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恐竜王レクス 〜三万年後に目覚めた最強王族、人類の世界で冒険者になる〜  作者: Saaaya


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第三話 獲物が築いた世界


 結界都市アルマ。


 その巨大な城壁を見上げながら、レクスは足を止めた。


 高い。


 あまりにも高い。


 自分の知る人類に、これほどの建造物を造る力はなかった。


 見上げるだけで首が痛くなるほどの高さだ。


 しかも城壁全体を青白い光が覆っている。


「驚きました?」


 隣を歩くリリアが少し得意げに言った。


「……少しな」


 もちろん嘘だった。


 内心ではかなり驚いている。


 かつて人類の集落など、恐竜たちの寝床より脆弱なものだった。


 それが今では巨大な要塞を築いている。


「城壁全体に結界が張られているんです」


「結界?」


「防御魔法ですよ。魔獣や盗賊から街を守るためのものです」


 レクスは目を細めた。


 確かに感じる。


 膨大な魔力だ。


 街全体を守るほどの術式など、自分の時代には存在しなかった。


「人類が作ったのか」


「もちろんです」


 リリアは当たり前のように答えた。


 その当たり前が信じられない。


 やがてレクスは視線を上へ向ける。


 遥か空。


 巨大な影が浮かんでいた。


 まるで空に島が浮かんでいるようだった。


「あれは何だ」


「空中都市セレスです」


 リリアが答える。


「魔力結晶の反発を利用して浮いているらしいですよ」


「……何を言っている?」


「私も詳しくは知りません」


 リリアは肩を竦めた。


「専門家じゃないので」


 レクスは黙り込む。


 理解できない。


 だが理解できないという事実だけは理解できた。


 三万年という時間は、想像以上に長かったらしい。


 やがて二人は城門へ辿り着く。


 衛兵たちが門を守っていた。


「身分証を確認します」


 衛兵の視線がレクスで止まる。


 黒髪。


 長身。


 そして爬虫類を思わせる瞳。


「……獣人か?」


「護衛です!」


 リリアが慌てて答えた。


「遺跡調査の帰りなんです」


 衛兵は少し怪しんだ様子だったが、やがて頷く。


「気を付けて通れよ」


 門が開いた。


 レクスは結界都市アルマへ足を踏み入れる。


 そして。


「……」


 絶句した。


 人が多い。


 あまりにも多い。


 道の両脇には店が並び、人々が絶え間なく行き交っている。


 食料を売る者。


 武器を売る者。


 服を売る者。


 大道芸人。


 商人。


 冒険者。


 様々な人々が混ざり合いながら生活していた。


「何人いる」


「この街だけで三十万人くらいですね」


「三十万……」


 レクスは目を見開く。


 小国が丸ごと入っているような人口だ。


 かつての人類にそんな数はなかった。


 さらに驚くべきことがあった。


 街中に魔力が満ちている。


 しかも誰もが当たり前のように扱っていた。


 店主が指先で火を灯す。


 荷車が魔導具によって動いている。


 噴水からは絶えず水が湧き出している。


 魔法が生活の一部になっていた。


「お前たちは……」


 レクスが呟く。


「魔法を使えるのか」


「もちろんです」


 リリアは首を傾げた。


「使えない人の方が珍しいですよ?」


 レクスは言葉を失った。


 魔法は選ばれた者の力だった。


 少なくとも彼の時代では。


 それが今では誰もが扱う技術になっている。


「本当に別世界だな……」


 思わず本音が漏れた。


 その時だった。


 上空を巨大な影が通過する。


 人々が見上げる。


 レクスもつられて空を見る。


 そこには鉄でできた巨大な船が浮かんでいた。


「……船だな」


「飛空艇です」


 リリアが答える。


「遠方との移動や輸送に使われています」


 レクスはしばらく黙った。


 船が空を飛ぶ。


 もう驚くまいと思った矢先にこれだ。


 三万年後の世界は、彼の常識を何度も破壊してくる。


 その時。


 広場の中央に設置された巨大な水晶が光り始めた。


 周囲の人々が足を止める。


 水晶の中に映像が映し出された。


 どこか別の場所にいる人間が話している。


 しかも声まで聞こえる。


「本日の魔導通信をお伝えします――」


 レクスは完全に固まった。


「……」


「レクスさん?」


「人類は何をした」


「え?」


「三万年で何をしたんだ」


 本気の疑問だった。


 かつて弱く脆かった種族。


 それが今や世界を支配している。


 悔しい。


 認めたくはない。


 だが認めざるを得ない。


 人類は進化した。


 恐ろしいほどに。


「……面白い」


 思わず呟く。


「え?」


「いや」


 レクスは歩き出した。


 まずは知る必要がある。


 この世界を。


 人類を。


 そして、自分たちがいなくなった三万年の歴史を。


 封印の真実を知るためにも。


 恐竜たちの未来を決めるためにも。


 今はただ、この世界を見なければならなかった。

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