第59話 Sランク
灰の谷を出てからベルンへ戻るまで、八日かかった。
行きと同じ道のはずなのに、帰りの馬車は妙に長く感じた。危険が去った反動で疲れが出たのかもしれないし、中央ギルドから「戻り次第、最終審査結果を伝える」と言われているせいかもしれない。
もっとも、レクス本人は結果を気にしているというより、結果に付随してきそうな手続きの方を警戒していた。
「まだ書類のこと考えてるのか?」
向かいの席でギルバートが呆れた。
「ヴァレルが『かなりある』って言ってた」
「Sランクになるかもしれないんだぞ。もうちょっとこう、期待とか緊張とかないのか?」
「あるよ」
「本当に?」
「Sランクになったら依頼を断りやすくなるって話」
「そっちかよ」
ギルバートが笑うと、隣でクラウディアも肩を揺らした。
「でも、案外そこが一番レクスらしいかもしれないわね。普通は権限が増えるとか報酬が上がるとか、そういうところを気にするでしょう?」
「報酬は増える?」
「増えるわよ」
「じゃあ少し嬉しい」
「釣り道具?」
「あと飯」
「急に十九歳らしくなったな」
ギルバートが言う。
「十九歳だったの忘れてた?」
「たまに」
「失礼だな」
「やってることが古代災厄の封印だの国際案件だのだからな。普通の十九歳と比べにくいんだよ」
「普通の十九歳って何するの?」
「……知らない」
「お前も二十だろ」
「そうだった」
クラウディアが深く息を吐いた。
「そこ二人を基準にしない方がいいわね」
◇
ベルンへ着いたのは昼過ぎだった。
街の門をくぐると、見慣れた屋根と市場の匂いが戻ってくる。灰の谷で毎日吸っていた乾いた白灰とは違い、パンを焼く匂い、馬の汗、露店の香辛料、川から上がってくる湿った風が入り混じっていた。
レクスは馬車を降りた瞬間、それだけで少し身体の力が抜けた。
「帰ってきた」
「それ、前も言ってなかったか?」
ギルバートが荷物を下ろしながら聞く。
「ベルン戻るたび思う」
「気に入ったんだな」
「王都より静か」
「俺も最近分かる」
「勇者なのに?」
「勇者が静かな街好きでもいいだろ」
「いいけど」
そのまま宿へ戻りたいところだったが、ギルド前にはすでにミリアが立っていた。
「お帰りなさい」
「ただいま」
「では二階へどうぞ」
「早い」
「中央から審査官が来ています」
「今日じゃなくても」
「今日です」
「風呂は?」
「後です」
「昼飯」
「会議室に軽食があります」
「逃げ道ないな」
「作っていませんので」
ミリアの声はいつも通りだった。
それが妙に安心する。
◇
二階の会議室には、ヴァレル・ノークと記録官が待っていた。
クラウディアとギルバートもそのまま入ろうとしたが、ヴァレルが手を上げる。
「最初はレクス本人だけで話す」
「俺ら駄目?」
ギルバートが聞く。
「後で呼ぶ」
「じゃあ待ってる」
以前なら「何でだ」と食い下がっていたかもしれないが、今はあっさり廊下へ引いた。
レクスが席に着くと、目の前には三冊の書類が置かれていた。
「多い」
「まだ全部ではない」
「帰っていい?」
「座れ」
「はい」
ヴァレルは真面目な顔のまま、ほんの少しだけ口元を緩めた。
「まず、Sランク適性審査の最終結果を伝える」
「はい」
「合格だ」
「……そう」
ヴァレルが眉を上げる。
「もう少し反応してもいい」
「予想はしてた」
「なぜ?」
「通信で『結果決まった』って言った時、落ちてる感じじゃなかったから」
「そういうところは妙に察しがいいな」
「じゃあ、本当にSランク?」
「正式手続きが完了すれば」
「まだA?」
「今この瞬間はな」
「じゃあ昼飯先でも」
「逃げるな」
◇
