第四十四話 役割
三体の魔獣が低く唸る。
グルルルル……。
先ほどの群れとは違う。
統率された動き。
そして全身を覆う黒い瘴気。
「またあの瘴気か」
バルドが剣を構える。
前回の討伐依頼で見た異常個体とよく似ていた。
レクスは三体を見比べる。
「同時に来るな」
その一言だった。
ヴェルドが笑う。
「左は俺だ」
ガイアが一歩前へ出る。
「中央は任せろ」
ディノは盾を構えた。
「右を止める」
誰かが指示したわけではない。
自然と役割が決まっていた。
「カル」
「ああ」
レクスが呼ぶ。
カルはすぐに理解する。
荷馬車の前へ移動し、剣を抜いた。
「ここは通しません」
ティラは退屈そうに伸びをする。
「私は?」
レクスは短く答えた。
「援護だ」
「はーい」
その返事と同時に。
三体が一斉に駆け出した。
「来るぞ!」
バルドが叫ぶ。
左の一体はヴェルドへ。
右はディノへ。
中央はレクスたちへ真っすぐ突っ込んでくる。
ドォン!!
ガイアが正面から受け止めた。
衝撃で地面がひび割れる。
それでも。
ガイアは一歩も退かない。
「止めた!」
護衛の冒険者が叫ぶ。
一方。
ヴェルドは大剣を振るい、魔獣の爪を弾き飛ばす。
「速ぇな」
楽しそうに笑う。
ディノは盾で攻撃を受け流しながら、魔獣を荷馬車から遠ざけていく。
その間に。
レヴィアが指先を動かした。
幾筋もの水が地面を走る。
魔獣たちの足元を濡らし、動きを鈍らせた。
「今よ!」
ティラが軽く指を鳴らす。
乾いた地面が一瞬で隆起し、魔獣の足元を塞ぐ。
「え?」
リリアが目を丸くする。
「ティラさんって土魔法も使えるんですか?」
「少しだけ」
ティラは笑う。
「水ほど得意じゃないけどね」
その隙を逃さず。
レクスが踏み込んだ。
一閃。
鋭い拳が中央の魔獣の額を捉える。
ズガァン!!
巨体が数メートル吹き飛び、地面を転がった。
しかし。
「まだだ」
レクスは構えを解かない。
倒れた魔獣の体から。
再び黒い瘴気が溢れ始めた。
「また再生する!」
リリアが叫ぶ。
レクスは静かに頷く。
「なら」
視線をレヴィアへ向ける。
レヴィアはにっこりと笑った。
「任せて」
青い魔法陣が足元に広がり始めた。




