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恐竜王レクス 〜三万年後に目覚めた最強王族、人類の世界で冒険者になる〜  作者: Saaaya


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第三十四話 山脈の奥へ


 山は、静かだった。


 いや。


 静か“すぎた”。


 さっきまでの崩壊跡が嘘のように、風の音だけが響いている。


「気持ち悪いな」


 ヴェルドが呟く。


「嵐の前ってやつか」


「嵐というより……」


 ガイアが目を細める。


「“押さえつけられている”感じだ」


 その言葉に、全員の表情が変わった。


 レクスは歩みを止めない。


 ただ前を見ている。


「奥だ」


 一言だけだった。


 カルが即座に距離を詰める。


「レクス様、お守りします!」


「必要ない」


「必要です!」


 即答だった。


 ルナが軽く笑う。


「相変わらずね」


「こういうのは昔からだ」


 ヴェルドが肩をすくめた。


 リリアは最後尾で必死についていく。


(なんで私、まだここにいるの……?)


 もう何度目か分からない疑問だった。


 それでも足は止めなかった。


 その時。


 ディノが足を止めた。


「……音がする」


 全員が静止する。


 耳を澄ます。


 ――ドン。


 ――ドン。


 一定のリズム。


 まるで巨大な何かが歩く音。


 地面の奥から響いてくるようだった。


「来るぞ」


 レクスが低く言った。


 次の瞬間。


 山の岩壁が“内側から”押し破られた。


 ドォォォォォン!!


 土煙。


 崩落。


 衝撃波。


 リリアは咄嗟に腕で顔を覆う。


 やがて視界が戻る。


 そこにいたのは。


 異様な存在だった。


 黒ではない。


 灰銀色の鱗。


 細長い身体。


 だが獣ではない。


 どこか“知性”を感じる姿。


 ゆっくりと首が動く。


 周囲を確認するように。


 そして。


 レクスを見た。


 沈黙。


 一瞬だけ。


 時間が止まったようだった。


「……レクス」


 低い声。


 女性の声だった。


 ヴェルドの表情が歪む。


「やっぱり来たか」


 ガイアが息を吐く。


「ティラだ」


 リリアが小さく声を漏らす。


「女の人……?」


 その瞬間。


 その存在がゆっくりと姿を変えた。


 鱗がほどけるように消えていく。


 骨格が組み替わるように変化する。


 そして。


 一人の女性が立っていた。


 銀髪。


 長い睫毛。


 冷たい瞳。


 だがその奥に、明らかな狂気にも似た好奇心がある。


「久しぶりね」


 ティラは笑った。


「三万年ぶり、だったかしら」


 レクスは目を細める。


「相変わらずだな」


「それはこっちの台詞よ」


 ティラは周囲を見渡す。


 ヴェルド。


 ガイア。


 レヴィア。


 ディノ。


 ルナ。


 カル。


 そしてリリア。


「ふーん」


 楽しそうに笑った。


「増えたわね」


 リリアが小声で聞く。


「この人は……」


 レヴィアが答える。


「一番ややこしいの」


 ヴェルドも頷く。


「戦うと面倒」


 ガイアは一言。


「理屈が通じない」


 ディノは一番シンプルに言った。


「危険だな」


 その評価が一致している時点で、かなり異常だった。


 ティラはレクスに一歩近づく。


「ねぇレクス」


「何だ」


「この世界、どう思う?」


 唐突な質問だった。


 レクスは少しだけ間を置く。


「……悪くない」


 ティラは目を細める。


「そう」


 そして。


 にやりと笑った。


「じゃあ、壊してもいいわね」


 空気が一瞬で凍った。

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