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私の彼は忍者  作者: 紅葉
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二年目のバレンタイン 1

 バレンタインまで残る1週間となってしまった。

 教室の窓からちらつく雪を眺める。2月になってもまだまだ春の訪れは遠いようだ。


 あらぬ誤解をされて、優駿君ファンのクラスの女子に体育用具倉庫に閉じ込められたりもしたけれど、割とすぐに涼先輩に助け出して貰えたので良かった。


 あの後、すっかり身体が冷え切って、全身がカタカタ震えてしまって部活どころではなく家に帰ったんだけど、やっぱり38度の熱を出して3日休んでしまった。

 幸い肺炎まではいかず、翌日にはほぼ熱は引いたのだけど、喉が痛くて2日間は声が出なかった。


 熱で学校を休んでいる間に彼女らは、厳しい処分を受けたと聞いた。風邪が治って、騒動の元になったクラスの女子らが教室に戻って来た時、彼女らはすっかり反省して大人しくなっていた。

 体育の後や、クラブの後の鍵の管理もより厳しくなったというし、良かった。


「今年はちょっと成長したところを見せたいなぁ~」


 ぼやんとしていたから、後ろから小さな友人が近づいてきている事に気付かなかった。


「どれどれ?」


 その友人は、背中から抱きつくようにして、慎ましやかな胸をムギュっと鷲掴みにした。


 んぎゃーー!!


「ふむふむ。思ったよりは大きいかも」


愛里あいりちゃん!! 何すんの!!」


 真っ赤になって言い返す。愛里ちゃんは、私よりもさらに小柄で、ふわふわの肩までの髪で、クリクリおめめが愛らしく、声も鈴を転がしたような可愛い声の美少女なんだけど、中身がおっさん。 

 しかも、百合っ気があるんじゃないかと、本当に心配になるくらいスキンシップが好きな女の子。

 愛里ちゃんとは、2年生になってから同じクラスになった友達の一人だ。

 修学旅行で一緒に寝てから、やけに懐かれている気がするんだよね……。

 冗談ぽくだけど、同じ布団に入ってきて、脚を絡めてきたりしようとする。それに、修学旅行の移動で腕を絡めて来たり……。

 バスの中では、優駿君がずっと隣に座っていたから、何も無かったんだけど。

 

「まあまあ、減るもんじゃなし。むしろ増えるかも♪ それより、何を悩んでたの?」


 カタンと前の机の椅子を引き寄せ、愛里ちゃんが横向きに座る。


「バレンタインに何を作ろうかなって。愛里ちゃんは何か考えてる?」


 大きな瞳をクリンと動かして、唇を少し窄ませて考える姿は、女同志でもキュンとくる可愛さだ。


「父と、兄ちゃんと、あと友チョコ? 幾つかとぉ~、それくらいかな」


「自分で作る? それとも買う?」


「簡単なモノだけどね、自分で作るよ。イイコト教えてあげよっか?」


 艶々としたピンクの唇に笑みを浮かべて、愛里ちゃんが言う。


「うん、なになに?」


 身を乗り出して、続きを促す。


「あのね、溶かしたチョコを用意してね、イチゴとか、オレンジピールの細切りとか、ポテチにチョコを塗るの。ドボンってコーディングするだけ~。ホワイトチョコとか、ミルクとか色々用意したらそれなりに見えるよ。生の果物を使うと日持ちはしないけどね」


 おお!! なるほど。


「それなら出来そう。ありがとう愛里ちゃん。やってみるね」


「うん、頑張ってね」


「チョコが残ったらね、コーンフレークとかナッツと和えて固めれば、クランチチョコになるから、それもお勧めだよ」


 おお!! なんて愛里ちゃん女子力高いんだ!!

 お嫁さんに欲しいぞ♪ 中身おっさんとか言ってごめん。




 帰って、早速材料の買い出しだ!!

 去年とは違って、アルバイトをしているおかげで少しは財布が潤っているから、今年は製菓用のナッツが買えるんだ!! わ~い♪


 コーンフレークとぉ、オレンジピールも買ってみた。忘れちゃいけないのが、製菓用のチョコレート。ミルクとホワイトを買った。


 コーンフレークは大量にあるから、部活用も作れるぞ!!

 まあ、今年は涼先輩に渡す為の偽装工作はしなくて良いんだけどね。

 後で由希ちゃんと優理花ちゃんに聞いてみようっと♪

 余ったら朝食に食べればいいしね。




「あ……あれ? チョコってどうやって溶かすんだっけ?」


 去年やったように、と思ってフライパンに製菓用チョコをひと固まり入れて加熱したら、チョコは溶けるものの、固まり全部が溶ける前に焦げ付いた。


 愛里ちゃんにメールで、『チョコってどうやって溶かすの?』と聞いたら、『そこから? ウケル~(笑) 湯煎だよ』と返信が来た。


「ゆ……ゆせん? 茹でるってこと?」


 グラグラ沸き立つ小鍋に、チョコをひと固まり投入しようとした時、それまでハラハラと失敗しても黙って見守っていたお母さんから待ったが入った。

 チラチラとこちらを窺いつつ、洗濯物を畳んでいたが、焦げた匂いを嗅いでから、気が気で無かったんだろう。


「理沙! ストップ!! それ以上やったら材料がもったいない!!」


 もう、失敗は成功の素なのに~。


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