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廃棄兵装運用試験部隊  作者: 9 10
第一章 墓場配属編

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第4話 隔壁の向こう側

 地下施設全体を揺らす衝撃。

 天井から細かな粉塵が落ち、隊長室の照明が一瞬だけちらついた。


『――AR-12封印区画出力反応増大。封鎖管理レベル1を継続、該当区画の非戦闘員は速やかに退避してください。――繰り返し』


 モニターの向こうの白鯨は、なおも隔壁に身体を押し付けている。


「シオン」


「わかってる」


 灰崎が声をかける前に、シオンは強化外骨格をすでに引き出していた。

 白衣を脱ぐ、その下には黒いボディースーツと簡易戦術装甲。

 黙々と強化外骨格に脚を通していく。


 レンは思わず固まった。


(白衣の下、それなんですか…)


 先ほどまで研究員のようだった人物が一瞬で軍人になっていた。

 強化外骨格を着終えたシオンが振り返る。


「なに」


「い、いえ」


「変な顔」


「しておりません。」


「してる」


 ぶっきらぼうに言いながら武装の起動確認をしていく。

 その横で灰崎も装備を取り出していた。

 戦術ベルトに大型拳銃、そして黒い無機質な鞘に収まった大太刀。


 レンは思わず視線を止めた。


「あの……」


「ん?」


「それ…刀ですか?」


「そうだよ?」


「兵器相手に、ですか?」


「あぁ、銃より便利な時もあるんだよ」


 笑っている。

 だが、説明する気はなさそうだった。

 灰崎は大太刀を左腰に固定し、拳銃の弾倉を確認する。

 一連の動きに一切の澱みがない。

 レンはもうひとつ、疑問に思ったことを口にした。


「あの…隊長も直接戦われるのですか?」


「ん?」


 灰崎は薬室を確認しながら振り返る。


「いつもではないんだけどね」


 軽い口調で答える。

 その間も灰崎の手元は一切止まることなく、確認を終えていた。

 その時だ。


『――――』


頭の奥にまた感情が流れ込んでくる。

レンは反射的に肩を振るわせた。


「……っ!」


近い、今までよりもはっきりとわかる。

まるで向こうもこちらを認識しているような、そんな感覚にレンは額を抑えた。

 

――『ミツケタ』――


先ほどの白鯨と目が合った時のことを思い出す。


「久城くん、大丈夫かい?」


 灰崎は少しだけ真面目な声で尋ねた。

 問われたレンは改めてモニターの白鯨を見る。

 白い装甲の巨大な兵器。隔壁を押し広げようと組みついている。


――怖い。


 それでも、モニターの白鯨から目が離せなかった。


「……大丈夫です。」


 一瞬だけ部屋が静かになる。


「隊長、準備完了」


 シオンは全長三メートルほどの強化外骨格を着込み、両腰に大型の拳銃と背部に大楯を背負っていた。


「よし、行こうか。」

 

 灰崎はモニター画面の端末を操作した。

 重い音と共にモニター横の壁が開く、その先には下へと続く長い薄暗い通路があった。

 緊急時用であるからか、非常灯だけが並ぶ無機質な空間。そこに三人は足を踏み出した。

 行き先の見えない通路の奥からは振動だけが伝わってくる。


 白鯨だ。


 レンは息を飲んだ、なぜ自分は行くのかと。自分の能力と白鯨の関係と分が第三に来た理由、それを確かめに行くのだと己に強く刷り込み歩を進める。


 シオンが唐突に端末へ視線を落とし、灰崎に報告する。


「隊長」


「ん?」


「隔壁損傷率六十ニパーセント突破」


 一瞬、空気が変わった。


「思ったよりも早いね」


「封鎖管理、レベル2へ移行」


『――封鎖管理レベル2発令

 AR-12封印区画外壁の損傷を確認

 戦闘員は各指定区域へ至急移動してください』


 数秒の沈黙。

 そして灰崎が笑った。


「……これは急がないとまずいね」


 直後。

 施設全体を揺らす轟音が響いた。

読んでいただきありがとうございます。

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