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私の彼は忍者  作者: 紅葉
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修学旅行から帰ってきました〜♪

伊丹空港から再び大型バスに乗った私たちは、バスの中で、修学旅行の楽しかった思い出を反芻しながら、多分クラス全員が熟睡していた。

運転士さん、安全運転ありがとうございます!!


日もとっぷり暮れた午後7時。

大型バスは、県立高校の校門前に到着した。先生からは、速やかに帰宅するようにと言われたけれど、藤波先輩にお土産渡したいなぁ。

今から行っても失礼じゃないかなぁ。

ちょっとメールしてみよう。


「ただいま修学旅行から帰ってきました。お土産渡したいので、おうちに寄ってもいいですか?……っと、送信」


チカチカと手紙のアイコンが点滅して、送信されていくのを見詰めていた。

先輩今は何してるのかな?

勉強中だったら悪いなぁ〜。

もしかしたらお風呂入ってたりして……。

あんなことや、こんなことを妄想していたら、突如バイブレーションで携帯が震えだした。


しかも、メールではなく、電話だ!!

「はい!! 理沙ですっ」


耳にくすぐったいような、先輩の甘い声が聞こえてきた。


「理沙、おかえり。今は学校?」


「はい。今解散したところです」


「俺も今、外にいるんだ。今からすぐそっちに行くから待っていて? まだ誰か周りにいる?」


「!! 待ってます。ぱらぱら帰りかけてますけど、まだ人は居ますよ」


「そう。すぐに行くから、みんなのいるところで、待ってるんだよ」


あ、通話が切れた。

声の感じからして、走ってるみたいだったな。


ぞろぞろと同級生達が、校門を出ていくのを見送った。


文化祭のこともあって、みんなには藤波先輩と付き合っていることは知られているっぽい。だけど、先輩と待ち合わせしているのを見られるのが、何となく恥ずかしくて、そそっと人目につかないところに移動してみる。

着いたら着信があるだろうか。

携帯電話を両手に包みこむ。


人影がひとつ近づいてくる。

校門に近い棟の二階にある職員室からの光と、玄関のライト。それから門の外の街灯と、光源が少なくて、誰かは分からないけど背の高さからあれは男子だね。

大きな荷物を持っているから、先輩じゃ、ない。


「理沙ちゃん、帰らないの?」

声をかけられて、優駿くんだと分かった。


「えっと。もうすぐ帰るよ」


「一緒に帰ろ。女の子が一人でいたら危ないよ」


「うん、ありがと。先輩にお土産渡してから帰るね。大丈夫だから先に友達と帰って?」


優しい優駿くんの言葉に、申し訳なく思う。

私の言葉に、彼はパッと顔を輝かせ出した。


「え! 涼先輩来んの? 俺も! 俺も待ってていい? 俺もお土産渡したいんだ〜♪」


尻尾があったらきっとパタパタ激しく上下に振ってるんじゃないかっていう喜びよう。


「あっ!! でも、お邪魔だよなぁ」

……はっきり言えば、そうですね。


でも一転して、しゅんとした優駿くんに、邪魔だとは言いにくいなぁ。


「一緒に待っていようか。優駿くんは、先輩のお土産何にしたの?」


「え?」


ギクリとした風にカバンを抱き締め、目を泳がせる優駿くん。


んーー?


「お待たせ」


先輩が駆けてくる。制服姿のままだ……。

カッコいい〜!! じゃなくて、こんな時間まで何してたんだろ?

塾?


「あれ? 天馬もいたの」


「涼先輩ーー!! ただいまぁ〜♪」

優駿くんが先輩に抱きつく。

あ!! ズルい!!


「はいはい。天馬もおかえり」


先輩が優駿くんをベリッと引き剥がして、私に向けて両手を広げて待ってくれる。


「理沙、おいで」


えーー!! 自分からって恥ずかしいなぁ。


ジリジリと近づいて、えいっ!!

ポスンと正面から腕の中に入ってみた。

ふんわり抱き締められて、その腕は直ぐに離れていった。


「おかえり、理沙。修学旅行楽しかった?」


至近距離で微笑まれて、ドキドキ。


「楽しかったです。えっと、お土産です」


割れないように、緩衝材で包んで箱に入れたシーサーを差し出す。


「ありがとう。何かな」


「げっ!!」


受け取ってくれる先輩の隣で包みを見て失礼な声を上げる人がいた。

……失礼な。可愛いのに。


「先輩、俺からもお土産です♪」


ニコニコとお土産物屋さんのナイロン袋を手渡す優駿くん。

中身はなんだろう?

さっき言いにくそうにしてたよね?


「絶対!! 家に帰ってから開けてくださいッスよ」


チラリとこちらを一瞬見てから、にんまりして先輩に念押しする。


本当に中身何だろう、気になる〜!!


