最強魔族による王族の断罪
ザイラス王国では王宮に国民が一斉に押し寄せてきた。
今更、王族に従うものなど誰一人としていない。王宮で働いていた者も皆、
いなくなっていまった。当然といえば当然だが。
「もう我慢できるか!」
「あんたたちのせいで何人民が死んだと思ってんのよ!!」
「能無し王め!!」
怒りが爆発した民に王と王妃は震え上がった。国王が国外追放した聖女は不治の病や流行り病などに尽力を尽くし
治してきた。だが、その聖女を追い出した王妃はなにもできていない。
「隠れてないで出てこいよ!」
「無礼者!私を誰だと思っている!」
王宮の間に引きこもっていた国王が大声を上げた。そんな国王の声に返したのは一人の低い男の声だった。
「ほう、無礼者はどちらだ?」
鍵を閉めていた扉が勢いよく吹き飛んだ。扉から入ってきた男に国王は悲鳴を上げた。その男は黒髪に赤目、正真正銘の魔王だ。穏やかに笑っているのがまた怖い。魔王の後ろには魔国の宰相や軍団長、娘のルアティナまで揃っている。
皆、いい笑顔で国王たちを見ていた。
一部は瞳孔がガン開きだが。
「久しぶりだな、馬鹿ども」
「ヒィッ!」
魔王の迫力にビビった国王はまた悲鳴を上げた。歩み寄ってくる魔王に王妃は十八番の失神をする。
魔王は国王の前に立つと手をおもむろに上げるが、それをルアティナが制止した。
「まだ殺しちゃだめよ、ただ殺すなんて生ぬるいわ」
「そうか」
「まず、こいつはバアルに任せるわね?」
こいつとルアティナが指差したのは失神している王妃だ。
「任せろ、地獄を見せてやる」
「俺も殺る殺るー!」
瞳孔ガン開きのツートップは嬉々として賛成した。失神した王妃を軍団長であるエドガーが担ぎ上げ、そのさいに王妃を宰相バアルが縛り上げる。
バアルとエドガーは王妃を連れてそのまま転移魔法で消え去った。
行き先はおそらく魔国だろう。
残された国王は真っ青になって震えている。ルアティナは震えている国王に
微笑んだ。
「私がなにも知らずにこの国を助けたと思ってる?」
真っ赤に輝く双眸が国王をとらえる。
歪んだ笑みで歩み寄るルアティナは国王を見下ろす所で立ち止まった。
「貴方がお母様にしたこと、全部知ってるわ。それでもこの国を愛していたお母様を見習い助けてあげたのにねぇ?」
「あ、あぁ」
「聖女ではないお母様は必要がないってあなたは言ったけど、じゃあ貴方は?」
「すまんかった、それは」
「国王じゃなくなる貴方は必要ないわね」
ルアティナは愉悦の笑みで国王の首を持ち上げる。普通の少女だったら大人を持ち上げることなどできなかったが
ルアティナは魔族の血を引いている。
ザイラス王国で穏やかに笑っていた少女はもういない。
ルアティナは完全に魔族として目覚めてしまった。考えなしのお馬鹿さんによって。
国王の首を持ったままルアティナは王宮から出た。そして押し寄せた民の中に放り込んだ。
「まず、国民に可愛がってもらいなさい」
国王の登場に民の目のいろが変わった。すべての元凶である国王を許すものなどいない。
国民は鎌やくわなどを手に飛びかかった。
王妃は冷たい地面の感覚で目を覚ました。起き上がろうとして体が動かないことに気がつく。周りは薄暗い森で、
気味が悪い。
「目が覚めた?くそ女」
「え?」
声がした方向に王妃は顔を向ける。
そこにいたのは冷たい表情の魔族の男だ。青い髪に赤い双眸をもつ男、バアルは静かに言った。
「お前が今までしてきたことを体験してもらおうと思ってな。かつてお前が追いやった聖女はここに連れてこられた、お前の指示で。ここがどんなに危険かを知っていたんだろう?」
「いや、待って」
「その身で体験すればいい、死ぬまでな」
去っていくバアルに王妃、アイラは手を伸ばした。冷たい森の中からなにかの咆哮が聞こえる。静かに黙っていようと思ったアイラの隣に、突然男が現れた。短く揃えた赤髪にきつい赤色の双眸をした男、エドガーは咆哮した場所に向かって叫んだ。
「獲物はここだぞー、いい子ちゃんたちー!」
エドガーの声に反応して飛び出してきたのは巨大な狼だった。エドガーになつく巨大な狼に王妃は震える。王妃の嫌な予感は的中した。
「餌はあっちにあるよー」
エドガーが笑いながら狼たちに指差したのはアイラだった。狼は真っ赤な瞳をアイラに向けると嬉々として躍りかかった。
瞬間、森の中に絶叫とエドガーの笑い声が響き渡った。




