↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
12/50

断罪回避の作戦会議

気がつくと、スマホの画面は夕焼けの色を反射していた。


夢中になって『レイハー』をプレイしているうちに、現実世界ではもう夕方だ。


「……ただいまー。お父さん、まだそれやってるの?」


遊びに行っていた陽葵ひなたが帰ってきた。少し呆れたような声に、俺は慌ててスマホを置いた。


「す、すまん。つい熱中しちまって……。ああ、もうこんな時間か。夕飯の準備、何もしてなかったな」


「お腹すいたー。ねえ、お父さん。今日はもう外食にしない?」

「いいのか?じゃあ、たまにはパーッと行くか。何が食べたい?」


「……お寿司。回るやつ!」


俺は「わかった」と即答し、出かける準備を整えた。年頃の娘と二人で外食なんて、いつ以来だろうか。


近くの回転寿司チェーン店。


最近は異世界仕込みの料理腕前と「魔法で育てた野菜」のおかげで、正直、自分の作った料理の方が美味いと感じるようになっていたが、陽葵の表情は明るい。


「最近、お父さんの作るご飯、野菜ばっかりだったからな。たまには違うものがいいよな」


俺が言うと、陽葵はマグロの皿を手に取って、少しだけ箸を止めた。


「お父さんの作ったご飯の方が美味しいよ。でも、今日は久しぶりに一緒に出かけるから。それが嬉しいだけ」


「……え?父親と一緒で嫌とか思わないのか?」

「しょっちゅうだと嫌だけど、たまになら別に恥ずかしくないし。……ほら、早く食べなよ」


照れくさそうに目を逸らす娘を見て、俺の胸に温かいものが広がった。


……そうか。

いつもと違うシチュエーションで一緒に食事をするということは、単に栄養を摂るだけじゃない。心の距離を縮める、最高のコミュニケーションなんだ。


帰宅してリビングでくつろぎながら、俺は考えた。


「接待なら、俺の得意分野だ。食事を通じて、異世界での外堀も埋めてやる」


学校の生徒や有力な貴族たち。まずはそこから味方を増やし、王子の包囲網を突破するんだ。


俺は作戦を考え眠りについた。


◇◇◇


目覚めた異世界での今日は王都を離れ、領地へと戻る日だ。馬車の中で俺はさっそくカレンに相談を持ちかけた。


「カレン。一ヶ月後の誕生日パーティーで、王子との婚約が正式に発表されるわね」

「旦那様から伺っております。準備は万端にいたしますわ」

「ええ。でも、ただ発表されるのを待つのは性に合わないの。事前に『根回し』をしておきたいわ」


カレンは「承知致しました」と、頼もしく微笑んだ。


「まずは、学園の生徒たちを我が家のお茶会に招待したいの。味方を増やしておきたいわ」


俺の提案にカレンが頷く。


「それは素晴らしいですね。学園内には影響力のある貴族の子女も多いので帰ったらすぐに名簿からピックアップしましょう」


話が早くて助かる。カレンの有能さに感心していると、隣で聞いていたフィリアが手を挙げた。


「お姉様、私もお手伝いしますわ!」

「ありがとう、フィリア。心強いわ」


するとカレンが、少し声を潜めて提案してきた。


「……フィリア様。もしよろしければ、王子の動向を探っていただけませんか?」


「えっ、スパイをしろってこと?」


俺は思わず聞き返した。フィリアに王子を騙すような真似をさせるのは気が引ける。だが、カレンは続けた。


「昨日、殿下から誘いを受けていたのでしょう?協力するフリをして懐に入れば、彼が何を企んでいるか筒抜けになりますわ」


なんでそこまで知ってるんだ、昨日の話を聞かれていたのか。


「無理はしなくていいわよ、フィリア」


俺が止めるが、フィリアの瞳には決意の光が宿っていた。


「いいえ、やらせてください。昨日殿下から受けたお誘い……お姉様のために、乗ってみせますわ!」


ゲームの内容とは違う展開。王子の動きが読めない今、この情報は命綱になる。俺はフィリアの勇気に感謝し、必ず彼女を守り抜くと誓った。


無事に屋敷に着き、自室のベッドで一息ついていると、カレンが入ってきた。手には一枚のリストがある。


「ルチア様、お茶会に招くべき三名を絞り込みましたわ」


仕事が早い。現実に会社にいたらどれだけ助かるか。と思いながら、受け取ったリストに目を通した。


クロエ・ベルランジェ(商家の娘)


商売上のコネが広く、情報の拡散力が高い。彼女を味方にすれば、噂は一気に広まるだろう。


イザベラ・ノイシュタット(伯爵家の娘・生徒会長)


学園の秩序の象徴。真面目な彼女がルチアを認めれば、周囲の目は変わる。


リリィ・エインズワース(子爵家の娘)


フィリアの親友。彼女が同席することで、フィリアとの「仲良し姉妹」を印象づけられる。


「いいリストね。フィリアもお茶会に同席してもらいましょう」


ルチアのこれまでの行動で生徒のほとんどからは怖い存在だと思われている。そのイメージを払拭しよう


「それとルチア様。アルベルト殿下も同席させましょう」


カレンの言葉に、俺は耳を疑った。


「なぜわざわざ殿下を?殿下が何か言い出すかもしれないじゃない 」

「逆ですよ。皆の前で、ルチア様が殿下へ『健気な好意』を寄せている姿を見せつけるのです。そんな状況では、殿下も表立って冷たくはできません。学校で変な噂を流されるのを防ぐ、最大の防壁になりますわ」


……なるほど。公開の場で「理想の婚約者」を演じさせ、悪評を封じるわけか。


「カレン、あなた本当に頼りになるわね」


明日はカレンとフィリアと詳細を詰め、お茶会の準備に入る。


ゲームの断罪イベントまで、残り一ヶ月。


おじさんの接待スキルを存分に見せつけてやる!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。