ヴァレルは一冊目の書類を開いた。
「評価理由を説明する。戦闘能力だけなら、正直なところ審査開始前から問題はなかった」
「深層王?」
「それ以前からだ」
「じゃあ何見てたの?」
「それを今から話す」
最初に挙げられたのは、若手冒険者への指導だった。
勝てない相手をどう倒すかではなく、どう死なずに終わらせるか。
次が、セドリックとの模擬戦。
自分の《深淵呪詛》が効きにくい相手へ固執せず、装備や環境へ目標を切り替えた。
さらに、ギルバートとのBランク依頼。
必要以上に力を使わず、魔獣を全部殺すのではなく、原因を処理した。
「そこまでは、まあ分かる」
レクスが言う。
「灰の谷は?」
「そこが最終評価の中心だ」
ヴァレルは二冊目を開いた。
「君は、黒紋組織から事実上の挑発を受けた。『次は、お前が選べ』と」
「あれ腹立った」
「記録にもそう書いてある」
「書いたの?」
「当然だ」
「それ評価に関係ある?」
「少し」
「何で」
「腹を立てても、その日のうちに飛び込まなかった」
レクスは口を閉じた。
「封印対象の性質を調べるまで待った。監視塔の人員を優先した。地下へ入る人数を絞り、撤退条件を先に決めた。Sランク審査中であることを理由に、現地へ行く判断をしなかった」
「試験のために行くのは変だから」
「その『変だから』を実際に守れる人間が少ない」
「そうなの?」
「称号が欲しい。評価を上げたい。期待へ応えたい。強いところを見せたい。理由はいくらでもある」
ヴァレルはそこで一度言葉を切った。
「だが、Sランクに必要なのは、期待された時に必ず戦う者ではない。戦うべきでない時に、戦わないと言える者だ」
◇
「それと」
ヴァレルは灰の谷の報告を一枚抜いた。
「灰殖獣を九十九パーセント弱体化した後、君は残り一パーセントを自分の力だけで消そうとしなかった」
「できなかったから」
「それも重要だ」
「できないって言っただけだけど」
「昔の君なら?」
レクスは少し考えた。
「……もう少し自分でやったかも」
「だろうな」
「何で知ってるの」
「過去三年分の勇者パーティ記録を読んだ」
「全部?」
「必要だった」
「大変だった?」
「かなり」
「ごめん」
「そこは君が謝るところではない」
ヴァレルは苦笑した。
「灰殖獣に対して、君は自分の九十九パーセントと、ガレンたちの封印術式、物理隔離、自動警報を組み合わせた。つまり、自分がいなくても維持できる仕組みを選んだ」
「俺が毎日通うの嫌だったから」
「動機がそれだけでも、判断が正しければ構わん」
「本当に?」
「人間はいつも立派な理由だけで動くわけじゃない」
その言い方は、レクスには少し気に入った。
「それから、研究利用案を即座に採らなかったことも評価している」
「一パー残るから?」
「それもある。だが、もっと大きいのは管理責任だ。君は『自分がいなければ使えないなら、それは管理ではない』と言った」
「言った」
「Sランクには、それが必要だ」
「何が?」
「強い力を、使えるかどうかだけで判断しないことだ」
◇
レクスはしばらく黙った。
Sランクと聞いた時、最初に思い浮かべていたのは、クラウディアのような圧倒的な実力者だった。
強い。
勝てる。
難しい依頼を片づける。
それがSランクだと思っていた。
「戦闘力、あんまり関係ない?」
「関係はある」
ヴァレルは即答した。
「危険な現場へ行く以上、一定以上の力は必要だ。ただし、それだけならAランクにも君より優れた分野を持つ者はいるし、個人戦なら一部のSランクへ勝てるAランクもいる」
「クラウディアも同じこと言ってた」
「正しいからな」
「じゃあSって何」
