表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/18

S級トップ

 ドローンに映った映像を見て、朝倉はほっとした。


「よ、よかったです……間に合いましたね」


 はっ、と観月は朝倉の両肩をつかんだ。


「ところでひまりっち! 武宮様をそのでっけーおっぱいで誘惑してないよね!?」


「おっぱ――し、ししし、してないですよ! 観月先輩じゃないんですから!」


「えー? 本当かなー? 私、見逃さなかったよ~! 所長に案内を任命された時、ちょっと嬉しそうだったよね~」


「そ、そんなことないって。会ったばっかりなのに!」


 緊急事態だというのに、ぎゃあぎゃあと、観月と朝倉がさわがしい。野崎は呆れたようにため息をついた後、真剣な声を出した。


「2人共。くだらないこと言ってないで、よく見ておきなさい。どうせ本気なんて出さないでしょうけど……とんでもない人間が来たということを、その目に焼きつけておくのよ」


「S級様ばんざいってことですね~」


 観月が相変わらずミーハーなことを言うと、野崎は首を横に振った。


「そんなレベルじゃない可能性があるわ」


「え?」


「彼は協会から現S級メンバーで「トップ」と言われているのよ。今日本にいる探索者内で、もっとも強い実力の持ち主と推定されているの」


「わーお。やっぱり、そうなんですか? あれですよね、日本人初の深層第三層まで辿りついたって」


「あら。ファンというだけあって、よく調べているわね」


「えへへ~」


「ストーカーにはならないように」


「なりませんよ!? 私をなんだと思っているんですか!」


「ちなみに彼の奥さん、スレンダーな体型しているのよ。あなたのような巨乳が好みではない、という可能性もある」


「ガ~ン! その情報は知りたくなかったですっ! でもでも、きっと大丈夫です!」


「なにを根拠にそんなことを言うのよ」


「谷間見せた時、かなり露骨に見てきたので!」


「それは良かったわね」


 部下とくだらない会話をしつつ、野崎は武宮のことを考える。

 日本人の探索者において、どこのダンジョンでも、そしてどのS級探索者も、これまでの最高記録は深層の第一層クリアまで。第二層以降はこれまで、誰も突破したことがなかった。

 それを塗り替える、第三層。

 しかもその記録も、途中で例の騒動によって止まってしまったため、本当の実力は第四層以上なのではないか、と推定されていた。

 海外の発表によると、ダンジョンの深層は第五層までとされている。

 日本はその第五層へ到達した者は1人もおらず、武宮にその期待が多いに寄せられている、という形だ。

 大いなる武力となりうる武宮は、協会と国から慎重に扱われている。

 彼の異動が決定した際、野崎は協会のトップに呼びだされ、極めて深刻な様子で釘をさされた。


『いいか、野崎。くれぐれも、失礼のないように』


 そこまでだったら、国の財産ともいうべきS級探索者なので、よくある警告だ。しかも騒動があった後。探索者、それもS級に極めて失礼な態度を協会の人間がとってしまった。この失態はかなりのものだ。野崎は頭を軽く下げ「従業員一同、彼のサポートをしてまいります」と発言した。

 だが、協会の会長はここからさらに念をおした。


『丁重に扱うように。機嫌を損ねないように、たのむよ。全く、今回の騒動で、我々は寿命が縮んだ……あのお(つぼね)(※現代ではイジワルで、ベテランな女性に対して使われる言葉)共め。キレて反逆でもされてみろ、協会どころか日本がめちゃくちゃになるぞ』


 よほど恐れているらしく、そんなことをいった。

 実際、無理もない。抑止力といわんばかりに、S級の人数・戦果によって外交へ影響を与えると言われるほど、探索者のトップレベルは影響力があるのだ。協会のトップとなると、S級の待遇面で政府から圧力をかけられている。一連の騒動で武宮へ自ら謝罪したこともそうだが、組織の全力でもって開示請求などのすばやい動きを見せたのも、そういった事情と背景があるからだ。

 ようするに、武宮のご機嫌とりをしている。

 ただ、当の本人は特別扱いされることを好んでいないため、あまり効果は出ていないが。


(特別扱いよりも、普通に接する方が彼好みでしょうね。きっと)


 まだ会ったばかりだがそんなことを考えつつ、野崎はモニターに映る、見た目と雰囲気だけは普通の青年へと目を向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