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恐竜王レクス 〜三万年後に目覚めた最強王族、人類の世界で冒険者になる〜  作者: Saaaya


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第十九話 暴走する同胞


 ズズン。


 ズズン。


 巨大な足音が近付いてくる。


 木々が揺れる。


 地面が震える。


 リリアは思わず息を呑んだ。


 そして。


 森の奥から姿を現した。


「なっ……」


 言葉を失う。


 巨大だった。


 高さは家屋ほど。


 全身を黒い鱗が覆っている。


 鋭い牙。


 巨大な尾。


 二本の脚で立つ異形の姿。


 人類の知るどの魔獣とも違う。


 だが。


 レクスたちは知っていた。


「やはりか」


 レクスが静かに呟く。


 ヴェルドも頷く。


「間違いないな」


 ガイアは腕を組む。


 レヴィアは目を細めた。


「随分と消耗してるわね」


 黒い巨体は荒い呼吸を繰り返していた。


 目も濁っている。


 理性を失っているのは明らかだった。


 その時。


 巨体がこちらを見た。


 赤い瞳。


 そして。


 咆哮。


 ドォォォォォォン!!


 衝撃だけで木の葉が舞う。


 リリアは耳を押さえた。


「何なんですかあれ!」


「同胞だ」


 レクスが答える。


「だが正常ではない」


 巨体が地面を蹴る。


 速い。


 あの大きさとは思えない速度だった。


 一瞬で距離を詰めてくる。


 しかし。


 ガイアが前へ出た。


 ドォン!


 正面衝突。


 大地が陥没する。


 だが。


 ガイアは一歩も下がらない。


 巨体も止まった。


「力はあるな」


 ガイアが淡々と言う。


「だが荒い」


 巨体が再び咆哮する。


 尾が薙ぎ払われる。


 今度はヴェルドが動いた。


 姿が消える。


 次の瞬間。


 巨体の頭上。


「遅い」


 軽く額を叩く。


 それだけで巨体がよろめいた。


 リリアは目を疑った。


 あの化け物を。


 軽く叩いただけで?


 しかし。


 レクスの表情は晴れない。


「駄目だな」


「ええ」


 レヴィアも頷く。


「完全に混乱してる」


 三万年。


 長すぎる封印。


 目覚めた時には知らない世界。


 魔力不足。


 理性の欠落。


 全てが重なった結果だった。


 巨体は苦しそうに吠える。


 怒りではない。


 恐怖だった。


 リリアは気付く。


「あ……」


 怯えている。


 暴れているのではない。


 混乱しているのだ。


 レクスがゆっくり前へ出た。


 黒い巨体と向かい合う。


「聞こえるか」


 低い声だった。


 巨体が反応する。


「落ち着け」


 返事はない。


 ただ苦しそうな呼吸だけ。


「無理そうね」


 レヴィアが呟く。


 レクスも頷いた。


「ああ」


 その時だった。


 巨体の身体から魔力が溢れ始める。


 黒い光。


 禍々しい波動。


 周囲の木々が軋む。


 ガイアの表情が初めて険しくなった。


「まずいな」


 ヴェルドも笑みを消す。


「暴走するぞ」


 リリアの顔が青ざめる。


「暴走……?」


 レヴィアが空を見上げた。


「封印の影響ね」


「魔力が崩れ始めてる」


 レクスは静かに息を吐く。


 そして。


 決断する。


「力づくで止める」


 巨体が咆哮した。


 同時に。


 黒い魔力が爆発する。


 森全体が揺れた。


 リリアは思った。


 これは依頼ではない。


 救助でもない。


 災害そのものだ。


 そして。


 レクスが初めて構えを取った。


 本気の戦いが始まろうとしていた。

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