第十三話 冒険者ギルド
冒険者ギルド。
結界都市アルマ支部。
巨大な建物の中は多くの冒険者で賑わっていた。
依頼を受ける者。
報告をする者。
酒を飲む者。
喧嘩をする者。
実に騒がしい。
「面白そうな場所ね」
レヴィアが辺りを見回す。
「騒がしいな」
ガイアは少し眉をひそめた。
「悪くない」
ヴェルドはむしろ気に入ったらしい。
レクスは無言で周囲を観察していた。
人類の戦力を見るためだ。
武器。
装備。
魔力量。
立ち振る舞い。
三万年前の人類とは比べ物にならない。
だが。
「まだ弱いな」
率直な感想だった。
「聞こえたぞ」
近くの冒険者が反応する。
大柄な男だった。
筋肉質。
大剣持ち。
いかにも腕自慢という雰囲気。
「お前」
男がレクスを睨む。
「今なんつった?」
リリアの顔が青くなる。
嫌な予感しかしない。
「まだ弱いと言った」
レクスは正直に答えた。
冒険者の額に青筋が浮く。
「面白ぇ」
周囲の冒険者たちも集まり始める。
「新人か?」
「随分偉そうだな」
「やるか?」
空気が荒れ始めた。
その時。
ガイアが立ち上がる。
「やめろ」
一言だった。
それだけで。
周囲が静かになった。
威圧感。
圧倒的な存在感。
まるで巨大な岩山が動いたようだった。
冒険者たちは思わず息を呑む。
「……何者だ?」
誰かが呟いた。
リリアは心の中で叫ぶ。
私も知りたいです。
その時だった。
「登録希望ですか?」
受付嬢が声をかけてきた。
救いの女神に見えた。
「そうだ」
レクスが答える。
「冒険者になれば金が貰えると聞いた」
「ええ」
受付嬢は笑顔で頷いた。
「では登録試験を受けていただきます」
「試験?」
「簡単な適性検査です」
リリアは少し安心した。
適性検査なら大丈夫だろう。
たぶん。
おそらく。
きっと。
受付嬢は水晶玉を取り出した。
「まずは魔力測定です」
「これに触れてください」
レクスが前へ出る。
そして。
水晶へ手を置いた。
瞬間。
ピシッ。
「ん?」
受付嬢が固まる。
ピシピシピシッ。
亀裂が広がる。
次の瞬間。
バリン!!
水晶が砕け散った。
ギルド内が静まり返る。
「……壊れたな」
レクスが言った。
「木っ端微塵だな」
ガイアが頷く。
受付嬢は固まったままだった。
「え?」
それしか言えなかった。
周囲の冒険者たちも絶句している。
「そんなことある?」
リリアが頭を抱える。
開始一分だった。
まだ開始一分だった。
その時。
二階から大柄な男が降りてきた。
歴戦の戦士。
顔には大きな傷跡。
背中には巨大な斧。
明らかに只者ではない。
ギルド内がざわつく。
「ギルドマスターだ」
「マジかよ」
「珍しいな」
男は砕けた水晶を見る。
レクスを見る。
ヴェルドを見る。
ガイアを見る。
レヴィアを見る。
そして。
笑った。
「面白い」
低い声が響く。
「登録試験を変更する」
嫌な予感がした。
リリアが。
「実戦試験だ」
ギルドマスターは言った。
「俺が相手をしてやる」
ギルド内が歓声に包まれる。
レクスたちは顔を見合わせた。
ヴェルドが笑う。
「楽しそうだな」
レヴィアも笑う。
「面白そう」
ガイアはため息を吐く。
そして。
リリアは頭を抱えた。
絶対に何かが起きる。
それだけは確信していた。