「ありがとう。もう遅いし、駅まで送るよ」


え? もう?

一瞬ハグしただけなのに。って、何考えてるの私!!


色々お喋りしたかったなぁ〜。


駅までの道で、優駿くんが気を利かせてくれてるのか、ご機嫌な様子で少し離れて先を歩いている。


その後を先輩と二人、手を繋いで歩いていたら、隣にしか聞こえない声で、先輩に話しかけられた。


「今度姉が結婚するんだ」


「え! 真梨子さんが?」


うん、と先輩が小さく頷いた。


「相手は飛燕の篠原さん」


知ってる? と先輩が続ける。


「分かります」


でも意外〜!!

あ、でも愛に年齢は関係ないですよね。


「真梨子さん、おめでとうございます」


「でね、新婚旅行行きたいから、その間、くの一の役を理沙に代役頼みたいって言われたんだ」


ひぇ!!


「来年の3月、大会や受験の準備のこともあるだろうけど、引き受けてくれると嬉しいな」


「え。でも学校とか……」


「それは、春休み中にしてくれるっお祖父さんが請け負ってくれたから大丈夫なんだけど、春休み中まるまる潰されるかも」


春休み中の部活欠席かぁ〜。

うーーん。

由希ちゃんに言いにくいなぁ〜。


「俺も一緒に出るよ」


それは!!

春休み中一緒にいられるって事ですね!!

なんてオイシイ話♪

でもな〜、うーーん。


「それって、断ったら先輩困りますよね?」


恐る恐る先輩の顔を見上げつつ、聞いてみる。

先輩は少し困った笑顔を見せた。


「理沙が決めていいよ」


そういう優しさって、ズルいです。

先輩が困るって分かっていて断れないんだもん。

仕方ない……由希ちゃんに怒られるかぁ。


「やります」


「ありがとう。強化合宿出られない代わりに、剣道の稽古もフォローするから」


うっ……。

先輩とワンツーマンで剣道の稽古とか、遠慮したいんですけど。


「……よろしくお願いします」


心の声がバレバレだったようで、クスリと笑われた。


「で、3月まで公演に向けたトレーニングするから、頑張ってね」


「はい、がんばります〜。よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


ふふっと笑い合ったところで、駅に着いた。

先に着いていた優駿くんは、コーンポタージュを飲んで待っていてくれたようだ。

コーンの粒が出てこなくて、真上を向いて、缶を振っている。


暫く3人で待ち合い室の椅子に座り、修学旅行の話を先輩に聞いてもらっていた。

優駿くんたら、私がソバを頬張り過ぎてむせた話とか、パイナップルを食べ過ぎて舌が痛かった話とか、そんなドジ話ばかりするんだから!!


「もう舌大丈夫?」


先輩が、私のあごに指をかけてくる。

これっ!! あーーんして、舌を見せなきゃいけないんですか?

どぎまぎして固まっていたら、指が離れていった。


「あ♪ 電車来た。じゃあ涼先輩また月曜ね〜♪」


優駿くんと一緒に電車に乗る。


「気を付けてね」


先輩がホームで私たちに手を振る。


この瞬間がいつも寂しく感じてしまう。先輩も一緒だといいな……。


「先輩、また明日」


明日はトレーニングの日ですもんね。


「疲れてない?」


「大丈夫です」


私の返事を聞いて、先輩が微笑む。


「じゃあ、また明日」



プシュウと、電車のドアが閉まって動き出した。

遠ざかる先輩を見送った後、優駿くんの隣に座る。


「優駿くん、先輩に何渡したの?」


気になる〜!!


「ないしょ♪」



理沙と天馬を見送り家に帰ってきた涼は、二人から貰ったお土産を開けてみた。


まずは理沙の方から……。

箱から出てきたのは、ピンクに水玉のシーサーが一対。

やはり……。

気が変わらないかと期待していたが、徒労に終わった。

どこに置こうかと、自室の部屋を見回す。


結局、勉強机の上に収まる事になった。


続いて天馬。


ナイロン袋を開けると、薄い紙に包まれた何か。

重さも軽かったから、置物の類いではないというのは分かっていた。

包みを開けると、白いTシャツ。


マトモだな……。


折り畳まれたTシャツを持ち上げるとーー。


裾の方に小さくアニメちっくなシーサーのイラストが描かれていた。

裏を返すと、背中には大きく二匹のシーサーがラブラブしている。

わざわざ相合い傘の下に、涼と理沙の名前入りの落書きまで書かれている。


こんなの外に着ていけるか。


Tシャツは再びたたみ直して、クローゼットに突っ込まれた。


挿絵(By みてみん)

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