即位パーティー
ルアティナの蹴りをもろに食らった二人はそのまま沈んだ。遠巻きにその光景を目にした他国の男たちは思わず股間を押さえている。呻き声を上げるお馬鹿さんには見向きもせずにルアティナは歩きだした。
ーー馬鹿はほっときましょう。
ルアティナがバザールドの王宮を出ると外には一匹の竜、ドラゴンが大人しく座っていた。ドラゴンはルアティナが出てきたことに気づくと大きなしっぽを振りながら近付いてくる。
ルアティナの髪と同じ漆黒をその身纏うドラゴンは幼いころからの友人だ。
「ノーウェルズ、ここまで来てくれたのね」
よしよしとルアティナが撫でるとドラゴン、ノーウェルズは黄金に輝く目を細めて鼻を鳴らした。魔物は本来、魔王にしか懐くことはないがルアティナはどうやら魔王と同格らしい。
幼い頃のルアティナの周りにはドラゴンやらペガサスやら、溢れかえっていた。その中でも仲良しなのは竜王と呼ばれるドラゴン、ノーウェルズだった。ちなみにノーウェルズは人型にもなれるほどの魔力を持っている。
たまにしか人型にはならないが。
「あの馬鹿はやらかしたのか?」
「そうそう、ほっておいていいわ」
低いハスキーな声でノーウェルズはしゃべる。魔力を多く持つ魔物は話すことも可能だ。魔物の中で知能レベルが一番高いのはドラゴンである。
乗れとでも言うように背を低くしたノーウェルズに従ってルアティナはその背中に座った。
一見落ちそうに見えるが固定魔法をかければ問題ない。
わざわざドラゴンに乗って帰るのは転移魔法で帰るより景色眺めながら帰るほうが気持ちがいいのだ。
ルアティナを乗せたノーウェルズは魔国へと飛びたった。
★ ★ ★
帰ったルアティナを迎えたのは大勢の待女だった。訳のわからないまま湯浴みをさせられ化粧台の前に座らせられたルアティナは困惑していた。
「今日は何かあるの?」
「女王陛下の即位パーティーが行われますわ」
「そんなの聞いてないわね・・・」
女王陛下と言われて今さら気がついた。ルアティナはザイラス王国の女王に即位してまだ三日目だ。父である魔王が盛大な夜会を開くとかなんとか言っていたのは覚えているがまさか今日とはルアティナは思っていなかった。
ルアティナの漆黒の長い髪を複雑に結っていく待女は楽しそうだ。
ドレスはシルクサテンをふんだんに使ったもので白と金を合わせたマーメイドライン。胸元には精密に作られたであろう薔薇の刺繍が施されている。上半身から腰まではしっかりフィットし、腰から足にかけて魚の尾びれのように広がるドレスはルアティナの美しい曲線美を際立てている。
最後に軽くメイクを施されたら完成だ。
結い上げられた漆黒の髪は横に流され
仕上げとばかりに美しいクラウンをのせらせた。プラチナでできたまばゆいクラウンは魔王お手製らしい。魔王がどうしてこんなに器用に女物のクラウンを作れるのか娘であるルアティナが聞きたいぐらいだ。
「このドレスじゃなきゃだめかしら?」
「陛下はなんでもお似合いです」
「・・・・」
ーーこの胸元なんとかならないの?
ルアティナは強調される胸元を見ながら項垂れた。ルアティナは女性としての魅力が完璧だが、派手なものより物静かななドレスが好きだ。
今回のドレスが赤や黒などの目立つ色ではなかったのはだけは救いだったが。
完全装備したルアティナは今度は別の
闘いに赴くため重たい腰を上げた。




