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廃棄兵装運用試験部隊  作者: 9 10
第一章 墓場配属編

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第1話 墓場

 軍の二等航空整備士、久城レン(22)


 彼は、第九管理区行きのエレベーターに乗っていた。

 一面薄暗い金属壁に一定間隔で赤色灯だけが明滅している。


 どれほど降りたのかわからない。

 代り映えのしない壁をずっと眺めていた。しかし唐突な眩しさと風にあおられ、レンは目を細める。

 そしてゆっくりと目を開くとそこには巨大な都市が広がっていた。


「……ほんとに地下都市じゃねえか」


 レンは、壁にもたれながらそう呟いた。

 左遷通知を受けてから三日。

 理由もわからず中央航空基地を追い出され、連れてこられた場所がここ。


 第九管理区――通称≪墓場≫。


 連邦軍が封印した失敗兵器を保管する非公表施設であり、表向きは存在しないことになっている。


 それでも、噂だけは聞いたことがあった。

 暴走AI、人格兵器、禁忌兵装など。

 軍が「無かったこと」にした兵器の廃棄場だと。場所は、旧アメリカのエリア51だとも、旧ロシアのチェルノブイリ跡地だとも言われていたが、まさか旧日本の富士樹海の地下だったとは。


 レンがそんなことを考えているとエレベーターが止まり、大きな音を立てて扉が開いた。

 

「ようこそ、《墓場》へ」


 そこには、白衣を着た女性がいた。


 銀髪ショートで整った顔立ち、作り物のような美しさだと思った。

 だがその顔は無表情で、そしてとても眠そうな目をしている。

 彼女の軍属章には、試験運用部所属で階級は少尉であることが示されていた。


「久城レン 二等整備士であります!」


「雨坂シオン」


 シオンは自己紹介もそこそこに、ついてこいというように歩き出した。


「試験パイロット。案内役」


「……整備士にわざわざ案内役ですか?」

(パイロットなのに白衣?)


 疑問に思いながらシオンの後をついていく。


「ここは普通の施設じゃないから」


 そう言いながら歩く通路、その窓からは外がよく見えた。

 その先の景色を見てレンは言葉を失った。


 巨大な地下空間。

 いや、地下都市は巨大格納庫が何層にも重なっている。

 目の前を覆いつくしそうなほどの無数の封印コンテナ。

 警告灯に巨大な隔壁、監視ドローン。


 そして、遠くに見える巨大な黒い機影。禍々しく見える見た目に不気味な気配を感じた。


「なんだ、あれ……。」


「あれ?第一の廃棄兵器」


 シオンは視線だけ向け、軽く言った。


「え?」


「第一種失敗兵器、暴走型」


 レンは絶句した。

 あんな巨大なものが暴走するなんて考えたくもなかった。


「あんな巨大な兵器が暴走するんですか?」


「あれは来たばかり、わからない」


 シオンは振り返って言う。


「でも、安心して」


「何をでしょうか。」


「死ぬ時は一瞬だから。」


『安心できるかぁ!!』


 心の中で盛大に叫んだその時だった。


 ――コンコン。


 レンは足を止めた。

 誰かが内側から壁を叩いたような音。


「……今のは?」


「?」


 シオンには何も聞こえないようだ。


 ――コンコン。


 まただ。


 レンは音の方へ振り向く。

 薄暗い通路の先、そこに大きな隔壁扉があった。

 表に書いてある識別コードは《AR-12》


 その瞬間。


『――――』


 レンの頭の中に何かが響いた。

 言葉ではなく、暗闇の中で何かが震えているようなそんな感覚だけが伝わってきた。

 レンの顔色が変わる。


「……おい」


『――――』


 また響いた。

 怯えているような悲しいような形容し難い感覚が流れ込んでくる。


「まさか……」


『――――――』


 シオンが振り返る。


「なに?」


「……いえ、なんでもありません。」


 レンは答えられなかった。

 隔壁の向こうで、確かに“誰か”が泣いている。

 そんな気がした。


 もうどれほど歩いたか、よく覚えていない。

 ただただ彼女の後ろについて行く。

 頭の中ではさっきの感覚がまだフラッシュバックしていた。


「顔色、悪いけど」


 シオンは軽く視線だけを向けて聞いてきた。

 レンは悩んだ、悩んだがどうしても確認しておきたくなり、額を抑えながら言った。


「……先ほどの、隔壁ですが」


「AR-12?」


「はい。中に、誰かいたりするのでしょうか?」


 一瞬だけ、シオンの目が細められた。


「人はいない」


「それでは、なにが……」


「今は無理」


 即答だった。

 この人は何知っているのだろうか、レンの疑問は深まるばかりであった。


 レンには建物の全容はわからない。

 だが、かなり上の方まで移動したと思う。

 シオンが止まり、手元の端末を操作する。

 すると目の前の隔壁が開き、奥には扉が見えた。


「隊長室、まずは挨拶。」


 レンのモヤモヤはまだ晴れていない。


 確かに感じたあの感覚は”誰か”の叫びだったのかもしれない。

読んでいただきありがとうございます。

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