「他人の命、国家間の利害、災害級案件、撤退判断。自分だけ強ければ済まない場面へ、ある程度の裁量を持って立てると認められた者だ」
「面倒だな」
「だから数が少ない」
「断っていい?」
「もう合格した後に聞くのか」
「昇格自体」
ヴァレルは一瞬、目を細めた。
「できる」
「本当に?」
「最初から説明したはずだ。審査を受けることと、昇格を受諾することは別だ」
「じゃあ」
レクスは少し考える。
Aランクでも困ってはいない。
というより、個人的には十分すぎる。
ただし、今のままでは災害級案件へ呼ばれるたびに特例扱いが増え、権限、報酬、責任範囲、国外活動許可を個別に調整することになる。
そして何より。
「Sランクになったら、断りやすい?」
「規定上はな」
「何が変わる?」
「特殊協力契約をそのまま残せる。加えて、Sランクとして案件の受諾可否を本人判断へ委ねられる範囲が広がる。国家や地方支部から直接依頼が来ても、緊急徴用規定の一部を除き、理由を示して拒否できる」
「休みは?」
「取れ」
「釣りの日に呼ばれたら?」
「人命がかかっていなければ断れ」
「じゃあなる」
ヴァレルが黙った。
「早いな」
「そこ大事だったから」
「もう少し肩書きそのものをありがたがってもいいんだぞ」
「便利なら使う」
「……まあ、それでいい」
◇
正式な受諾署名を済ませたところで、廊下から物音がした。
「ギルバート」
レクスが扉へ向かって言う。
「何で分かった!?」
扉の向こうから声が返る。
「ずっといるから」
「別に聞き耳立ててないぞ!」
「声大きい」
ヴァレルが頭を押さえた。
「入れ」
扉が開き、ギルバートとクラウディア、その後ろからミリアまで入ってきた。
「どうだった?」
ギルバートが真っ先に聞く。
「Sランクになる」
一瞬だけ。
部屋が静かになった。
「……本当に?」
「ああ」
ギルバートの顔が、ゆっくり明るくなる。
「やったじゃん!」
「そんな大声出す?」
「出すだろ! Sランクだぞ!」
「まだ手続き途中」
「細かい!」
ギルバートはレクスの肩を叩こうとして、途中で少し迷った後、普通に叩いた。
「おめでとう」
声は、さっきまでより少しだけ落ち着いていた。
「ありがとう」
「何か悔しいけどな」
「何で?」
「俺も負けてられない」
「勇者だろ」
「だからこそだよ。肩書きに胡坐かかないって決めたから」
以前のギルバートなら、「次は俺が上だ」と言ったかもしれない。
今は、競う相手がレクスではなく、自分自身へ少しずつ変わっている。
「また一緒に依頼する?」
レクスが聞く。
「たまにな」
「毎回は嫌」
「分かってるって!」
◇
クラウディアは少し遅れて近づいた。
「おめでとう、レクス」
「ありがとう」
「私と同じね」
「Sランクってだけなら」
「何よ、その言い方」
「クラウディアの方が剣強いし」
「あなたの方が災害級を弱くするでしょう」
「役割違う」
「そう。そこが分かってるなら十分」
彼女は満足そうに頷いた。
「で、最初に何する?」
「寝る」
「Sランクになった日に?」
「灰の谷から八日馬車」
「まあ、それは許す」
「その次は釣り」
「仕事は?」
「休暇」
「ミリア」
クラウディアが受付嬢へ顔を向ける。
「取れる?」
「取らせます」
ミリアの返答には妙な迫力があった。
「本当?」
レクスが聞く。
「Sランクへ上げた初日に倒れられたら、こちらの管理責任を疑われますので」
「そういう理由?」
「あと」
ミリアは少しだけ笑う。
「ここまで働いた人に休めと言うくらいは、受付の仕事だと思っています」
「じゃあ三日」
「五日」
「長くない?」
「短いです」
「じゃあ四日」
「五日」
「交渉できない?」
