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私の彼は忍者  作者: 紅葉
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紅葉狩り

 秋の装い深まる11月下旬――。

 市街地から少し離れた山の中、飛燕の修練場に私と藤波先輩はいた。

 

 「理沙! 行くよ!」


 先輩が木刀を正眼に構えています。

 真剣な表情にドキドキ……。

 デート中に敵忍者の襲撃を受けて、交戦中……ではなく、3月に決まったショーの出演に向けての特訓です。


 3月にやるショーの脚本がまだ出来ていないので、まずは以前に先輩と見たくの一の殺陣の練習からやってみようということで、私は小刀を持って、構えています。刃は相手に向くように、逆手で握る。脚を大きく開いて、体勢を低く……。

これで、ミニスカートの衣装だったら、色々ヤバイんですけどっ!

 

 剣道の試合とは違って、殺陣はショーでお客さんに見せるためのものなので、動作は大きく、その動きもシナリオで決まっているのだそうだ。

 一通りの流れを先輩と一緒にやって教えてもらったけれど、流れるような迫力のあるチャンバラに見せるには、相当の練習が必要だよ。

 今、本来の10分の1くらいの速さで、練習しているけれど、タイミングが合わなくて、先輩の木刀が身体のあちこちに当たってしまう……。

 刀で打ち込みを受けたりもするけれど、それ以外はギリギリのところで身体に当てないように避けたり、寸止めしなくちゃいけないんだけど、下手すぎて自分から当たっていってしまう。


 先輩が、じりじりと間合いを詰めてくる。


「一手目は、上!!」

 

 先輩が上段に構えた木刀を振り下ろすのを、小刀で受ける。


 カンッ


 小気味いい木刀の当たる音がした。

 それを向こうに押しやった瞬間に、離れて間合いを取る。


 「二手、三手は左右に!!」

 上段から左右に振り下ろされる剣を、体勢低く、屈んで避ける。


 持った小刀を、左、右、左と突き出す……先輩の木刀に防がれるように見えるようにね。

 これが、難しい!! 先輩に当てたくないと思ってたら、木刀にも当たらなくてスカッっと空振り……格好悪い。


 「五手は上!!」

 

 再び上段から降り下ろされる剣を、くるりと回りながら避けて、先輩の背後に回る……はずが、勢いをつけすぎて二回転して先輩から離れていく。

 あれ? 

 時間が止まったみたいに待ってくれている先輩の後ろに駆け戻って、小刀を先輩の首元に当てる。


うっ……なんか、やだぁ~。


 軽く引くように、小刀を動かすと、先輩が膝から崩れ落ちる。


 これで、敵一人分の殺陣です。

 あの時のお姉さん、5人の侍集団に囲まれていたよね。

 同じ殺陣を5回繰り返すわけにはいかないので、色々組み合わせていくらしい。


 死んでいた先輩が起き上がってきた。

 

 「理沙、遠慮しすぎだよ。もっと突っ込んでこなきゃ」


 だって……。


 「木刀は当たっても打ち身くらいだから、大丈夫」

 

 先輩がにっこり笑う。

 

 「もう一度、最初っからしようか」


 「はいっ!!」

 ザザァーと風が吹いて、落ち葉が舞い上がる。


 なんだか、時代劇の雰囲気満点ですね。

 「ここであったが百年目……」みたいです。

 木刀と、ジャージ姿。そして、スローモーションっていうのが、残念だけど。

 はやく迫力のある殺陣ができるようになりたいよぉ~!!


 カンッ


 一手目を受けるのは、上手になりました。

 上手くタイミングも合って、思わずにやりと頬が緩んでしまったら、今度は屈むのが遅れて、先輩の降り下ろした方へ身体を動かしてしまった。


 あ。間違えた。


 コンッ


 先輩の木刀が、軽く頭に当たる。余り痛くはなかったけど、つい。

 

 「いてっ」


 「理沙、集中してなきゃだめだよ」


 軽くメッと睨まれた。


 「ごめんなさい……」


 「ちょっと休憩しようか」


 先輩の手が、私の頭に近づく……。

 ナデナデされるのかと思ったら、カサッと頭の上で音がして、手が離れていった。


 「モミジが付いてたよ」


 クスリと、先輩が笑う。


 「……ありがとうございます」


 手渡されたそれは、真っ赤に色づいていた。


 「先輩、モミジのてんぷらって食べたことあります?」


 子どもの頃に一度食べた記憶はあるものの、甘かった記憶だけが残っている。

 毎年、モミジを見るたびに思い出すのだが、それからは食べる機会もなく、記憶は薄れていくばかり。


 「うん、あるよ。甘くておいしいよね」


 「やっぱり甘かったですよね……。私も小さかった時に一度食べた記憶があるんですけど、それから食べる機会がなくて、葉っぱが甘かったのか、衣が甘かったのか……不思議なんですよね」


 「クスクス。理沙、それをじっと見ているけれど、そのままは食べられないからね」


 じっとモミジを見つめていたら、突如、後ろから抱き込まれて、肩の上に先輩の顔が乗せられる……。

 先輩から汗の匂いと一緒に微かにシトラスっぽい香りがして、身体の距離が近いことを意識してしまう。

 ドキドキして、顔がモミジより赤くなっている気がする!!

 ひゃ~~あ!!

 そんな私の様子を面白がって、先輩はさらに頬を近づけてくる――!!

 

 「こっちのモミジは食べ頃かな……」


 先輩の唇が、真っ赤になった私の頬に近づいた――。


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