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骨まで喰われた俺が、世界ごと灰にするまで  作者: 灰原 健(はいばら けん)@『骨灰』金曜夕方から開幕!


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第8話:呪印の覚醒

お早うございます!今週も一週間頑張っていきましょう!

1日2回更新の4日目(朝の部)、お待たせいたしました。

 村の入り口は、朝の光の中でのどかに見えた。


 農具を担いだ老人が歩いている。鶏が道端をうろうろしている。いつもと変わらない朝の風景。


 ただ一点を除いて。


 入り口の脇に、四人の男が立っていた。


 全員黒い外套。腰に剣。体格はそれぞれ違うが、全員に共通しているのは——立っているだけで気配が圧縮されているような重さだった。前回の三人組とは、根本的に違う。


 俺はそれを、村の家の陰から観察した。


 四人の動きを確認する。一人が村人に話しかけ、残り三人が周囲を自然に見張っている。連携が取れている。それぞれが最適な位置に自然に散らばっていて、死角を作らせない配置だ。


 訓練された動きだ。


 前回の三人は「雑魚に毛が生えた程度」だった。今回は——おそらく、本職だ。護衛か、あるいは暗殺専門か。翼と爪の組織が、本気を出してきた。


 俺は状況を整理した。


 村の中で戦えば、村人に被害が出る可能性がある。それは避けたい。母親がいる。


 森に誘い込む。前回と同じ手だが、今回は相手が上だ。向こうも警戒する可能性がある。


 でも他に手がない。


 俺は家の陰から出て、入り口に向かった。


-----


「お前たちが探してるもの、知ってるぞ」


 四人の視線が、一斉に俺に向いた。


 前回と同じ台詞だ。でも今回の反応は違った。


 話しかけていた一人が、俺をじろりと見た。年齢は三十代前半か。顎に傷跡がある、細身の男だ。目が、鋭かった。


「ガキか」


「そうだ。でも役に立てる」


「……どこにいる」


「森の中だ。案内する」


 男が仲間と目を合わせた。無言で何かを確認し合っている。前回の三人とは違う。子供の言葉を鵜呑みにしない慎重さがある。


 五秒の沈黙。


「……いいだろう。案内しろ」


 男が言った。でも俺を先頭に立たせながら、四人が自然な間隔で俺を囲むように動いた。逃げ場を作らない配置だ。


 やはり本職だ。


 でも——森に入れさえすれば、いい。


-----


 森の中に入って十五分。


 俺は足を止めた。


 いつもの場所より、さらに奥だ。木々が密集していて、上からの視界が悪い。俺が事前に選んでおいた場所。


「この辺りか?」


 傷跡の男が言った。


「そうだ」


 俺は振り返った。


 四人が既に半円形に展開していた。逃げ道は一方向しかなく、完璧な包囲だ。前回の三人組とは比べ物にならない。


「……お前、ここに何かいないのはわかってるんだろ」


 男が静かに言った。


 俺は答えなかった。


「子供一人で囮をやりに来た。なかなか度胸がある」


「褒め言葉として受け取る」


 男が薄く笑った。笑いながら、剣の柄に手をかけた。


「依頼は「角の子供を生け捕りにしろ」だ。お前みたいな邪魔者の処理は、依頼外だがまあ仕方ない」


 四人が同時に動いた。


 速い。


 前回とは、全然違う。


 俺は後ろに跳んだ。木の幹で背中を受け止めながら、左から来た剣を横に跳んで躱す。地面を転がって距離を取る。


 立ち上がった瞬間、別の一人が真横から剣を振り下ろしてきた。


 呪印を足に流す。


 身体強化。地面を蹴って跳び上がり、剣が空を切る。でも着地と同時に別の一人が背後に回り込んでいた。


「っ——」


 剣の腹が、脇腹に叩きつけられた。


 ごっ、という鈍い音が自分の体の中で響いた。斬らずに叩いた。殺さず、動きを止めるつもりだ。


 俺は転がりながら距離を取った。脇腹が熱い。肋骨にひびが入ったかもしれない。


 立ち上がって、四人を見た。


 息が上がっていた。


 十歳の体で、訓練された大人四人を相手にしている。身体強化を使っていても、単純な経験値が違いすぎる。動きを読まれる。先を取られる。


 このままじゃ、じり貧だ。


「……やるじゃないか、ガキ」


 傷跡の男が、初めて少し真剣な目をした。「普通の子供じゃないな。でも——」


 四人が同時に一歩詰めた。


「ここで終わりだ」


 俺は奥歯を噛んだ。


 計算する。呪印の身体強化だけでは足りない。四人同時は捌ききれない。


 ならば——


 ショーの顔が、頭に浮かんだ。


 村長の顔が浮かんだ。


 喰われた夜の、あの笑顔が浮かんだ。


 呪印が、どくんと跳ねた。


 普通じゃない跳ね方だった。


 今まで感じたことがない、深いところからの震動。熱さが全身に広がって——右手が、黒く染まった。


「なっ——」


 傷跡の男が一瞬だけ動きを止めた。


 俺の右手から、黒い炎が立ち上っていた。


 前に出力したことがある黒炎とは違った。あのときは細くて、不安定で、周囲を焦がすのがやっとだった。


 今のこれは——塊だった。


 右手を覆う黒い炎の塊。熱さは感じない。でも周囲の空気が歪んで見えた。近くの草が、触れていないのに黒く枯れていった。


 制御できていない。


 でも——出る。


「……なんだ、それは」


 男の声に、初めて動揺が混じる。


 俺は右端にいた一人に向けて右手を振った。


 炎が、飛んだ。


 ドォンッ——という低い爆発音が森に響いた。

第8話をお読みいただきありがとうございました!

次回の更新は、本日【夜18:00】です!


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