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国家認定PMCヴァルハラ  作者: 神代零


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3/10

第三話 「登録された武力」

 横浜港第七号埠頭。


 午後十時〇三分。


 潮風に混じって、鉄と油の匂いが漂っていた。


 ヴァルハラ戦術第一班は、コンテナ群の陰を無音で進む。


 先頭は獅堂蓮司。


 右後方に霧島アヤ。


 後続に突入班六名。


 全員が黒色戦術装備で統一されている。


 国防色は使わない。


 自衛隊ではないからだ。


 警察仕様も使わない。


 警察ではないからだ。


 彼らは民間企業。


 だが。


 日本国内で武装行動を許可された、唯一の“合法戦術企業”だった。


「前方二十メートル」


 通信。


「武装警戒一名」


 蓮司は左手を上げる。


 全員停止。


 赤外線ゴーグル越しに、コンテナの間を歩く男が見えた。


 短機関銃所持。


 腕章。


 黒狼のマーク。


 ヘルハウンド。


「……確認した」


 蓮司が低く呟く。


「無登録PMCだ」


 その言葉には僅かな嫌悪が混じっていた。


 PMCは自由な傭兵ではない。


 少なくとも日本では。


 登録。


 監査。


 報告。


 行動制限。


 武装許可。


 国家認定。


 その全てを受けて初めて、“合法武力”として存在を許される。


 だから蓮司は、無登録PMCを嫌っていた。


 国家監査を拒否した武装組織など。


 それはもうPMCではない。


 ただの武装犯罪集団だ。


「制圧する」


 蓮司が指を動かす。


 二名が左右へ展開。


 一瞬。


 黒い影が男へ迫った。


 首を固定。


 口を塞ぐ。


 地面へ引き倒す。


 わずか三秒。


 発砲なし。


「クリア」


 無線。


 男は拘束される。


 その時だった。


「――誰だ!」


 コンテナ上。


 別の武装員が叫んだ。


 ライトが点灯。


「接触!」


「撃て!」


 乾いた銃声が夜を裂く。


 瞬間。


 ヴァルハラ隊員たちが一斉に散開。


 銃弾がコンテナを叩く。


「前方三!」


「上部二!」


「確認!」


 蓮司はコンテナ陰へ滑り込み、短く指示を飛ばす。


「アヤ、右を潰せ」


「了解」


 アヤが駆ける。


 低姿勢。


 無駄のない動き。


 まるで刃だった。


 敵が照準を向ける前に。


 アヤの銃口が火を吹く。


 武装員が崩れ落ちた。


「右制圧!」


「左行く!」


 蓮司は前へ出る。


 銃声。


 火花。


 怒号。


 横浜港の夜が、一瞬で戦場へ変わる。


 その時。


 無線へ新しい声が割り込んだ。


『こちら警察庁警備局!』


『未確認車両接近!』


『埠頭外周突破!』


 蓮司の目が細くなる。


「増援か」


 最悪のパターンだった。


 ヘルハウンドは単独ではない。


 港全体に戦力を配置している。


「社長!」


 アヤが叫ぶ。


「倉庫内部に大型ケース!」


「中身は!?」


「確認します!」


 アヤがケースを開こうとした瞬間。


 蓮司の表情が変わった。


「待て」


 嫌な予感だった。


 戦場経験が警鐘を鳴らす。


「離れろ!」


 次の瞬間。


 ケース内部から電子音。


 赤ランプ点灯。


 周囲の空気が凍る。


「爆弾……!」


 誰かが呟いた。


 その瞬間。


 蓮司は理解する。


 これは単なる武装潜入ではない。


 横浜港そのものを狙った、大規模破壊工作だと。


 無線が怒鳴る。


『警察庁よりヴァルハラへ!』


『警備計画書レベルを変更!』


『国家安全保障案件へ移行する!』


 蓮司は静かに息を吐いた。


 そして。


 冷たい声で命令を下す。


「ヴァルハラ戦術班」


「戦闘権限をS級へ移行する」


 その言葉と同時に。


 隊員たちの空気が変わった。


 国家が認めた武力。


 登録された戦争企業。


 監視下の武士。


 それが今。


 本当の戦場へ踏み込もうとしていた。

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