第二十五話 西へ
翌朝。
冒険者ギルド。
レクスたちは依頼掲示板の前に集まっていた。
もちろん依頼を探しているわけではない。
目的は別だ。
「西だな」
レクスが言う。
ルナが頷いた。
「間違いないわ」
「かなり大きな反応だったもの」
ヴェルドが腕を組む。
「また同胞か」
「可能性は高い」
ガイアも同意した。
封印が少しずつ弱まっている。
ならば目覚める者が増えるのも当然だった。
その時。
「待ってください!」
リリアが手を挙げる。
全員の視線が集まった。
「皆さん当然みたいに話してますけど」
「西ってどこですか?」
沈黙。
ルナが首を傾げる。
「西は西よ?」
「広すぎます!」
正論だった。
アルマから西へ進めば国境もある。
山脈もある。
森もある。
範囲が大雑把すぎる。
ルナは少し考えた。
「山ね」
「山?」
「大きな山脈の近く」
それでも大雑把だった。
リリアが頭を抱える。
しかし。
「十分だ」
レクスは言った。
「分かるのか?」
ディノが驚く。
レクスは頷く。
「封印の気配は近付けば分かる」
「なら行けばいい」
単純だった。
だが確かに間違ってはいない。
その時だった。
「おい」
聞き覚えのある声。
振り向くと。
バルドがいた。
ギルドマスターは呆れた顔をしている。
「また何かやる気か」
「少しな」
レクスが答える。
バルドはため息を吐いた。
嫌な予感しかしない。
そして。
「西へ行くならついでに受けろ」
一枚の依頼書を差し出した。
レクスが受け取る。
内容を読む。
「護衛依頼?」
「商隊だ」
バルドが頷く。
「行き先は西部山脈付近」
全員が顔を見合わせた。
ちょうど良かった。
「報酬も出る」
「受ける」
レクスが即答した。
食費は重要だった。
ガイアも頷く。
ディノも頷く。
ルナは報酬より旅に興味があるらしい。
「決まりね」
リリアは少し安心した。
少なくとも今回は正規の依頼だ。
その日の昼。
一行は街の西門へ向かった。
そこには大型の荷馬車が数台並んでいた。
商隊の護衛依頼である。
隊長らしき男が近付いてくる。
「今回の護衛か?」
「ああ」
レクスが答える。
男は一行を見回した。
若い。
しかも妙に整った集団だ。
少し不安になる。
「大丈夫か?」
「問題ない」
レクスが言う。
その瞬間。
ヴェルドが笑う。
ガイアが腕を組む。
レヴィアが微笑む。
ルナは手を振る。
ディノは無表情。
隊長はさらに不安になった。
だが今さら断れない。
「……頼むぞ」
こうして。
一行は西へ向かうことになった。
新たな同胞を探して。
そして。
誰も知らない。
その商隊の荷物の中に。
彼らが思っている以上に厄介な秘密が隠されていることを。




