魔王の娘を口説く気ですか?
大陸会議はやはりめんどくさいの一言に尽きるようなものだった。各国の現状を言い合った所でなにかが変わるわけでもあるまい。
ーと言うか、なんなの?
ルアティナは本日二度目のため息を吐いた。
ルアティナの隣に座っている男の視線をやたら感じるのだ。
見たところ彼は龍帝国の皇太子だ。ニコニコと飽きることなくガン見されて
いる。
龍帝国の皇太子の熱い視線を受けたまま大陸会議は終わった。
我慢ならずルアティナは思い切って男に抗議した。
「私を見すぎではありません?」
「え?だめだったかな?」
「不愉快だわ、そんなに私おかしい所あったかしら?」
「目の前の美しい女を愛でずにいるなんて男として終わってるだろ?」
「美しい女なんていたかしら」
「まさかの天然ちゃん?」
訳のわからない言葉を話す男にルアティナは首を傾げた。
ー美しい女って他にもいたじゃない
例えば、妖精女王セラフィは小柄な愛らしい顔立ちで桃色の短い髪と金の双眸が特徴だ。もう一人は神聖国女王テルベラ。彼女は透き通った白い髪と蒼い双眸を持つ清廉な美女で魔族とも並べるだろう。
だが、ルアティナは違う。
魔族しか、魔王しか持ち得ない漆黒の髪に不気味な真紅の双眸。母は聖女だったがその容姿を受け継ぐことはなかった。
ルアティナはそんな自分の容姿を美しいと思ったことは一度もない。
きっと周りもそう思っているはずだ。
考え込んでいたルアティナの手を男がなぜか握った。
「なぜ、さりげなく手を握っているのかしら?」
「なんとなく、って言うか俺のこと覚えてないの!?」
「わからないわ」
「小さい頃よく遊んだシドだよ!」
「シド、もしかしてあのシドなの?」
「あのって何だ?あのって」
男、シドに言われてルアティナは驚きの声を上げた。
今まですっかり忘れていたが、目の前の男は龍国の皇帝と幼少期によく魔国に遊びに来ていた少年だった。
昔はオレンジがかっていた髪は真っ赤に染まり、やんちゃな少年は凛々しい顔立ちの美青年に成長している。
シドは初対面で
「ルアティナ、将来は結婚しよう!」と宣言して魔王の右ストレートを食らっていたのをよく覚えている。
魔王と龍帝は親友同士で交流があった。そんなシドの第一印象はマセガキだ。
シドとジャスパーとルアティナは幼なじみでよく遊んでいた。その後もアプローチを受けていたがルアティナが婚約するためにザイラス王国に行った後から会えなくなってしまった。
相変わらずニコニコと笑うシドは手を握ったままルアティナにいい放った。
「ルアティナ、俺と恋人から始めないか?」
「なにも変わってないのね」
堂々と魔王の娘であるルアティナを口説くシドはやはり大物だった。真顔で呆れた視線を送るルアティナにめげないシドは笑っていた。
おまけ
「俺のルアティナがぁー!」
「またですか、貴方は」
「殴らせろ!」
「私を殴るんじゃない!」
いつものように魔法石でルアティナを見ていた魔王は叫んだ。
怒れる魔王の犠牲になるのは毎回、魔法石と宰相バアルなのは言うまでもない。




