大好きなあなた 4
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どうしていいのかわからずに、わたしもシャルルも玄関ホールで立ち尽くしていたら、レーヌに場所を移動しましょうと言われた。
そうよね。いつまでも玄関ホールにいるわけにはいかないわ。
レーヌに促されて、わたしとシャルルはわたしの部屋に移動する。
階段をのぼりながらレーヌが「お互いにしっかりと話し合われた方がいいと思います」なんて言うんだけど、それはつまり、お別れの話をしろってことかしら?
ずーんと気持ちが重たくなったけれど、確かに、シャルルにしなくてはいけない話はたくさんあるわ。
シャルルの浮気相手のこともそうだし――、わたしの、心の中にいる彼のこともそうよ。
言わなくていいかしらってずるいことも考えたけど、それはやっぱり駄目だと思うの。
怒られるかもしれないし、呆れられるかもしれないし、きっ、嫌いに、なられるかもしれないけど、ずっと内緒にしておくなんて無理だもの。無理よ。わたしのことだから、きっといつかボロを出すもの。だから最初から正直に全部話しておかないと駄目なの。
マノンがわたしの腕の中から、隣を歩くシャルルに視線を向ける。
「けっ!」
マノンが小さく鳴けば、シャルルがマノンを見下ろした。
どうしてかしら。シャルルからちょっぴり不穏な空気を感じるわ。
わたしの部屋に到着すると、レーヌがメイドにお茶を運ぶように伝えた。
ジェラルドは気を使ってくれたのか、外にいますねと言って部屋を出て行く。
レーヌも、メイドが運んできてくれたお茶とお菓子をローテーブルの上に準備すると、控室にいますねと言って出て行った。
だから、部屋の中にはわたしとシャルルと、それからマノンの二人と一匹だけ。
マノンはソファに座るわたしの隣に寝そべって、まっすぐにシャルルに視線を向けている。まるで、威嚇するみたいに。
部屋の中に落ちた沈黙に耐え切れなくて、わたしはティーカップに手を伸ばした。
……どうしよう。どうしたらいい? 何から話せばいいのかしら?
まずは自分のことかしら?
いきなりシャルルの浮気を問い詰めたりしたらダメよね。それはとっても嫌な女だわ。だってわたし自身も、シャルルじゃない人とキスしちゃったんだもの。
でも、なんて切り出せばいいの?
シャルルのことは好きだけど別の人のことも気になっちゃって、そしてファーストキスを奪われたなんて……そんなことを言ったらきっととっても怒られるわ。
覚悟を決めて話そうと思っていたのに、いざその時になると怖く怖くて仕方がない。
ティーカップを持つ手が自然と震えて、泣きそうになっていると、シャルルがはぁ、と息を吐き出した。
「俺のことがそんなに怖いのか」
「え⁉」
違うわ! 怖いのは怖いけれど、シャルルが怖いんじゃなくて、怒られるのが怖いの。
シャルルがすごく不穏な空気を醸し出して、わたしはティーカップを置くと、マノンを腕に抱き上げた。
……マノン。マノン。わたし、どうしたらいいの?
ぎゅーっとマノンを抱きしめてそのふかふかの毛に顔をうずめると、マノンが小さく身じろぎして――
「ったく、しょーがねえな」
また、変な声で鳴いたの。
その瞬間、なんだか霧が晴れていくみたいに頭の中がすっきりとした。
今までずっと感じていた違和感が、絡まった糸がほどけるように消えていく。
わたしはふと顔を上げて、フードの下から除くシャルルの紫色の髪を見て、あっ、と声を上げた。
「わたしを――わたしを攫ったのは、あなただったのね‼」
なんで、わからなかったのかしら?
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