「できません」
ヴァレルが横からぼそりと言った。
「Sランク権限で拒否してみたらどうだ」
「それ使える?」
「使うな」
◇
そこでミリアが一冊の分厚い帳面を出した。
「それから、私にも一つ嬉しいことがあります」
「何?」
「今後、レクスさんへS級相当の依頼を回すたびに、特例申請書を作らなくて済みます」
レクスは嫌な予感がした。
「今まで何枚?」
「案件ごとに平均七枚」
「そんなに?」
「深層王関連だけで、私が何枚書いたと思います?」
「知らない」
「四十六枚です」
「……ごめん」
「なので」
ミリアは珍しく、はっきり嬉しそうだった。
「Sランク昇格、心から歓迎します」
「理由が現実的すぎない?」
「称号は実務へ使ってこそです」
「俺と同じこと言ってる」
「レクスさんから学びました」
今度はギルバートまで笑い出した。
◇
正式な認定手続きは、レクスが恐れていたほど長くはなかった。
正確には、書類自体は多かったが、ヴァレルとミリアがほとんど事前に整えていた。
最後に中央ギルド印が押された銀縁の認定証を渡される。
『Sランク冒険者 レクス・アルヴァーン』
文字として見ると、少し妙だった。
「どう?」
ギルバートが覗き込む。
「名前は合ってる」
「そこじゃない」
「何て言えばいい?」
「嬉しいとか」
「少し」
「少しかよ」
「便利そう」
「最後までそれか!」
クラウディアが笑いながら認定証を指した。
「ちゃんと持っておきなさい。失くしたら再発行面倒よ」
「何枚書く?」
ミリアが即答する。
「六枚」
「絶対失くさない」
「そこだけは素直ですね」
◇
夕方になると、Sランク昇格の噂はすでにギルド内へ広がっていた。
誰が漏らしたのかと思ったが、中央ギルドの使者が来て、ヴァレルがいて、クラウディアまでいるのだから隠せるはずもない。
一階へ降りた瞬間、何人もの冒険者から声をかけられた。
「おめでとう、レクス!」
「ついにSか!」
「遅いくらいだろ!」
「いや、あいつまだ十九だぞ!」
「え、十九!?」
最後の一言が一番大きかった。
「年齢そこ?」
レクスが困っていると、奥から見覚えのある少年が顔を出した。
「レクスさん!」
カイルだった。
《剛体励起》の制御訓練を続けているDランク冒険者。
「久しぶり」
「聞きました。Sランク、本当ですか?」
「本当らしい」
「らしいって……」
カイルは笑った後、少しだけ姿勢を正した。
「おめでとうございます」
「ありがとう。訓練は?」
「続けてます。最近は、抑えてもらわなくても普通の模擬戦なら最後までいける日があります」
「じゃあ俺いらなくなってきた?」
「……それ、前なら怖かったです」
「今は?」
「ちょっと嬉しいです」
「ならいい」
自分がいなくても回る。
それを喜べるようになったのは、カイルだけではない。
レクス自身も同じだった。
◇
少し離れたところには、ノアもいた。
右手にはまだ布が巻かれている。
「来てたんだ」
「ミリアさんが、今日は治療室じゃなくて一階にいてもいいって」
「紋章は?」
「危険機能は抑えたままです。記憶も、少しずつ」
「無理してない?」
「最近は、嫌な日はやめるって言えるようになりました」
「いいじゃん」
ノアは少し照れたように笑った。
「Sランク、おめでとうございます」
「ありがとう」
「すごいですね」
「そう?」
「普通はそう言うと思います」
「じゃあ、そういうことにする」
「でも」
ノアが少し考える。
「レクスさんって、Sランクになってもあんまり変わらなさそうです」
「何で?」
「たぶん明日も釣りするから」
「明日は寝る」
「明後日は?」
「釣り」
「やっぱり」
◇
夜。
