女王としての初仕事
魔国レードナディルを出たルアティナ一行はザイラス王国の国境に入った。本来ならば浮遊魔法で飛んでいきたい所だが、人目があるためできない。
それに、この道中でルアティナの女王としての初仕事がある。
ザイラス王国の王都に行く途中の領地で、酷い干ばつがあった。元々、ザイラス王国は太陽に愛される国で雨はそんなに降ることがない。だが、今年は雨がまったく降らなかった。そのせいで畑も半壊していまい、酷い干ばつを引き起こしたのだ。その酷い干ばつを改善すべく民に寄り添う女王としてルアティナ自ら魔法で大量の雨を降らせることにしたのだ。
膨大な魔力を所持する魔族とは違い人間の所持品できる魔力量は余りにも少ないため、一つの領地に丸ごと雨を降らすなどできっこない。馬車を走らせる見慣れた魔族の御者が外を眺めていたルアティナに声をかけた。
「女王陛下、見えてきました。あれがルビアン伯爵の領地です。」
「お話道理、酷いわね」
ルアティナは思わず顔を歪ませた。視界に入ってきたのは干からびた畑だった。
干からびた畑と言うよりステップ砂漠に見える。ステップ砂漠とは砂漠の一歩手前のことで土は信じられないくらい乾燥し、短い草少しだけが生えている状態だ。ここまで酷いとなるとすぐ元通りになるとはならない。
あの能無し元国王と脳内花畑元王妃は今まで何をしていたんだろう。国民が苦しんでいるのに、てをさしのべない王族などあり得ない。ルアティナの母である聖女は民の心に寄り添い手を差しのべていたと聞いている。助けてくれない王族と民を慈しむ聖女、どちらに付くかなんて分かりきったことだ。
それなのに元国王は母に嫉妬し殺そうとまでしたのだ。指を一本一本切り落とし地獄を見せたことは正解だったと思う。
ーー我ながら魔族らしくなったものね
お馬鹿さんたちのおかげでルアティナはさらに残酷になった。本来の魔族よりはまだ優しい方だが。けれど、弱き者を守りたいと思う気持ちは色褪せることはなかった。
見るも無惨な干ばつした畑を越えると町が見えてきた。町に行き交う人々の服は水がないせいで汚れ、なにより皆痩せている。その事にルアティナは胸を痛めた。もっと早く自分が気付いていればこんなに苦しまずに済んだかもしれない。元々知っていたことで、
あの馬鹿王子に何度も言っていたが話が通じなかった。意地でも首根っこ取っ捕まえて連れていけば良かった。
ルアティナが乗る馬車が町を通る時には沢山の人々が馬車に集まった。
「女王様万歳!」
「よくぞ御越しいただきました!」
「どうか畑に恵みを!」
口々にルアティナに語りかける民は感動のあまり泣いていた。老若男女、
大人も子供も関係なくルアティナの訪れを喜んでいる。
「なんでこんなに苦しむ民を放っておくなんて鬼畜だな、あの糞共」
「本当ですわね、虫酸が走りますわ」
その光景を見てジャスパーやレイチェルが口元を歪ませながら言う。遠目からでも分かる痩せ具合、窪んだ双眸はあまりにも酷かった。魔族はこんな風には絶対ならないが、人間は違う。
その事実は消えないのだ。
ルアティナたちを迎えたのはルビアン伯爵のヤマルと言う若い男だった。生来の綺麗な顔と体は酷い干ばつと、恐らく飢餓のせいで痩せ細り、本来の赤い髪と金色の双眸はくすんでいる。
「ようこそ御越しいただきました。ルアティナ女王陛下、さっそくですが・・・」
「わかっているわ。よく今まで頑張ったわね、その事を貴方は誇りに思っていいわ」
「はいっ、ぅ、うぅ」
ルアティナの言葉にヤマルは泣き崩れた。一度会ったことが会ったあるヤマルはこんなに痩せてなかった。その上に、この干ばつと飢餓のせいで父親が死に、妹は重い病にかかっている。
一刻を争う状態の民と妹は治癒魔法が十八番のレイチェルと凄腕待女のナナとマリアに任せ、ルアティナはさっそく仕事に取りかかることに決めた。
伯爵家の城内に入り、一番高い城の塔から領地を見渡した。この干ばつをほったらかしにして起きながら、よくルアティナに婚約破棄やケンカを売れたものだ。王族だと口先だけなら何でも言えるが、行動に表さないと意味がない事をあのお馬鹿さん達に教えたい。
呼吸を落ち着かたルアティナは両手に体に流れる魔力を集め始めた。ぐるぐると流れながら光の渦ができていく様子を間近で見ていたヤマルは目を見開いている。魔法を見るのは初めてなのかルアティナの後ろでおろおろしていた。
ルアティナの体は淡く光りながら宙に浮いた。光の渦が出来ている両手をルアティナが空高く上げるとルビアンの上空に巨大な魔方陣が展開される。複雑に描かれた魔方陣は青白く輝き、
ヒヤリとした空気を流しながらさらに
大きさを広げていった。魔方陣がルビアン全体を包み込む大きさになった所でルアティナは高く上げていた両手を一気に下へと振り下ろした。




