第四十五話 力を合わせて
レヴィアの足元に、青い魔法陣が広がる。
透明な水が渦を巻き、周囲の空気がひんやりと冷えた。
「少し大きいのを使うわ」
レヴィアが静かに言う。
ヴェルドが魔獣を押し返しながら笑う。
「訓練場みたいにやりすぎるなよ!」
「分かってるわよ」
本当に分かっているのかは怪しかった。
レヴィアは両手を前へ向ける。
次の瞬間。
大量の水が魔法陣から噴き上がった。
ゴォォォォッ!!
三体の魔獣を包み込むように、水流が一気に飲み込んでいく。
「グオオオッ!」
黒い瘴気が水に触れた瞬間、ジュウッと音を立てて消えていく。
レクスは魔獣の様子を見逃さなかった。
「今だ」
短い合図。
ヴェルドが飛び出す。
「おらぁっ!」
大剣が瘴気の薄くなった魔獣を弾き飛ばす。
ガイアは正面から拳を叩き込み、二体目の動きを止める。
ディノは最後の一体を盾で押さえ込み、逃げ道を塞いだ。
カルもすぐに加勢し、剣で魔獣の足を払う。
三体とも完全に動きを止められた。
「終わりだ」
レクスが静かに歩み寄る。
三体の魔獣は苦しそうに息をしていた。
先ほどまで赤黒かった瞳は、少しずつ元の色へ戻っていく。
やがて。
三体とも力なく地面へ伏せた。
森は静まり返る。
「助かった……」
リリアが安堵の息を吐く。
バルドは魔獣へ近付き、慎重に様子を確認した。
「瘴気は消えてるな」
「もう暴れる様子もねぇ」
レクスは周囲へ目を向けた。
残っていた狼型の魔獣たちは、ゆっくりと森の奥へ帰っていく。
こちらを襲う気配はない。
商人が荷馬車から降りてきた。
「ありがとう……!」
深く頭を下げる。
「荷物も、仲間も無事でした」
他の護衛たちも次々と頭を下げた。
「本当に助かった」
「こんな戦い方があるなんて……」
バルドは苦笑する。
「俺も勉強になったよ」
魔獣だからといって、何でも倒せばいいわけではない。
状況を見極め、人を守る。
それも冒険者の仕事なのだと、改めて実感していた。
レクスは商隊へ視線を向ける。
「街まで送ろう」
「帰るまでが依頼だ」
その一言に、リリアは思わず笑みを浮かべた。
「はい」
一行は荷馬車を囲むように歩き出す。
夕暮れの街道には、もう魔獣の姿はなかった。
冒険者としての二つ目の依頼も、無事に終わりを迎えたのである。




