


「違う」


 即答だった。


「我にそんな権利はない」


 王ではない。


 王族の一人に過ぎない。


 他の王族が生きている可能性もある。


 王そのものが生存している可能性だってゼロではない。


「責任だ」


 レクスは言う。


「我らが目覚めたことで世界が滅ぶなら」


「止める責任がある」


 地下空間が静まり返る。


 兵士も。


 魔導士も。


 リリアも。


 思わずレクスを見ていた。


 ヴェルドは数秒黙る。


 そして鼻で笑った。


「相変わらず面倒な奴だな」


「そうかもしれん」


「だが嫌いじゃない」


 レクスが少し驚く。


「初めて聞いたな」


「勘違いするな」


 ヴェルドは吐き捨てた。


「貴様は嫌いだ」


「知っている」


「大嫌いだ」


「知っている」


「次こそ殺す」


「それも知っている」


 リリアは頭痛を覚えた。


 本当に仲が悪い。


 だが不思議だった。


 敵同士のはずなのに。


 長い付き合いがあることだけは伝わってくる。


 ヴェルドは肩を竦める。


「まあいい」


「今回は付き合ってやる」


「何故だ」


「興味がある」


 金色の瞳が細められる。


「三万年後の世界にな」


 そして。


 獰猛に笑った。


「それに貴様を殺すのは俺だ」


 レクスはため息を吐く。


 昔から何も変わっていない。


 その時だった。


 地下のさらに奥から咆哮が響く。


 人間のものではない。


 魔獣でもない。


 もっと古い。


 もっと強大な存在の声。


 その瞬間。


 レクスとヴェルドの表情が変わった。


「……この気配」


 ヴェルドが呟く。


 レクスも目を細める。


 知っている。


 忘れるはずがない。


 三万年経とうと。


 その魔力を。


「まさか」


 ヴェルドの顔から笑みが消えた。


 珍しく。


 本当に珍しく。


「おいレクス」


「ああ」


 レクスも頷く。


 二人とも同じ結論に辿り着いていた。


「面倒な奴が起きるぞ」


 次の瞬間。


 地下深くから再び轟音が響いた。


 そして。


 第二封印区画を隔てる巨大な壁に。


 一本の亀裂が走った。

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