第二十七話 封印の中身
バキィィン!!
黒い封印石が砕け散った。
破片が飛び散る。
荷馬車が大きく揺れた。
「うわっ!」
カイルが尻もちをつく。
リリアも思わず後ずさった。
だが。
レクスたちは動かない。
砕けた封印石の中心。
そこに何かがいた。
小さい。
人間の子どもほどの大きさ。
丸まっている。
「……」
沈黙。
ヴェルドが目を細める。
「何だ?」
ガイアも首を傾げた。
「同胞か?」
レヴィアが近付く。
「小さいわね」
ルナは興味津々だ。
「可愛いかも」
ディノは警戒していた。
やがて。
丸まっていた何かが動いた。
もぞり。
そして。
ゆっくりと顔を上げる。
金色の瞳。
短い黒髪。
年齢は十歳くらいにしか見えない。
少年だった。
「……ここは?」
か細い声。
全員が固まった。
「子ども?」
リリアが呟く。
少年は周囲を見回した。
荷馬車。
人間。
そして。
レクスたち。
その瞬間。
少年の顔色が変わった。
「レクス様!?」
勢いよく立ち上がる。
そして。
その場で土下座した。
「申し訳ありません!!」
全員が固まった。
「……何だ?」
ヴェルドが聞く。
少年は顔を上げない。
「私だけ寝坊しました!!」
意味が分からなかった。
レクスが額を押さえる。
「いや」
「三万年だ」
「はい!」
「三万年だぞ?」
「はい!」
話が噛み合わない。
少年はようやく顔を上げた。
その目には涙が浮かんでいる。
「レクス様がご無事で良かったです……!」
完全に感極まっていた。
リリアが小声で聞く。
「知り合い……ですか?」
「ああ」
レクスは深くため息を吐いた。
「知っている」
ヴェルドが嫌な顔をした。
「まさか」
ガイアも珍しく表情を曇らせる。
「本当にか」
レヴィアは笑いを堪えていた。
ルナは目を輝かせる。
「えっ、本当に?」
ディノだけがついていけない。
「誰なんだ」
レクスは少しの沈黙の後、答えた。
「カル」
少年が嬉しそうに頷く。
「はい!」
「俺の直属の部下だ」
ディノは絶句した。
「部下?」
どう見ても子どもだ。
カルは胸を張った。
「ティラノ王族親衛隊第三席、カルです!」
リリアの頭も追いつかない。
「親衛隊……?」
「はい!」
カルは元気よく返事をした。
そして。
ヴェルドを見た。
「あ」
笑顔が消える。
「何だその反応」
ヴェルドが睨む。
「いえ……」
カルは目を逸らした。
「ヴェルド様がまだ生きてるとは思わなくて」
「お前なぁ!」
ヴェルドが怒鳴る。
ガイアがため息を吐く。
レヴィアはとうとう笑い出した。
ルナも腹を抱えている。
どうやら。
昔からこういう関係らしい。
その時。
カルが首を傾げた。
「あれ?」
全員が見る。
カルは不思議そうな顔をした。
「他の親衛隊の皆さんは?」
空気が止まった。
レクスの表情が変わる。
ヴェルドも。
ガイアも。
レヴィアも。
ルナも。
「……知らないのか」
レクスが静かに尋ねた。
カルは頷く。
「私はレクス様をお守りするために、最後まで封印施設に残っていました」
誰も何も言えなかった。
三万年前。
最後まで王を守ろうとした者。
それが。
目の前の少年だった。
そして。
レクスは静かに決意する。
まだ見ぬ同胞たちを。
必ず見つけ出すと。




