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籠の鳥王女は愛されたいので好きにすることにした  作者: 狭山ひびき
籠の鳥王女と魔法使い

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40/45

大好きなあなた 1

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 わたしは、パチパチと目をしばたたいた。


 ……あら、夢でも見ていたのかしら?


 なんて、現実逃避までしたくなってくる。

 だって、突然マノンが現れたと思ったら目の前が真っ白になって、気がついたら王都のシャルルのお邸のわたしに部屋にいたわ。


「エドウィージュ様ああああああっ」


 レーヌが泣きながら抱き着いて来たけれど、何がどうなっているのかしら?


「エドウィージュ様、お戻りになられてよかったです。本当に、本当に……!」


 あら、ジェラルドがなんだかちょっとやつれているわ。

 レーヌの背中をぽんぽんと叩きつつ、わたしがソファに座ると、執事のデリクがお茶を運んでくれる。

 おかしいわね。

 わたしは北へ向けて旅立って、それから、あの紫色の髪の人に攫われたのよ。

 そしてしばらく彼に閉じ込められていたと思うんだけど――王都に戻っているわ?


「ねえジェラルド、何があったのかわかる?」

「けっ!」

「あらマノン。そう言えばマノンはどうしてあそこにいたの?」


 マノンがわたしの膝の上に飛び乗って来る。

 そのふわふわの真っ白な毛を撫でると、マノンが――


「助けに行ったに決まってるだろ。感謝したら、オレ様のことをもっともーっと大事にしてくれていいぞ?」

「……マノン、ちょっと会わない間に、新しい鳴き方を覚えたのね?」


 なんだか、人の言葉のように聞こえたわ。

 すると、マノンがオッドアイを細めて、あきれた顔を向けてきた。まあ、顔芸もできるようになったのね。すごいわマノン。


「いやほんと、いつ気づくかなーって思ってたが、こりゃ気づかねーはずだわ。堂々としゃべってもこれかよ」

「マノン、鳴き方のバリエーションがとっても増えたわね!」

「だから、ちげーよ!」


 マノンは疲れたように「ハァ」と息を吐いて、わたしの膝の上で丸くなった。

 ジェラルドが困惑した顔をわたしに向けて来るけど、困惑しているのはわたしの方よ。まずはこの状況の説明がほしいわ。なんでわたしは王都にいるの?


 ジェラルドはちらりとマノンに視線を向けた後で、とても言いにくそうに。


「端的に申しますと、エドウィージュ様はとある魔法使いに攫われまして、先ほど無事に助け出すことに成功したわけでございます。……ちなみに陛下たちの耳に入ると非常に面倒なことになるので、エドウィージュ様は体調不良で臥せっていることにしてあります。見舞いに来ると騒ぐ陛下たちを止めるが本当に大変でした。……本当に」


 ああ、だからジェラルドはやつれているのね。

 お父様たちを撃退するのには、それは大変な思いしたでしょうね。


「お父様たちがごめんなさい」

「いいんですよ。興奮したアデライド様が力づくで乗り込もうとしてそのまま産気づいて大騒ぎになったおかげで、今のところ、陛下たちはアデライド様の方に付っきりですし」

「まあ! お姉様は大丈夫だったの⁉」

「お体の方は。ただ、予定より少し早い出産だったため、生まれたお子様の方が大変で。いえ、もう大丈夫なんですが、十日ほど医者たちがつきっきりになっていました。ああ、生まれたのは女の子でしたよ」

「……その横で、アデライド様は王妃様たちに、妊婦が無茶をするなんて何事だと、ずっと怒られていたようです」


 ちょっと落ち着いてきたレーヌが補足をくれる。


 お姉様ったら、本当に困った人ね。

 でも、結果としてお父様たちは生まれた孫が心配すぎて張り付いているから、わたしに会いに強引に乗り込んでこようとはしなくなったみたいよ。

 ジェラルドが体調不良と報告しているから、病気でももらって生まれたての孫に移したら大変だと考えたんだと思うわ。


 ……でも、お姉様の二人目の子供が生まれたのね! 近いうちにぜひ会いに行きたいわ!


 そういうことで、お父様たちはわたしのお見舞いには来られなくなったみたいだけど、その代わりにジェラルドに毎日毎日わたしの体調を報告させていたみたい。

 最後の方には「まだ治らないのか⁉」と八つ当たりされて、とっても困ったそうよ。


「いろいろ迷惑をかけてごめんなさい。わたしは全然大丈夫だったわ。攫われたと言っても、攫った魔法使いはとっても親切な方で。……本当に」


 ふと、最後に見た彼の顔を思い出した。

 すごく泣きそうな顔で、わたしに向かって手を伸ばした彼の姿を。

 わたしが視線を落とすと、ジェラルドが言いにくそうに「あの」と何かを続けようとする。

 だけど、マノンが「けっ」と鳴いたら、口を閉ざしてしまったわ。


「……とにもかくにも、エドウィージュ様がご無事で何よりでした。ひとまずはどうぞお体を休めてください。自覚はなくても、きっとお疲れでしょうから」


 そうなのかしら?

 疲れたというよりは、胸が痛いんだけど。


「さあ、エドウィージュ様」


 レーヌに促されてわたしは立ちあがる。

 ゆっくりしろと言われて、ベッドに誘われた。

 別に眠たいわけじゃないのよ。だって、今日はたくさんお昼寝したの。


 ……ねえ。あの人はどうして、わたしを攫って閉じ込めたの?


 理由を聞き出す前にお別れすることになって、とってももやもやするの。

 わたしはベッドに横になって、ぼんやりと天井を眺める。

 そういえば――


 ……あの人がわたしの名前を呼んでくれたのは、最後の一回だけだったわね。





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