第二十一話 目覚めた戦士
巨大な身体が光に包まれる。
黒い鱗。
巨大な牙。
長い尾。
それらが少しずつ崩れていく。
リリアは息を呑んだ。
「な、何ですかこれ……」
答えたのはレヴィアだった。
「魔力が安定したのよ」
まるで当たり前のように言う。
だが。
リリアには何一つ分からない。
光は徐々に小さくなっていく。
やがて。
森に静寂が戻った。
そこにいたのは。
一人の青年だった。
黒髪。
褐色の肌。
引き締まった身体。
年齢は二十代前半ほどに見える。
眠るように横たわっている。
「人……?」
リリアが呟く。
「違う」
レクスが即答した。
「同胞だ」
青年がゆっくり目を開く。
焦点の合わない瞳。
空を見上げる。
木々を見る。
そして。
目の前のレクスを見た。
「……」
数秒。
沈黙が流れる。
青年はゆっくりと起き上がった。
まだ状況を理解できていないらしい。
「ここは……」
掠れた声だった。
「どこだ」
レクスは静かに答える。
「三万年後だ」
青年は固まった。
「は?」
初めてまともな反応だった。
ヴェルドが吹き出す。
「だよな」
「普通そうなるよな」
ガイアも頷いた。
「俺も最初は信じなかった」
「お前は信じてただろう」
ヴェルドが突っ込む。
青年は混乱していた。
「待て」
「何を言っている」
「三万年?」
「人類は?」
「戦争は?」
「王は?」
一気に質問が飛ぶ。
レクスは肩を竦めた。
「落ち着け」
「説明は後だ」
青年は額を押さえる。
理解が追いついていない。
当然だった。
目覚めたら世界が終わっていたようなものだ。
その時。
青年の視線がレクスで止まる。
そして。
「王族か」
静かに呟いた。
リリアが驚く。
「分かるんですか?」
青年は不思議そうな顔をした。
「魔力を見れば分かる」
当たり前らしい。
レクスは苦笑した。
「相変わらずだな」
「知り合いなんですか?」
リリアが尋ねる。
レクスは頷く。
「ああ」
そして青年を見る。
「久しぶりだな」
青年もレクスを見つめる。
数秒後。
ようやく口を開いた。
「……レクスか」
「ああ」
青年は大きく息を吐く。
「生きていたのか」
「お前もな」
ヴェルドが笑う。
「再会の挨拶が毎回それだな」
青年は無視した。
そして周囲を見渡す。
最後にリリアを見る。
「人類か」
「は、はい」
青年は少し考え込んだ。
そして。
「随分小さいな」
「第一声がそれですか!?」
思わず叫んでしまう。
レヴィアが笑い出した。
ガイアも珍しく口元を緩める。
重かった空気が少しだけ和らぐ。
レクスは青年へ向き直る。
「名を名乗れ」
青年は短く頷いた。
そして。
「ディノ」
静かに答える。
「アンキロ族の戦士だ」
その名に。
レクスたちは頷いた。
かつての同胞。
また一人。
この時代へ帰ってきたのだった。
しかし。
誰も気付いていなかった。
ディノの封印が解けたことで。
さらに遠く。
別の封印にも変化が起きていることに。




