紅のソースと心
ちょっといつもより長めです。
「完成しましたよ!」
「おう!待ってました!」
昼食、またの名をランチ。
戦国時代を駆ける者にとってそれは戦を勝ち上がる上でもっとも大事な要素の一つだったそうだ。険しい山地、広い平原、血と汗が混じりあう激戦区、それら全てを当時の武士は必死に生き抜いてきた。そこで登場するのがこの兵糧。戦いの数々はほとんどが昼を跨ぐ。兵士たちにとって昼飯とは明日を見るための希望にも等しい。
そして今、俺の前にはオ・ム・ライスが置かれている。ふんわり仕立ての卵の膜に三日月型のルナシェイプ、只の食べ物なのにここまで輝いて見えるのははたして錯覚なのだろうか。
とまぁ、かっこよく語っているがれっきとした日本料理である。これだけでも美しく今にでも身に味を染み込ませたい。だがーー
「ここで、ケチャップ降臨」
そう、月は単体だけでも眩い。しかし、その月をあえて雲で少し隠すことでこそ生まれる風流があるのだ。その雲の正体がこの輝く紅のソース。これで準備は...満タンだ....っ!
「えーと....降臨?」
「あぁ、普通に上からかけるだけだよ、何もない。大丈夫、俺は正常だから」
ふぅ、危ない危ない。厨二病とか俺には無関係な病だもんな
「それ、正常でない人がよく使う典型的なワードですけど本当に大丈夫ですか?」
「....さ、早く覚めないうちに食べようぜ」
「笑顔でなにもなかったことにしないでください!?」
「せっかくの咲優の料理なんだから暖かいうちに召すのが一番いい。咲優の料理は俺にとって世界で一番だ」
「そ、うですか....//」
「おう、食べるぞ?」
「は、はい」
なんとか誤魔化せたし咲優の料理が早く食べたいのも事実だ。さて、今日はケチャップで何を描こうか....
「あ、あの....」
「ん?どした?」
「ケチャップ...私がかけてもいいですか?」
「え?別にいいけど、何か2つ以上描きたい模様でもあるのか?咲優の分もオムライスあるし」
「そうです。1つだと完成しないので...」
「なら、好きに描いていいぞ。俺はいつもその場ののりで描いてるようなもんだしな」
「ありがとうごさいます。では....」
そうして咲優が完成させた模様と言うのはーー
「ハート...?」
「はい...二人で一つのハートです。」
そう...俺一つだけのハートだけではなく咲優の模様と交えて初めて意味をなすものだった。確かにこれは一つだけではできない。俺はこのハートがあまり好きではないが....
だが、何故この模様を...?
「巧樹君はこの2つで1つのハートは嫌いですか...?」
「え?そうだな....あんまり好きではないかもしれない。」
俺の苦い顔を読み取ったのか、咲優がそんなことを聞いてきた
「何故ですか?」
「んー...俗にさ、ハートが割れると恋も沈むって感じだろ?確かに2つで一つのハートを表しているのはその二人の愛の結び付きの強さを示しているとは思う。でも、それはその時だけの思いだろ?形上としてはそこで一旦ハートは割れるわけだし、何よりそのまま愛が続くとは限らないもんだ。テレビでもよく愛し合った二人の悲劇とか流れるだろ?俺は....そうなるくらいなら一時のハートはあんまり作りたくないんだ ....っと、かなり語りすぎたな、すまない、俺のエゴを聞かせてしまって」
「いえ...私も似たようなことを考えていましたから ....でも、私は思うんです。
ーー形だけのハートは消えても、その記憶は深く頭に刻まれるんだって」
「....」
「巧樹君の言う通り、終わりを迎える儚い恋はこの世にはありふれていると思います。でも、それは愛し合う二人のどちらか、または両方の相手への思いが小さくなったからだけで、ハートを作ったときは本当に二人とも愛し合っているからこそ2つで一つにできたのではないでしょうか?」
「...でも、やっぱり愛を誓った相手への自分からの思いは強くても相手の思いは掌握出来ないと考えると俺には重いかな....」
「大丈夫です。巧樹君みたいな優しい素敵な男の子を愛してくれる人は必ずいますよ、というかいるんです」
「咲優..... 」
出会いたいな.....そんな人に
「//...ま、まぁ、巧樹君は心配しないでいつも通りでいたらいいんですよ!それでも心配事があるようでしたら私が聞きますから」
「あぁ、ありがとな」
「いえ。では冷めないうちに食べましょう!」
そうして、俺達は共に食べ始めた。
今まで好きではなかった模様は温かく綺麗なオムライスと共に絡めることで、なんだか俺の身に溶け込んでスッキリしたような気がした。
でも、なんであの模様を描いたんだろう?
....恋の泉に沈みたい((()))
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