籠の鳥の王女(SIDEシャルル) 2
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それから俺は頑張った。
ダヴィド爺の世話を焼きながら、死に物狂いで魔法の特訓に明け暮れた。
その努力の甲斐あって、俺は最年少で魔法師団への入団が叶ったが――ここに来て、一つの問題が生まれた。
俺の身長が、予想外にでかくなりすぎたのだ。
同年代の男たちより頭半分くらいでかい。
そしてまだまだ伸びている。
……この前ちらっとみた王女は、ちっこかったよな?
あれからエドウィージュには会えていないが、俺はたまにこそこそと王女の様子を盗み見に言っていた。
エドウィージュもどんどん可愛く美しく成長しているが、小柄な方なのか、身長はあまり高くない。
「おい爺。身長をこれ以上伸びないようにするにはどうしたらいい?」
「何馬鹿なことを言っとんじゃい」
ダヴィド爺はあきれ顔になった。
「魔力があったら身長が伸びにくいんじゃないのか?」
「魔力操作を覚えたんじゃから、そんな弊害はもうおこらん」
「ちっ」
つまり、身長を止めるのは無理と言うことだ。
どうしよう。このままでかくなり続けて大男みたいになったら、絶対あのちんまいエドウィージュを怖がらせる。
最近では人相も悪くなりはじめているみたいで、目つきが鋭くて怖いと一部の同僚(女)に言われた。でかくて人相が悪くて、ついでに珍しい紫色の髪をしている俺を見たら、エドウィージュは泣き出したりしないだろうか。
……まずいな。
少なくとも、結婚して手元に囲うまでは怯えられるわけにはいかない。
手に入れさえすればいくらでも時間があるのだ。少しずつ距離を縮めることはできるだろう。まあできなくても、手放したりはしないのだが。
しかし、捕まえる前ではだめだ。
求婚して嫌がられたら、エドウィージュを溺愛している国王夫妻以下のことだ、絶対に邪魔をする。
そんなことになれば、俺は国王夫妻たちを魔法で攻撃しかねないだろう。
エドウィージュだって、自分の家族を傷つけた男には一生心を開かないはずだ。
怖がられても手放すつもりはないが、できることならエドウィージュの愛がほしい。
……ひとまず、結婚するまでは顔を見せないようにしよう。
でかいのは仕方がない。どうしたって小さくなることはできないのだから。
ならばせめて、目つきが悪いというこの顔と、おかしな色の髪は隠そう。
俺はそう決めて、魔法師団の制服のローブのフードを人前では決して外さないようにした。
ダヴィド爺は変な顔をしていたが、俺が顔を隠したいと言えば「そういうお年頃かのぅ」なんて言って文句は言わなかった。
いつでもどこでもフードをかぶりつつけていると、いつの間にか俺はフードをかぶっているのが当たり前と認識されるようになった。
実力で魔法師団長の地位を得た後は、貴族の前だろうとフードをはずさなかった。
最初は文句を言うやつもいたが、無言を貫けば何故か怯えて何も言わなくなった。
その代わり、俺についてあんまり嬉しくない噂が飛び交うようになったのはいただけなかったが、貴族のルールをよく知らない俺に、噂をどうにかすることはできなかった。
というか、噂をしている貴族を見つけたから魔法で脅したら余計にひどい噂が流れたので、あれは得策ではないと判断した。
……エドウィージュの耳に入っていないといいけど。
せっかく顔を隠したのに、噂で怯えられたらたまったものじゃない。
変な噂を流しているやつをぶっ殺してやろうかと一瞬思ったが、そうしたら殺人犯だ。もっと悪いことになる。
爺に相談してもどうせろくな回答は返ってこないだろうからアリスティドに相談したら「人の噂は七十五日と言いますし、エドウィージュ王女殿下は噂話を真に受けるような方ではありませんよ」と言われたのでひとまずほっとした。
エドウィージュが怖がらないのならそれでいいのだ。
だが、魔法師団長にまで上り詰めた俺だけど、ここから先は伸び悩んだ。
魔法師団長だが俺はまだ平民。さすがに平民の身で王女をくれとは言えない。
だったら貴族になるしかないが、貴族ってどうやってなればいいのだろう?
騎士なんかは、騎士に叙勲されたら貴族になれる。
だが、魔法使いにその制度はない。
……騎士か。いやなことを思い出した。
エドウィージュの側にいる護衛騎士だ。
確か、ジェラルドとか言う名前だった。
やたらめったら顔立ちの整った男で、非常に女うけのいいやつだ。魔法師団の女どもにもファンがいる。
そんなモテ男が、常にエドウィージュの側にいるのだ。
……邪魔だな。
だが、腕はいいと聞いている。ついでに性格もいいらしい。
怪我でもさせてあいつを護衛騎士から追い落としたあと、その次にエドウィージュの護衛になる騎士がいいやつだとは限らない。
俺が手に入れるまでエドウィージュのことを傷一つつけることなく守ってくれるやつが必要で、悔しいが、今のところジェラルドとか言ういけすかないイケメンが一番適していた。
……エドウィージュも、あんなふうに甘い顔立ちの男がいいんだろうか。
一瞬暗い感情が首をもたげかける。
甘い顔立ちのイケメンが好きだと言われても、俺はもう、エドウィージュを諦めることはできないし、もし諦めろと言われたらエドウィージュを攫って遠くに逃げるくらいするだろう。
……エドウィージュがジェラルドとかいう男に惚れる前にさっさと求婚したいんだが。
だから、何とかして貴族にならなくては。
俺がその問題に頭を悩ませていると、おあつらえ向けに、東のドゥファン国が戦争に巻き込まれたという情報が入って来た。
ドゥファン国は第二王女ファヴィエンヌが嫁いだ国だ。
娘を溺愛している国王としては気が気ではないだろう。
もしドゥファン国が落とされたら、間違いなく王族は処刑される。嫁いだファヴィエンヌ王女も例外ではないだろう。
国王はすぐさま、ドゥファン国に援軍を送ることにした。
そこで白羽の矢が立ったのは魔法師団だった。
ブラン王国は小国だが大陸一の魔法戦力を誇る。
そんな魔法師団を派遣し、ドゥファン国に攻めてきた東の大国デルピエール国を退けようと国王は考えたようだ。
あちらも、ブラン王国の魔法師団が動いたとあればひるむだろうし、上手くすれば恐れて帰ってくれるだろうと平和ボケした国王は呑気なことを言っていたが、俺にとっては非常に都合がよかった。
ここで手柄を立てれば叙勲も夢じゃない。
ついでに、戦果によっては褒章を出すと国王が約束した。
その褒章でエドウィージュをもらおう。
そうと決めると、俺は魔法師団の第一隊を率いてドゥファン国へ向かった。
国王の要望はドゥファン国の国境を守り、デルピエール国の軍隊を退けることだが、もう少し頑張って攻めてきていたデルピエール国の軍隊を壊滅寸前まで叩き潰し、停戦まで持って行った。
ここまですれば褒章は確実だろう。
予想通り、凱旋帰国した俺に、国王は褒章の話をした。
俺は当然――
「エドウィージュ第三王女を妻に娶る権利を」
そう、要望した。
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