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私の彼は忍者  作者: 紅葉
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二年目のバレンタイン 3

受け取り方によっては下品な表現が含まれております。お気を付けください。

 放課後。


 約束していた涼先輩と一緒に帰るため、昇降口のところで先輩と待ち合わせしていた。

 帰るといっても、ショーまであと1カ月をきってしまったので、部活は休ませてもらって飛燕の修練場に行くんだけどね。先輩にはそこで、チョコを渡そうと思っている。

 喜んでくれるかなー。

 去年よりは上手く作れた自信があるんだけど。

 ホームルームが終わって、急いで昇降口に走っていくと、もう先輩が来ていて待ってくれていた。廊下を昇降口に向かっている段階で、先輩の目は私を捉えていたので、真っ直ぐ先輩の所に駆け寄る。


「お待たせしました~」

「そんなに待ってないから、大丈夫」


 行こうか、と促し歩き出す先輩の少し膨らんだ鞄の中が気になる。

 教科書なのかもしれないけど、その鞄の形状だけで、優駿くん達の光景が思い出されて、去年の先輩の両手にチョコを抱えた姿を思い出して、胸が焦げ付きそうになる。


 ……先輩、今日チョコたくさん貰ったのかな。私以外の女の子から……。

これが独占欲というものか、想像するだけで……苦しい。


「どうしたの? じっと見て」

「え? あ! いやぁ……なんでもないです」


 訝しそうにじっと見つめてこられても、こんなどろどろとした気持ちは先輩に聞かせたくない。

 

「理沙、手が冷たいね」


 きゅっと握りこまれた先輩の手のひらは温かくて、胸につかえていたどろどろが溶けていく……。

 

「あ。手袋するの、忘れてた……」

「手袋するのを忘れるほど、急いで来てくれたんだ?」


 小さく笑みを含んだ声で言われて、素直にコクンと頷いた。

 繋いだ手をそのままコートのポケットに入れられる。


「こうすれば暖かいでしょ?」


 クスッと小さく笑って、笑顔を向けられて頬が熱くなってしまう。

 さっきまでのもやもやがスッと消えていくのが分かった。

 代わりに涼先輩が好きで好きで堪らない気持ちでいっぱいになる。


「暖かいです。ちょっと歩きにくいけど」


 照れ隠しに憎まれ口をたたくと、涼先輩の反対の手で鼻をぎゅっと摘ままれた。


「そんなこと言うと、手を離すけど?」

「え! い、嫌です」


 クスクスと上機嫌に笑う涼先輩の様子に嬉しくなって、先輩の腕に腕を絡めてみた。






「涼先輩が好きです。私にしては頑張ったって言うか、母に手伝ってもらったりはしたんですけど……。愛里ちゃんも美味しいって言ってくれたし、今回も味だけはいいと思うんです……」


 去年はちゃんと告白しないままにチョコを渡してしまったので、今年こそはちゃんと仕切り直そうと考えていた。

 修練場に着いて、特訓の準備を始めようとしていた先輩が背後で足を止めてしまった私を、不審そうに振り返る。

 深呼吸をして、昨夜頑張って作ったチョコレートの入った箱を差し出しつつ、今さらかもしれないと思いながらもちゃんとしておきたくて素直な気持ちを伝える。でも、なんだか途中から言い訳じみた事をゴニョゴニョと続けてしまったのだけれども。


 涼先輩はチョコレートの入った箱を嬉しそうな顔で受け取ってくれた。

 

「ありがとう理沙。俺も理沙が大好きだよ」


 そっと抱き寄せられて頬にチュッとキスされる。


「開けてもいい?」

「どうぞ」


 涼先輩の指先が細い茶色のリボンを引っ張って解いていく。

 なんだか自分が裸にされているみたいにどきどきしてくる。

 綺麗に出来たのを選り分けて詰めたつもりなんだけど、大丈夫かなぁ~。

 箱をゆっくり開けていくその動作をドキドキしながら目で追っていた。

 

 良かった~。崩れてない。


「凄い。美味しそうだね。理沙も一緒に食べる?」


 涼先輩がイチゴのチョコをひとつ摘まんで、口元に寄せてくる。


 ……ぱく。

 あれ? 先輩の手から直接食べたら、先輩が少し驚いた顔をした。

 手を出して受け取った方が良かったんだろうか?


「理沙、俺にも食べさせて?」


 先輩が軽く目を瞑って口を開けた。

 え――!!

 ドキドキしながら、箱からチョコを選ぶ。

 さすがにこのシチュエーションで、チョコバナナを先輩の口に突っ込むのはマズイと考えて、先輩と同じくイチゴのを摘まむ。

 

 あーんと開けた先輩の口に、イチゴを入れるのが妙にドキドキする。

 先輩の唇から目が離せなくなって、いつもこの唇とキスしてるのかとか、普段考えないようなことが頭の中を駆け巡る!! どうしよう!!

 覚悟を決めて、えい!! と勢い良く先輩の口にイチゴを突っ込んだ。

 先輩の喉の奥まで突っ込んでしまったが、気にしない事にする……。

 ぐっ! と、先輩が変な声を出したのは、聞いていないフリをする……。


「……」


 無言でもぐもぐする先輩。

 

「え……えっと。ごめんなさい」

「けほっ……。大丈夫」


 ずっとこのまま食べさせ合いっこするのかな……。

 

「私も自分の分持っているんですよ」


 と、カバンの中からチョコバナナをニュッと出した。


「夏祭りのみたいだね」


 巨大なチョコバナナを見て、先輩が愉しそうな表情になった。

 そうでしょ、そうでしょ?


「さすがにそれを口に突っ込まれると苦しそうだから、理沙が自分で食べてね?」


 クスクスと笑いながら、さっきの失敗をからかう。

 分かってますよ~。


 ぺろんとそれを舐めてから、ぱくんと咥えた。はむはむ……。


「……見てないで、先輩も食べたらどうですか? 美味しいですよ?」

「そうだね♪」


 なんなんですかもう。先輩といい、愛里ちゃんといいヒトの食べてる顔を見てニヤニヤしちゃって。変なの~。


「だ~か~ら~、チョコバナナ食べてるだけだってば」(理沙)

「理沙の食べ方がやらしいんだもん(笑)」(愛里)

「うがぁ!! 先輩の前でやっちゃったじゃん!」(理沙)

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