↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃棄兵装運用試験部隊  作者: 9 10
第一章 墓場配属編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/18

第5話 白い巨人

 薄暗い通路を三人は急ぎ移動していた。


 非常灯が一定間隔で点灯し通路を薄暗く照らしている。灰崎は刀を抑えながら走り、シオンは強化外骨格で滑るように走っていた。

 レンはというと、結局その速度についていけなかったため、シオンの強化外骨格腕部に乗せてもらっていた。

 向かう先からは断続的な振動が伝わってくる。その度に壁が微かに軋み、空気が揺れた。


「本当に隔壁が破られるなんてことあるんですか?」


 レンがシオンの腕にしがみ付きながら尋ねる。


「普通なら無理」


 シオンが前を向いたまま答えた。


「白鯨は特殊」


 ……特殊?


「安心して」


「何がですか」


「死ぬ時は一瞬」


「だから安心できませんて!」


 後ろから灰崎の笑い声が聞こえた。


「はははっ、シオンなりに気遣ってるんだよ」


 レンは、はっとしてシオンの顔を見る。


「違う」


「違うじゃないですか!」


「事実」


「もっと嫌ですよ!」


 その瞬間だった。


 ――ズンッ!


 今までで1番大きな衝撃だった。通路全体が揺れ、天井から粉塵が落ちてくる。

 シオンが情報を確認する。


「隔壁損傷率。八十一パーセント」


「想定よりも早いね」


 口調は変わらないが灰崎の声音ば少し低かった。焦ってはいる、警戒もしてはいる。しかし、レンは少しの違和感を感じていた。

 二人とも暴走兵器を止めに向かっているような空気ではないように思えた。


『――――』


 頭の奥が微かに疼いた。


「……っ」


 レンの捕まる手に力が入る。


『――――』


 まただ。言葉にできない何か。


 ――暗い空間

 ――閉じ込められた感覚

 ――押しつぶされそうな孤独感


 胸の奥へと感情だけが流れ込んでくる。

 恐怖、焦燥感、悲しみ。


「顔色、悪い」


 シオンが視線を向けて問いかける。


「……大丈夫です」


「嘘」


「……」


「真っ青」


 図星であった。自分でも呼吸が浅くなっているのがわかる。

 灰崎は心配しながらも毅然と振る舞った。


「戦闘になれば僕達が前に出る。久城くんは居てくれるだけでいいからね。」


 今までの軽い声ではなかった。レンはゆっくりと目を閉じ、脳裏に白い巨人を思い浮かべる。

 まだ、怖い。だがレンは覚悟を決めていた。


「はい、ありがとうございます」


 数秒。灰崎はレンを見つめ、小さく笑った。


「そうか。」


 そして、三人は通路の終点へと辿り着く。そこは今日、シオンに連れられて通った白鯨の封印区画付近であった。今は隔壁が全て閉められている。


「それじゃあ、行こうか」


 灰崎は身構えながら端末を操作すると目の前の大きな隔壁が開いていく。

 シオンはレンを下ろし、背負っていた大楯と腰部の大型拳銃を構えて二人よりも前に立つ。

 その先に白い巨人が姿をあらわにした。


 AR-12 《白鯨》ーー白く巨大な人型起動兵器。


 白鯨との距離は約五十メートル、その後ろには特別頑丈そうな隔壁かあった。厚さは1メートルはあろうかという重装甲扉、それが壊されていた。

 何重もの固定ロックは引きちぎられており、中心部分が内側から無理やり押し広げられたように大きく歪んでいた。


「……嘘だろ」


 レンの口からはあり得ないものを見た感想が漏れ出していた。

 シオンと灰崎は動じていない、警戒は怠らず現状の把握に努めている。


「隊長……」


 シオンが違和感に気がつく。灰崎も目を細める。


「……これは」


 白鯨が大きく暴れていたはずなのに、隔壁以外全くの無傷であった。


 白鯨がゆっくりと顔を上げる。そして、レンを見て止まった。

 その瞬間、レンの頭の中に激流のような感情が流れ込んできた。


 暗闇、恐怖、孤独。


 そしてほんの僅かな安心感、レンは思わず息を飲む。これは怒りではない、殺意でもない。よくはわからないがレンの中の恐怖はもう無くなっていた。


 白鯨がゆっくりと腕を持ち上げる。一瞬のうちに場に緊張が走る。シオンは身構え、灰崎は懐の拳銃に手を伸ばした。


 だが、レンだけは動かなかった。攻撃ではないとわかっていたから。


 それは、まるでこちらに手を差し出しているようにレンにはそう見えた。その手を取ろうとレンは一歩前に出る。


 その瞬間、脳裏に知らない光景が流れ込んできた。白い研究室、泣いている女性研究員。そして震える声。


『お願い……、この子をひとりにしないで』


 視界が暗転した。

読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。