帰ってきたパパとママ!お留守番最後の日。
ついにオスカルのパパとママが帰ってきた!
チュイルリー宮殿ともお別れです。
オスカルがフォルチュネにお化粧をした数日後、二ヶ月と一週間の出張を終えたベルナドット夫妻が、チュイルリー宮殿に到着した。
「オスカル! ただいま!」
扉が開いた瞬間、ママであるデジレの顔を見たオスカルはレティツィアの腕からすり抜けると、短い足を全力で動かし、一目散にママの胸へと飛び込んでいった。
「うあ~~~ん!ママ~~~!」
ギュッと母親にしがみつき、安心したようにワンワンと泣くオスカル。どんなに豪華なおもちゃも、宮殿の刺激も、やっぱり「本当のママ」の温もりには敵わないらしい。その様子を見て、この二ヶ月間、誰よりも深い愛情でオスカルを世話し、唯一このドタバタ劇を楽しんでいたレティツィアが、少し寂しそうに、けれど温かく微笑んだ。
「ふふ、やっぱり、本当のママには勝てないわねえ……」
一方、ジャン=バティスト・ベルナドットは、目の前に立つボナパルト夫妻の異様な姿に、全く気づいていない様子だった。
何しろ、ナポレオンとジョゼフィーヌは、頬がコケ、目の下に真っ黒なクマを浮かべ、今にも消えてしまいそうな幽霊のようにやつれきっていたのだ。
「閣下、この度は我が息子を預かっていただき感謝いたします。レティツィア様も本当にありがとうございました。」
「いえいえ。こちらこそ楽しい時間でしたわ。ありがとう。」
「レティツィア様にそういっていただけるとは光栄の極みです。ではこれにて。」
ベルナドットは生真面目に感謝の言葉を述べると、ナポレオンに向かってビシッと完璧な軍隊式の敬礼を決めた。そして、愛しい我が子を抱き上げ、何一つ気づかぬまま、幸せそうに親子三人で帰路に就いたのである。
バタン!と門が閉まる音が響き、静まり返ったチュイルリー宮殿。レティツィアだけが「あー、楽しかった。」と満足げにお茶をすする傍らで、ナポレオン、ジョゼフィーヌ、オルタンス、ウジェーヌの四人は、まるで激戦の後の兵士のように、ソファーや床にドサドサと倒れ込み、「屍累々」の状態となっていた。
「……終わった。ようやく、我がフランスに平和が戻ったのだ……」
ナポレオンは天井を見つめ、カサカサの声で勝利を噛み締めていた。
――しかし、彼らはまだ知らなかった。
破壊神オスカルが、手ぶらで帰るような存在ではないということを。
その頃、プレヴォテ城では久しぶりに我が家へと帰宅したオスカルがパパとママにこれでもかと甘え、ご機嫌でリビングをトトト……と走り回っていた。
「さあ、オスカルがボナパルト家から持って帰ってきたおもちゃを片付けようか。」
ベルナドットがオスカルの小さな鞄を開け、中身を取り出していた時のことだ。おもちゃの隙間から、クシャクシャになった数枚の紙切れがポロリと床に落ちた。
「おや、これは何だ?……ん?」
拾い上げたベルナドットの目が、驚愕に見開かれる。その紙は赤インクで縦横無尽にグチャグチャと落書きされており、また紛れもないフランス政府の印章が押されていた。
「これは……国家の最高機密書類じゃないか!!!」
なんとオスカルは、要塞化される直前のナポレオンの隙を突き、執務室から「新しいお絵描き帳」として、フランスの未来を左右する重要書類をちゃっかり戦利品として持ち帰っていたのだ。
同刻、チュイルリー宮殿。秘書官から「閣下……デスクの引き出しにあった最高機密書類が、どこを探しても見当たりません……」との報告を受けた瞬間。
「ギャーーー!!あいつ、最後にトドメを刺していきやがったァァァ!!ベルナドットのガキィィィ!!!」
ナポレオンは絶叫ののち、白眼を剥いてバッタリと床に倒れ込んだ。
さすがの英雄ナポレオンも、この二歳児の容赦ない一撃には耐えきれず、その後数日間にわたって高熱を出して寝込んだそうな――。
(続く)
オスカルのトドメは強烈ですね!
ベルナドットは子煩悩なパパで、オスカルに自ら勉強を教えたり、出来る限り家族と一緒に過ごす時間を作っていました。
プレヴォテ城は野菜畑や果樹園が多くあり、ベルナドットは仕事が休みの時は農作業に精を出していたそうです。




