ザイラス王国への旅立ち
魔国レードナディルの王城からルアティナを乗せた馬車が出発しようとしていた。馬車の近くには魔王である父シファルドや宰相バアル、魔国軍団長エドガーなど魔国の重鎮が集まっている。魔王は涙ぐんでいてルアティナの手を握ったまま放さない。
その様子にバアルは呆れたように魔王を宥めた。手を強く握られているルアティナも苦笑いだ。
「父さん、大丈夫だわ。ジャスパーやレンドルもついてるんだから」
ルアティナと共にザイラス王国の行くのは宰相バアルの息子ジャスパーと護衛騎士レンドル、そして新たに護衛騎士となったレンドルの双子の妹レイチェルだ。他にも騎士が二名、昔からルアティナに付き添っている待女が三人、馴染みがあり信頼できる者達ばかりだ。
ルアティナの言葉にまだ不安なのか魔王は不服そうに眉を潜めている。
「それが大丈夫じゃないんだ!!いつ俺のルアティナが襲われるか・・」
「大丈夫でしょう、そんな事があったらきっとルアティナ様は返り討ちにしてそこらへんに埋めると思います」
「そうか!なら、安心だ」
「さすがだな!ルアティナ様は!」
ルアティナをおいて勝手に話を進める魔国重鎮三人衆は、なにやら楽しそうである。ルアティナは決してそんな事はしない、筈だ。
ため息を吐きながらルアティナは魔王の手を叩き落とした。手を叩き落とされた魔王はなぜか笑っている。
「なんだ、ルアティナはツンデレというやつか?そうだろ?そうなんだろ?」
「地面に、埋めましょうか?」
「・・・冗談だ。もう言わないから!」
真顔になったルアティナに魔王はすぐさま謝った。ルアティナはやると言ったら本当にやる。前にも一度こう言うことをルアティナに言って、冗談だろと言ったところ魔王は地面に埋められた。
あんな思いはもうしたくないと心に誓っている魔王だった。
「じゃあ、気を付けてな」
「見送りありがとう」
最後はかっこよく締めた魔王と魔国の王城の人達に見送られながらルアティナ一行は魔王城を出発した。
魔国を出るまでの道には魔国の人々が沢山集まっていた。ルアティナがザイラス王国に行くと駆けつけた民達が見送りに来たのだ。
「ルアティナ様ー!いってらっしゃいー!」
「ルアティナ様ー!!」
「お気をつけてー!」
大人から小さな子供まで大勢の人々がルアティナに手を振りながら声をかけていた。ルアティナが十歳の時に魔国を出るときも魔国の人々はこうして見送ってくれた。ルアティナにとってそれはとても嬉しい事だった。今もこうして来てくれる魔国の人々は今度も笑顔で見送ってくれる。
「ありがとうー!いってきます!」
見送ってくれる人々にルアティナも、笑顔で声を返す。歓声に包まれながらルアティナ一行は魔国レードナディルを後にすることになった。




