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国家認定PMCヴァルハラ  作者: 神代零


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第二話 「警備計画書」

 午後〇九時四十分。


 神奈川県横浜市。


 横浜港第七号埠頭。


 夜の海に霧が流れていた。


 巨大コンテナ群の間を、赤色灯が静かに照らしている。


 警察車両。


 機動隊。


 海上保安庁。


 そして――黒い装甲車。


 車体側面には銀文字。


VALHALLA SECURITY JAPAN


 国家認定PMC。


 ヴァルハラ。


「こちら警察庁警備局」


「封鎖ライン確立完了」


 無線が響く。


 埠頭全域には既に一般人の姿はない。


 緊急港湾封鎖命令。


 民間防衛警備義務契約発令。


 通常の警察案件ではない。


 国家安全保障案件。


 その空気が現場全体を支配していた。


「SATは?」


 装甲車の横で、獅堂蓮司が通信士へ問う。


「第三待機線で待機中です」


「自衛隊」


「海上封鎖完了」


「海保は?」


「逃走艇対策配置済み」


 蓮司は静かに頷く。


 全て《警備計画書》通り。


 国家認定PMCは国内武装活動時、事前に警察庁へ詳細な作戦内容を提出する義務がある。


 投入人数。


 武装内容。


 行動範囲。


 制圧規模。


 発砲基準。


 撤退条件。


 そして責任者。


 その全てが国家監査対象。


 自由な武力ではない。


 鎖付きの武力。


 それがPMCだった。


「社長」


 声をかけてきたのは、一人の女だった。


 黒い戦術スーツ。


 腰まで届く黒髪。


 冷たい目。


 ヴァルハラ戦術第一班副班長。


 霧島アヤ。


「ドローン映像、出ます」


 蓮司の前にホログラム映像が展開される。


 赤外線映像。


 コンテナ倉庫内部。


 武装集団十六名。


 自動小銃。


 携行型対戦車兵器。


 そして大量の金属ケース。


 蓮司の目が細くなる。


「……軍用グレードか」


「確認しました」


 アヤが低く言う。


国際非認可PMCヘルハウンドの装備と一致」


 その名前に、周囲の空気が変わった。


 ヘルハウンド。


 東アジアを拠点に活動する違法武装企業。


 国家認定を拒否し、各国の監査網から逃げ続ける無登録PMC。


 政府内では既に、


“企業型武装犯罪組織”


 として扱われている。


「目的は?」


「不明」


「積荷は?」


「調査中です」


 蓮司は海を見る。


 静かな夜だった。


 だがこういう夜ほど、人は死ぬ。


「警察は突入しないのか?」


 背後から声。


 振り返ると、警察庁警備局の男が立っていた。


 公安出身らしい鋭い目。


「警察は国内法に縛られます」


 蓮司は答える。


「ここは港湾特別警備区域」


「民間防衛警備義務契約下では、我々が先行突入権を持つ」


「……便利な法律だ」


「必要だから作られた」


 警備局の男は黙る。


 十年前。


 テロ事件。


 海外武装組織。


 崩壊国家。


 武装企業。


 その全てが、日本の法律だけでは処理不能になった。


 だから政府は選んだ。


 監視付きの武力を。


「突入五分前」


 無線。


 ヴァルハラ隊員たちが一斉に動き始める。


 黒い防弾装備。


 統一された動作。


 まるで軍隊。


 だが違う。


 彼らは軍ではない。


 企業だ。


 契約で動く。


 だが。


 だからこそ国家は彼らを恐れている。


「社長」


 アヤがヘルメットを差し出す。


「作戦名を」


 蓮司は受け取りながら言った。


「ヴァルハラ警備計画書第七号」


「横浜港武装制圧作戦を開始する」


 その瞬間。


 隊員たちの目が変わった。


 戦場の目だ。


 蓮司はヘルメットを装着し、コンテナ群を見る。


 国家は表に出られない。


 警察には限界がある。


 自衛隊は簡単には動けない。


 だから。


 彼らがいる。


「――ヴァルハラ、前進」


 黒い武装集団が、静かに夜の港へ消えていった。

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