大掛かりな祝いは断った。
その代わり、ギルド併設の食堂で、簡単な食事だけすることになった。
ギルバート、クラウディア、ミリア、カイル、ノア。途中からセシリアやバルガスも顔を出し、最初に聞いていた「小さな食事会」は少しずつ人数が増えていった。
「これ、小さい?」
レクスが聞く。
「中央ギルド主催なら百人超えるわよ」
クラウディアが答える。
「じゃあ小さい」
「納得するんだ」
ギルバートが杯を持ち上げる。
「とりあえず、レクスのSランク昇格に」
「待って」
「何だよ」
「長い挨拶する?」
「しない」
「ならいい」
「お前、俺を何だと思ってるんだ」
「昔の勇者」
「今は違うって!」
「じゃあ短く」
ギルバートは少し笑い、全員を見回した。
「レクス、おめでとう。今度はちゃんと、皆で強くなろう」
昔なら。
「俺たちが最強だ」。
そう言っていたかもしれない。
今は違った。
「うん」
レクスは杯を軽く上げた。
「でも休みは別」
「分かってる!」
◇
食事が終わる頃、ヴァレルから最後の封書が届いた。
Sランク認定の正式発効通知。
その下に、レクスが最も気にしていた一文がある。
『特別協力冒険者契約は継続。災害級・国外案件を含め、原則として本人同意を必要とする』
レクスはそこを二度読んだ。
「何か嬉しそう」
ミリアが言う。
「これ」
「はい」
「ちゃんと残った」
「最初から、その条件で申請しています」
「じゃあSランクでも、何でも行かなくていい?」
「人命が差し迫る特殊例を除けば」
「よかった」
「称号よりそこですか」
「かなり大事」
ミリアは少し呆れた後、でも穏やかに笑った。
「それでいいと思います」
◇
宿へ戻る道。
ギルバートと途中まで一緒だった。
夜風が、昼間より少し冷たい。
「なあ」
「何?」
「Sランクになった気分」
「まだあんまり」
「俺、勇者に選ばれた時すごかったぞ」
「何が?」
「世界全部が俺のこと見てるみたいだった」
「今は?」
「見られてない方が楽」
「分かる」
「だろ?」
少し歩く。
「でも」
ギルバートが言う。
「今日のお前、ちょっと嬉しそうだった」
「そう?」
「カイルとかノアと話してた時」
「Sランク関係なくない?」
「だから」
「何が?」
「称号が嬉しいっていうより、ここまで来たことが嬉しいんじゃないか」
レクスはすぐには答えなかった。
追放された日。
ゴブリン。
《銀翼》。
赤炎竜。
再認定。
旧バルハ。
深層王。
若手への指導。
効かない相手。
灰殖獣。
全部、最初から想像していたわけではない。
「そうかも」
「珍しく認めるな」
「今日はSランクになったから」
「関係ある?」
「少しくらい格好つけてもいいかなって」
ギルバートが一瞬黙った後、大きく笑った。
「そこは十九歳なんだな」
「お前二十だろ」
「分かってるって」
分かれ道で二人は足を止めた。
「じゃあ明日」
ギルバートが言う。
「来るなよ」
「何で!」
「寝る」
「じゃあ明後日」
「三日に一回」
「まだそのルール続いてるのかよ!」
「続いてる」
「Sランク権限?」
「俺の休暇権限」
「強いな」
「かなり」
ギルバートは笑いながら手を振り、別の道へ消えていった。
レクスも宿へ向かう。
今日からSランク。
世界最強と呼ばれていた時より、少しだけ重い肩書きだった。
それでも、以前ほど嫌ではない。
戦うためだけの称号ではないと分かったからだ。
断るためにも。
待つためにも。
人へ任せるためにも。
使える。
それなら悪くない。
レクスは宿の扉を開ける前に、夜空を見上げた。
「明日は絶対寝る」
今のところ。
Sランクになって最初に使いたい権利は、それだった。




