籠の鳥のわたし 2
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「……えーっと」
ゴンッ‼ と、とてつもなく大きな音がした後、男が片手で自分の額を押さえて、わたしの体の上にぱたりと倒れ込んだ。
……しまったわ。そういえばわたし、石頭だってよく言われるの。
頭突きを放った方のわたしもちょっとくらいは痛かったけれど、音の大きさほどのダメージはない。
わたしの肩口に頭をつけて額を押さえたまま動かない男に、わたしは不安になって来る。
「そ、そんなに痛かったかしら? お、お医者様、呼ぶ……?」
まさか頭突きで人が死ぬことはないと思いたい。
わたしは自分が殺人犯になるかもしれない恐怖をちょっぴり味わいながら、びくびくしながら訊ねた。
このままお亡くなりになったらどうしましょう。大丈夫よね? 息してるみたいだし。
「ねえマノン、どうしたら……マノン?」
あら、そう言えば、部屋の中にいたはずのマノンはどこ?
さっきまで自分のことでいっぱいいっぱいだったけど、マノンはいつもわたしのベッドで寝るから、普通なら近くにいるはずよね?
知らない男の人が部屋に入って来たから隠れちゃったのかしら?
男は額を押さえたまま顔を上げた。
手の下になっているから見えないけど、大きく腫れてはいないわよね?
「だ、大丈夫……?」
心配して手を伸ばすと、額から手を離した男にはしっと手首を掴まれる。
額は赤くなっているけれど腫れているわけではないみたいよ。
それはよかったんだけど、どうして手首をつかむのかしら?
頭突きをしたから怒っちゃった?
でもあれは、あなたも悪いと思うのよ。わたしには婚約者がいるんだもの。あんなに顔を近づけられたら、うっかりファーストキスをしちゃうところだったと思うの。
「あの……?」
「そんなにいやか?」
男が、地を這うような低い声を出して、わたしはぞくりとした。
なんかとっても怒っているわ!
どどど、どうしましょう⁉
「ええっと、ええっと、突然頭突きをしてごめんなさい。でも、あれはあなたも悪いと思うのよ! だっていきなり顔を近づけるんですもの! わたしには大切に思う人がいるんだから、うっかりキスしちゃいそうな距離まで顔を近づけられると困るの!」
「……大切な人?」
「そうよ! だってわたし――んむっ⁉」
シャルルの婚約者だもの、と宣言する前に、わたしの唇が熱いものでふさがれた。
何が起きたのかわからなくて、頭の中が真っ白になる。
……え?
キス、されている?
わたしが?
知らない男の人に?
……ファーストキス。
驚きすぎて、動けない。
最初のキスは、シャルルとデートして、夕日の見える丘で彼からって――そんな風に、いろいろ妄想して……。
見開いた目から、ほろりと涙が零れ落ちた。
ひどい。
ひどいわ。
どうしてこんなことをするの?
わたしには――わたしには、ずっとずっと好きだった人がいるのに。
「――――っ!」
掴まれていない方の手を反射的に振り上げて、だけど男を殴る前にその手首も掴まれた。
嫌々と首を振っても、男の唇は吸いついたみたいに離れない。
それどころか、キスをされているうちに、だんだんとわたしの頭の中が朦朧としてきた。
目の前が真っ白に塗りつぶされていく。
「絶対に、逃がさない」
意識を失う前、わたしは、低くどろどろとした声を聞いた気がした。
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