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籠の鳥王女は愛されたいので好きにすることにした  作者: 狭山ひびき
籠の鳥王女と魔法使い

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籠の鳥の王女(SIDEシャルル) 4

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 俺は本気で頭に来ていた。

 ようやくエドウィージュと結婚できると思った矢先にこれである。

 北の防衛線の強化をすると重鎮たちの会議で決まったときは、本気でカバネル国を焦土に変えてやろうかと思ったほどだ。


 ……なんで俺まで出ないといけないんだ。


 そんなの、他の魔法師団の魔法使いたちが行けばいいじゃないか。

 俺はエドウィージュとの結婚が決まっているんだぞ? その準備で忙しいんだ。


 だが、エドウィージュが王女と言う身分であることが、俺にそんな我儘を許さなかった。

 エドウィージュと結婚すれば俺は国王の義理の息子だ。

 別に国王の義理の息子になりたいわけじゃないが、エドウィージュの父親なので必然的にそうなる。

 王族の一員になる予定の俺が、安全なところでのんびりして、部下たちを国境付近に行かせるという構図は、あまりよろしくないらしい。


 それでなくとも、東のドゥファン国に加勢したときは、国王が娘可愛さに結構な無理を通した。ここいらで王家が国民のために身を粉にして働いている様を見せつける必要があるんだそうだ。


 ……それなら王子が行けばいいじゃないか。


 と思ったが、二人の王子は魔法が使えない。行ったところで邪魔なだけである。

 そこで、末の王女の結婚相手である俺に「活躍してこい」と白羽の矢が立った。

 実に腹立たしいが、断ってエドウィージュとの結婚を反故にされてはかなわない。

 少なくとも、エドウィージュを手に入れるまでは国王の命令には素直に従っておいた方がいいだろう。


 ……こうなったらとっとと終わらせて帰ってやる。


 防衛のために一年くらいは北で待機していろと言われたが、絶対に一年で帰る。それ以上は延長しない。早く帰ってエドウィージュを俺のものにするのだ。


 ……せめて行く前にキスの一つでも……。いや、だめだな、顔を見せて怯えられては元も子もない。


 ならばせめて、囲っておこう。逃げられないように。

 俺はすぐさまエドウィージュに、俺の帰りを俺の邸で待っていてほしいと伝えた。

 二つ返事で了承が来たときは天にも昇る気持ちだった。嫌がられたらあの手この手で懐柔するつもりだったが、いくつも考えた懐柔作戦は必要なくなった。

 嬉しくなって、俺は以前からせっせと魔法で改良を加えていた薔薇の花を花束にしてエドウィージュに贈った。


 この薔薇のすごいところは、俺が作った魔道具と繋がっていて、距離が離れていても薔薇の近くにエドウィージュがいさえすれば、彼女の様子が見られることだ。残念ながら現段階では音声までは無理だが、それは今後の課題だな。

 薔薇なので枯れるところが難点だが、もしエドウィージュが薔薇の一部でもドライフラワーやらなんやらにして取っておいてくれれば、それでもきちんと機能する。

 つまり、北にいても俺はいつでもエドウィージュの様子が見られるということだ。


 ……あとついでに、防御魔法やら反撃魔法やらもつけておこう。


 万が一エドウィージュに不埒なことをしようとする輩が現れたら大変だからな。

 そうして薔薇の花束を贈った俺は、魔道具を介してエドウィージュが喜んでいるのを見て満足した。――が。

 何を思ったのか、エドウィージュが薔薇の花束を抱えて、ダヴィド爺の部屋に向かった。


 ……しばらく見ないうちにまた魔窟になったな。


 相変わらず散らかりまくっているダヴィド爺の部屋が魔道具に映し出されて、俺は、そう言えば東から帰って来てから爺の部屋の片づけに行っていなかったことを思い出した。

 以前に輪をかけてひどくなっているが、まあ、生きているみたいだしいいだろう。樹海に捨ててもぴんぴんしていそうな爺だしな、汚部屋で過ごしたって死にはしないさ。


 ……それにしても、エドウィージュは爺に何の用なんだ?


 エドウィージュは花束をダヴィド爺に手渡して何やら話し込んでいる。

 すると、爺は花束をしげしげと見つめ、ニッと笑うと――


「あ!」


 俺は思わず声を上げた。

 魔道具に映し出されていた映像がぷつりと途絶えたからだ。


「……じじぃっ!」


 きっと爺の仕業だ。爺が俺の魔法を解除したのである。

 魔法師団長なんて地位にまで上り詰めた俺の魔法の実力は、他の団員と比べて頭一つ分以上抜きんでている。だが、悔しいかな、あの爺にはまだ及ばない。


 ……余計なことをしやがって!


 まあいい、落ち着け俺。

 薔薇の花はまだある。邸に大量に飾っておいたからな。明日エドウィージュが俺の邸に引っ越して来たら、それを介してエドウィージュの姿を見られる。エドウィージュの様子が見られれば、一年くらいなら我慢できるはずだ。


 だが――、その思惑も、大きく外れることになる。

 ダヴィド爺が邸の薔薇のすべての遠視の魔法を解除しやがったからだ。

 俺はすぐさま王都に帰りたくなったが、さすがに任務を放棄して帰れば、あの国王にエドウィージュを取り上げられるかもしれない。


 ……たぶん、俺があの邸に魔法をかけてエドウィージュを閉じ込めたことは、もう爺経由で連絡が行っているだろうからな。


 きっと激怒しているはずだ。

 幸か不幸か、爺は俺のその魔法は解除しなかったらしいから、ひとまず俺が帰るまではエドウィージュはあの邸から逃亡はできない。

 帰ったら国王の小言がうるさそうだが、エドウィージュを安全に守るためだとか適当に言い訳すれば、案外あの娘馬鹿な国王は納得するかもしれない。まあ、言い訳は帰ってから考えよう。

 国王の中での俺の評価が下がった気がするから、エドウィージュとの結婚を白紙に戻されないように、北でもしっかり活躍してこなければ。


 ……面倒くせぇ。


 やっぱり、カバネル国を壊滅させてもいいだろうか。

 あの国さえなくなればとっとと帰ってもいいはずだ。


 俺は不穏なことを考えながら、憂鬱な気持ちで馬車に揺られた。





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