第三十六話 魔獣討伐
翌朝。
レクスたちはバルド率いる討伐隊と共に、西部山脈の麓へ向かっていた。
「今回の依頼を説明する」
歩きながらバルドが口を開く。
「最近、この辺りで魔獣の群れが現れ始めた」
「数は三十から四十体」
「しかも統率が取れてやがる」
リリアが首を傾げる。
「魔獣って群れを作るんですか?」
「普通は作らねぇ」
バルドが首を振る。
「だから調査も兼ねた討伐依頼なんだ」
レクスは静かに話を聞いていた。
三万年前にも獣はいた。
だが、今の魔獣とは別物らしい。
「見えてきたぞ」
先頭を歩く冒険者が声を上げる。
森の奥。
木々の隙間から黒い影が動いた。
「いた!」
次の瞬間。
低いうなり声が響く。
姿を現したのは、大型の狼に似た魔獣だった。
漆黒の体毛。
赤い瞳。
鋭い牙。
一体ではない。
二体。
三体。
次々と姿を現す。
「囲まれた!」
冒険者の一人が叫ぶ。
バルドが剣を抜く。
「迎え撃つぞ!」
しかし。
レクスが一歩前へ出た。
「待て」
全員が動きを止める。
「どうした?」
バルドが尋ねる。
レクスは魔獣たちを見つめたまま答えた。
「妙だ」
「何がだ?」
「襲う気配がない」
言われてみれば。
魔獣たちは距離を保ったまま唸っているだけだった。
飛びかかってこない。
逃げもしない。
ただ。
何かを守るように並んでいる。
ヴェルドも気付いた。
「……確かに変だな」
ガイアは森の奥へ視線を向ける。
「何かいる」
ルナが空へ舞い上がった。
「見てくる!」
数十秒後。
戻ってきたルナの表情は真剣だった。
「奥に巣がある!」
「子どもがいるわ!」
その一言で空気が変わった。
リリアは思わず魔獣たちを見る。
「だから襲わないんだ……」
子どもを守るため。
ただ、それだけだった。
バルドは険しい表情になる。
「依頼は討伐だ」
冒険者たちも黙る。
レクスは静かに魔獣たちを見つめた。
そして。
「話は変わる」
そう呟いて、一歩前へ出た。




