第四十三話 連携
九人が一斉に駆け出す。
その動きに、商隊の護衛たちは目を見張った。
「お、おい!」
「作戦は!?」
普通なら陣形を組む。
役割を確認する。
だが、レクスたちは何も相談していない。
それでも迷いなく動いていた。
先頭を走るのはレクス。
左右にはヴェルドとガイア。
少し後方にディノ。
さらに後ろでレヴィアとティラが周囲を見渡す。
カルは荷馬車へ向かい、ルナは空高く舞い上がった。
リリアは商隊の近くへ駆け寄る。
「けが人はいますか!」
「こっちだ!」
護衛の一人が叫ぶ。
リリアはすぐに応急処置を始めた。
その頃。
先頭では戦いが始まっていた。
魔獣が飛びかかる。
レクスは最小限の動きでかわす。
そのまま拳を一発。
ドンッ!
魔獣は地面を転がり、動かなくなった。
「一体!」
ヴェルドが笑う。
「遅いぞ!」
言いながら、大剣を横薙ぎに振るう。
ドガンッ!
二体まとめて吹き飛ばした。
「これで三体だ!」
右側ではガイアが立ち塞がる。
商隊へ向かおうとした魔獣が飛びつく。
しかし。
ガイアは避けない。
そのまま首根っこを掴み上げた。
「悪いな」
地面へ叩きつける。
ズドォン!!
土煙が舞う。
残る魔獣たちは思わず足を止めた。
「今だ!」
ディノが盾を構え、前へ出る。
逃げ道を塞ぐように立ちはだかる。
魔獣たちは左右へ散ろうとするが、その先にはヴェルドとガイアがいた。
完全に包囲されていた。
「連携してる……」
護衛の冒険者が呆然と呟く。
「打ち合わせなんてしてないだろ?」
バルドの言葉を思い出す。
――あいつらは長い付き合いだ。
――目を見れば何をするか分かる。
まさにその通りだった。
レクスが動けば、誰も指示を待たない。
自然と最適な位置へ動いている。
その時。
空からルナの声が響いた。
「レクス!」
「奥にまだいる!」
全員の動きが止まる。
「何体だ?」
レクスが尋ねる。
「三体!」
ルナは森のさらに奥を指差した。
「でも……」
珍しく声が曇る。
「普通の魔獣じゃない!」
その言葉と同時に。
ズシン。
ズシン。
森の奥から、重い足音が近づいてきた。
木々が大きく揺れる。
魔獣たちは怯えたように後退し始めた。
レクスは静かに目を細める。
「またか……」
姿を現した三体は、通常の魔獣より一回り大きい。
全身を黒い瘴気が覆い、その瞳は赤黒く染まっていた。
しかも。
三体はまるで意思を共有しているかのように、同時にレクスたちを見据えた。
ヴェルドが口元を吊り上げる。
「ようやく歯ごたえがありそうだな」




