第三十八話 冒険者らしい戦い
黒い瘴気をまとった巨大な魔獣が低く唸る。
グルルルル……。
その視線は。
親子の魔獣へ向けられていた。
「仲間じゃないのか?」
ディノが首を傾げる。
ガイアが静かに首を振る。
「違う」
「狩る側だ」
巨大な魔獣は、一歩踏み出した。
親の魔獣が子どもの前に立ちはだかる。
だが、その足は震えていた。
勝てない。
本能で分かっているのだ。
「ギルドマスター!」
冒険者の一人が叫ぶ。
「どうします!」
バルドは剣を構えた。
「依頼内容を変更する!」
全員が振り向く。
「討伐対象は、あの巨大な魔獣だ!」
その一言で冒険者たちが動き出す。
「前衛!」
「左右に展開!」
「魔導士は後方!」
レクスはその様子を静かに見ていた。
「ほう」
リリアが尋ねる。
「どうしました?」
「役割を決めて戦うのか」
「あ、はい!」
「一人で戦うより安全なんです」
レクスは小さく頷いた。
「理にかなっている」
三万年前とは違う戦い方だった。
その時。
巨大な魔獣が咆哮した。
「グオオオオオッ!!」
大地を蹴る。
速い。
巨体とは思えない速度だった。
「来るぞ!」
バルドが叫ぶ。
前衛が盾を構えた。
ドォォン!!
激しい衝撃。
盾ごと吹き飛ばされる。
「ぐあっ!」
「強ぇ!」
巨大な魔獣は止まらない。
次の冒険者へ飛びかかろうとした。
その瞬間。
ガキィィン!!
黒い大剣が牙を受け止めた。
「悪いが」
ヴェルドだった。
「そいつらを食わせる気はねぇ」
ニヤリと笑う。
巨大な魔獣が腕を振るう。
ヴェルドは軽く後ろへ跳び、攻撃をかわした。
「おい、ガイア!」
「ああ」
二人が左右へ散る。
ガイアが正面から踏み込む。
ズドォン!!
拳が巨大な魔獣の肩へめり込んだ。
巨体が大きく揺れる。
「今だ!」
バルドが叫ぶ。
冒険者たちが一斉に飛び出した。
剣。
槍。
魔法。
四方八方から攻撃が降り注ぐ。
巨大な魔獣は苦しそうに唸った。
だが。
倒れない。
「硬い!」
ディノが眉をひそめる。
レヴィアも珍しく真面目な顔だった。
「普通の魔獣じゃないわね」
レクスは静かに観察していた。
傷は付いている。
しかし。
治っている。
「……再生しているな」
その一言で空気が変わった。
リリアも気付く。
「傷が……消えてる?」
巨大な魔獣は再び立ち上がる。
赤い瞳が妖しく光る。
次の瞬間。
その口から黒い瘴気が溢れ出した。
「全員、下がれ!」
バルドが叫ぶ。
だが。
間に合わない。
瘴気の奔流が、冒険者たちへ向かって放たれた。




