乙女ゲームとは男を落とすゲームらしい
第2のヒロイン登場!
ルアティナの即位パーティーにはやはりたくさんの人が訪れていた。
魔国の貴族はもちろん、魔王と友好的な龍帝国の王族、同盟国の妖精たち。ルアティナの訪れを知らせる魔国宰相バアルの声が夜会会場に響き渡った。
「ザイラス王国女王陛下の御到着です」
バアルの声に皆が一斉に会場の入り口を見た。扉がゆっくりと音を立てながら開いていく。
足音も立てずに颯爽と歩くルアティナは美しいかった。
白と金で統一された精緻なドレスはルアティナの白い肌を際立たせ、肩や胸元を惜しげなく絶妙なラインで見せている。
高く結い上げられた黒髪が肩な首に張り付く様が艶かしい。うっすらと浮かばせた笑みはまさに妖艶と言える表情だ。シャンデリアによって輝く真紅の双眸が会場を見渡した。
ーーなんでこんなに注目されているの?
会場の視線をさらったルアティナは困惑していた。たまに目が合う魔国の子息は目元を赤く染めてまるで恋する乙女の視線を向けてくる。一方、令嬢たちはキラキラと目を輝かせて羨望の眼差しを送ってきていた。
まったく訳がわからない。
ルアティナが魔王の隣の椅子に座ると
即位パーティーは始まりを告げた。
真っ先にルアティナの元に来たのは魔国の貴族たちだ。筆頭公爵家を始めとした各当主たちが子息、令嬢をつれて挨拶に訪れる。
あんまり好きではないお世辞を並べられながらアハハ、ウフフと淑女らしく
言葉を返す。
順調に貴族たちからの挨拶を受けていたルアティナの耳に女の声が届いた。
「お姉様!!」
淡い水色を靡かせながらルアティナの方へと走ってくる一人の女を見つけた。
女と言うより少女のほうがしっくりくる。小柄な可憐な美少女と言ったところだ。
走ってくる少女の心を念のため精神魔法で見たが悪意が見当たらなかった。
なぜかその少女だけではなく他にも沢山のご令嬢が集まってきている。
「お帰りなさい!お姉様」
「貴方はレイチェルだったかしら?」
「はい!」
走ってきた少女は見覚えがあった。魔国筆頭公爵家であるバーデラ家長女レイチェルだ。彼女には双子の兄がいてその兄がルアティナの護衛だった。
昔、王城に来ていたから見たことがあっただけだが。
まずもって慣れ親しんだ覚えはない。
「なにかようかしら?」
「お姉様を苦しめたクソヤロウ、ではなく自称ヒロインは私が直々に凝らしめておきました!」
「え、ヒロイン?」
「えぇ、自称ヒロインです!」
一瞬恐ろしい声でクソヤロウと言った気がしたが気のせいだろう。それよりもなぜ彼女がヒロインという言葉を知っているのか引っかかる。
キラキラした赤い目で、まるで褒美を欲しがる子犬にも見えるレイチェルにルアティナは微笑んだ。
「なんでそれを知っているの?レイチェル」
「それはですねお姉様!私、前世の記憶があるんです!」
「・・・・ちょっといいかしら?」
「はい!お姉様の頼みならなんでもききますわ!」
レイチェルを連れたルアティナは会場のバルコニーへと消えていった。
「乙女ゲーム?何なのそれは?」
「簡単に言えば男を落とすゲームですわ!その攻略者を落とせるのがヒロイン、所謂主人公ってわけです!」
「では悪役令嬢は?」
「悪役令嬢はヒロインの邪魔、恋の妨害をする女のことですね!だいたい悪役令嬢はハイスペックですけど」
「ハイスペック?」
聞いたことのない言葉を語るレイチェルが前世持ちだということはわかった。レイチェルが言うのはこの世界が乙女ゲームの世界で、ザイラス王国にいたミリーとか言う女はヒロインだったらしい。過去形なのはそのヒロイン
が魔国にケンカを売って自滅したからだ。
レイチェルが語る乙女ゲームには続編があり魔国編ではレイチェルがヒロインで悪役令嬢はルアティナだ。
どれだけその悪役令嬢とやらになればいいのだ。ちなみにレイチェルは魔国で指折りの魔法騎士である。
わかったのは乙女ゲームとは男を落とすゲームだということ。ルアティナは乙女ゲームを男を絶望に落としいいように操るものと考えた。そう考えるとすごく楽しそうだ。
ルアティナが考えこんでいるとレイチェルがいきなり抱きついてきた。
身長が小さいレイチェルはルアティナの胸元に顔があたる。
「私、もうお相手を決めています!」
「え?」
「お相手はお姉様、お姉様を落としたいです!」
「・・・・えぇ?」
満面の笑みでレイチェルは宣言したがルアティナはやはり意味がわからなかった。




