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籠の鳥王女は愛されたいので好きにすることにした  作者: 狭山ひびき
籠の鳥王女と魔法使い

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王女は戸惑う 2

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

 わたしが食べ終えた朝食のお皿を持って、彼が透明な鳥籠をすり抜けてどこかへ行ってしまった。

 彼は自由に出入りできるのに、やっぱりわたしは出られなくて、仕方がないからとりあえずクローゼットを開けて見た。

 いつまでもナイトウェアの格好でいるのは心もとないからだ。


 ……あら、たくさんドレスがあるわ。


 どれもゆったりとしたデザインの、わたし一人でも着られそうなドレスが、クローゼットの中には何着も並んでいた。しかもどれもわたし好みよ。とっても可愛いの。

 わたしは並んでいるドレスの中から薄ピンク色のドレスを一着取って、着替えようと――


「着替えはバスルームでしてくれ!」


 したところで、バタンと扉が開いて、切羽詰まった顔の彼が現れた。

 あら、どうしてわたしが着替えをしようとしていたのに気づいたのかしら?


 ……まあ確かに、ここには彼は自由に出入りできるから、着替え途中にばったり、なんてことになったら気まずいわよね?


 彼の言い分もわかるなと、わたしは「わかったわ」とドレスを抱えて続き部屋のバスルームへ向かう。

 わたしの背後で、赤い顔をした彼がその場にしゃがみ込んでため息をついている。


 ……ちょっとうっかりしただけだから、そんなダメな子を見るような反応をしなくてもいいと思うの。


 だって、普段は勝手に部屋に入って来る男の人はいないもの。

 ナイトウェアからゆったりデザインのピンクのドレスに着替えて戻ると、彼はお茶の準備をして待っていてくれていた。


 ……わたしを閉じ込めている割には、とっても甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのね?


 ほかほかと湯気を立てる紅茶と、籠に入った美味しそうなマドレーヌ。

 ついさっき朝食を食べたばかりだけど、美味しそうだから食べられるわ。

 紅茶とマドレーヌの香りにつられてふらふらとソファに近づくと、当たり前のようにひょいっと彼の膝の上に抱き上げられる。


「わたし、小さな子供じゃないから一人で座れるわ」

「これでいいんだ。――それとも、嫌か?」


 低い声を出されたから、わたしは反射的にぷるぷると首を横に振る。

 たまに怖い声を出すのよね、この人。首の後ろがぞくぞくするからやめてほしいわ。

 ティーカップを手にした彼は、ふーふーと息を吹きかけて冷ました後で、カップをわたしに渡してくれる。


 だから、小さな子供じゃないのよ?

 ふーふーしてくれなくても、慌てて飲んで火傷なんてしないのに。

 でも、その優しさは受け取っておくわ。ちょっぴり嬉しいから。


 ……でも、浮気じゃないのよ!


 わたしはシャルル一筋だもの。優しさにときめいたり、しないわっ!

 紅茶をゆっくり飲んでいると、マドレーヌを差し出されたので口に入れる。


 ……あーんってしてくれなくても、食べられると思うの。


 だけど、目の前に差し出されたら反射的に口をあけてしまうわ。美味しそうだもの。

 マドレーヌはバターたっぷりで、レモンの香りもして、想像通り――ううん、想像以上に美味しかった。今まで食べたマドレーヌの中で一番ね。どこのお店のマドレーヌかしら?


「美味いか?」

「ええ、とっても美味しいわ」

「そうか、よかった。君好みの味を研究した甲斐がある」


 ……うん?


 今、研究って言ったかしら?

 あら、じゃあこのマドレーヌは彼が作ったのかしら? 天才かしら⁉


「あなた、お菓子職人になれると思うわ!」

「ありがとう。だが、菓子職人になる予定はないな」

「そうなの。こんなに美味しいのに、もったいないわね」


 とっても美味しいから、行列ができる名店になると思うのよ。

 彼はふわりと目を細めて、わたしの頭をなでなでする。

 彼の手が大きいから、頭を撫でられるとなんだか包まれている気分よ。


「君が美味しいと言ってくれればそれでいい。というか、君以外に作るつもりはないしな」


 あら、どうしてわたしにお菓子を作ってくれるのかしら?

 わたしを閉じ込めたことと言い、本当によくわからない人だわ。

 この人は、優しいのかしら? それとも、優しくないのかしら?

 いい人なのかしら? それとも悪い人なのかしら?

 そのあたりはっきりしてくれないと、わたしも対応に困ってしまうの。


「そういえば、わたし、あなたの名前を知らないわ」

「……君が気づいたら話す」


 わたしが気づいたら話す? あら、彼はわたしが知っている人なのかしら?

 というか、わたしが気づいた時点で彼の名前はわかるから、その時点で話すというのはおかしな気がするのよ。

 わたしはちょっとムッとした。


「わたしはあなたのことを知らないのに、あなたがわたしを知っているなんて、ずるいと思うわ」


 彼はわたしをここに連れてくる前に「王女」って呼んだわ。つまりわたしを知っているってことよ。それなのに自己紹介をしてくれないのは、フェアじゃないと思うの。

 すると、彼は目を丸くして、それから昔を懐かしむような顔で笑った。


「ああ、君は昔も同じことを言ったな」


 やっぱりわたし、彼に会ったことがあるのかしら?

 紫色の髪に、黒い瞳。すっごく既視感を覚えるんだけど、わからないわ。どうしてかしら。


「ほら、もう一口」


 マドレーヌを差し出されたから、わたしはまた反射的に口を開ける。

 もぐもぐもぐ……なんだか、もうちょっとで思い出せそうな気がしなくもないんだけど、はっきりしないわ。


 彼はいったい、誰なのかしら。




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